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第2話 陰キャっぽい女子高生に罰ゲームでナンパした

「いやあ来年の夏もこの4人でどっか行きたいよな」

「そうだな、夏と言ったら水着美女だよな」

「海行くこと前提かよ」

「今年海行ったし次は山でいいんじゃね?」

「おいおい、まだ冬休みすら入ってないだろ。早とちりしすぎだ」


 4人とは鷹木 秀(たかぎ しゅう)小鳥遊 司(たかなし つかさ)大塚 湊(おおつか みなと)、そして俺、調月 柚李(つかつき ゆずり)である。


 中学からの仲で大抵休みの日はこの4人で遊びに行っていた。仲は深いものだ。

 司と俺は特に仲が良い。クラスが同じだからだ。秀と湊のクラスが違うのは残念だったが、現実ってそう言うものだ。


 あと全員非リアである。


「まあまだ夏休みまで時間あるし、あとで決めればいいんじゃね?」

「それもそうだなー」


 そして今日もいつも通りこのメンツで遊んでいた。

 目的もなくただ街をぶらぶらとしている感じだ。食べ歩きみたいな感じにもなっている。


 そんな時、秀がある提案をした。


「なあなあ、ナンパしたくね?」

「......却下」

「いいね! やろうぜ!」

「女の子と遊んでみたい......!」

「おい、反対俺だけかよ」

「よっしゃ、じゃあ決まりな。じゃん勝ちナンパ!」


 俺以外全員賛成なのかよ......。というわけでナンパすることになった。

 まだ高校生だ。色々と大丈夫なのだろうか。


 それに少し怖い。


 勝ちたくないな、と思いながら俺は拳に力を込める。

 ちなみに他の3人は勝つ気満々である。

 1人で勝手にナンパぐらいすればいいのにと思うが友達とやるから楽しいのかもしれない。


 そういえば誰にナンパすればいいのだろうか。その辺は勝った人が決めていいのか。


「誰狙う?」

「最初はちょっと軽めで行きたいよな......陰キャっぽい子とか」

「うーん、まあありか。でもそうなると俺は負けたいぞ」

「お前らはもうちょっと女子への尊重というものがないのか」

「まあ勝った人が決めていいんじゃね」

 

 出来ればナンパはしたくない......。


 しかし現実は無情だ。こういう時ほど物欲センサーがよく働く。

 俺はこのあとナンパをすることになるなど思いたくなかった。


「じゃあ行くぞ、最初はグー、じゃんけんぽん!」


 秀、湊、司がグー、俺がパーだった。


 俺は一瞬目を疑った。あまりにも呆気なく勝負が決まってしまった。

 

「......は?」


 おいおい冗談だろ。


 他の3人は悔しそうに打ちひしがれている。


「え、まじかよ......」

「よしじゃあ行ってこい!」


 俺は3人に背中を押される。

 不服だが仕方ない......ちなみに聞こえる距離に3人は隠れているので適当にやっても無駄である。


「......俺は絶対ギャルとか陽キャ系には話しかけんぞ。それ以外ならいいけど......理想は清楚っぽい子」

「えー、まあそっか。仕方ないな。清楚っぽい子って言われてもぱっと見いねえしな......あ、じゃああのメガネの子はどうだ?」


 秀は髪がぼさっとしており少し根暗っぽいメガネをかけた子を指差した。

 まあ大人ならあれだが、比較的若く学生っぽくも見える。なので大丈夫だろう。


 それでもナンパは嫌だ。


「ほい、さっさと行ってこい」

「はいはい」


 はあ、と俺はため息をついて、渋々彼女の元へ行き、声をかける。



「こんにちは、今お時間ありますか?」

「......」


 返事がない。スマホを触っている。

 気づいていないのだろうか。


「あのー、こんにちは。今時間ある?」


 繰り返し言うと彼女はスマホを閉じて、困惑気味にこちらを見つめた。


「......はい? 私ですか?」

「うん、美味しいお店知ってるんだけどよかったら一緒にどう?」

「......は、はあ」


 こちら側が恥ずかしくなってくる。そもそもナンパ自体初めてである。

 適当に漫画で読んだ文を読み上げてみるが、まあ現実の反応はこんな感じだろう。

 さっさと断ってくれー、と心の中で願っておく。


「君、学生さん?」

「はい......高二ですけど......」

「あ、奇遇じゃん。俺も何だよね」

「......高二でナンパする度胸がすごいですね」


 的確なことを言われ、心にダメージを与えられる。


 すると、彼女は後ろの方にいる3人に目をやり、再度俺に目をやった。

 まずい、気づかれたか?


「あー、なるほど。罰ゲームと言ったところですか?」

「い、いや。そんなわけじゃ......ないよ?」


 無意識に俺は目線を逸らした。

 それを見て彼女はため息をついた。


「あなたも大変ですね、では私は用事があるのでこれで」

「あっ......はい」



 彼女が立ち去ると3人は罰が悪そうな顔をして近づいてきた。


「いやあ、バレました?」

「尻隠して頭隠さずだったぞ」

「......いやあ、ナンパはもうやめるか」

「ひどい! 俺だけ被害者!」


 結果俺だけナンパさせられてしまい、それからはゲーセンに行って1日は終わった。


 この時の俺は頭の片隅にもなかった。

 これがすべての原点になるとは。


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