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第15話 聖女様の素の姿

 しばらくした後、心陽は俺から離れた。


「おかげで心が軽くなりました。ありがとうございます」

「それはよかった」


 いつもの心陽の表情にすっかり戻っている。

 ......普通に可愛い。


 俺は何を思ったのか心陽のほっぺを掴んで引っ張った。


「な、なにしゅるんでひゅか」

「いや、何となく。すっかりいつもの七瀬だーって思って」

「むうー」


 心陽も対抗心を燃やしたのか俺のほっぺを引っ張った。


「ぷふっ......あはは」


 絵面を想像してしまい、笑ってしまった。心陽もつられて笑っている。

 何はともあれ元気な心陽。もう心配する必要はないかな。


 俺は心陽のほっぺから手を離した。心陽も俺から手を離す。


「じゃあそろそろ帰る。またな、七瀬」


 俺はそう言ってソファーから立ちあがろうとした。

 しかしまた服を、そして今度は思いっきり引っ張られてソファーに座らされる。


「ま、まだ何か?」

「......私たち友達なんですよね」

「お、おう」

「その......苗字呼びやめませんか? こ、心陽でいいです。わ、私も柚李くんって呼ぶので......その......何と言うか」


 そうか。名前で呼ぶことに抵抗があったし、嫌がられるだろうと思って苗字呼びだったが......。


「わかった、じゃあ心陽?」

「はい!」

「これでいいのか?」

「ふふ、嬉しいです」


 ニコッと心陽は笑った。

 直視できずに俺は視線を逸らした。


 元に戻ったら戻ったで心臓に悪い。


 ......というか、その癖して心陽って敬語だよな。

 違和感がなくてあまり意識してこなかったが......。

 お母さんの躾の影響もあるのだろうか?

 何はともあれ、それでは堅苦しい。


「心陽も敬語じゃなくていいぞ。堅苦しい」

「あっ、それもそうですね」


 ハッとしたように心陽は言った。

 心陽としても敬語を使うのが今まで主流だったのだろう。


 少し、気恥ずかしそうにもじもじしながら心陽は聞いた。


「敬語じゃないって、えっと、こ、こう言う感じ?」

「まあ多分そう。自然体でいい」

「な、慣れないけど頑張ってみる」


 こちらとしても違和感を感じるが、徐々に自然になっていくだろう。


「2人きりの時しかこれはやらないから」

「そうしてくれた方がありがたい」

「またさ......甘えてもいい?」

「ああ、もちろんだ」

「柚李くんも甘えていいんだからね!」

「俺はいい」


 そう言うと心陽はムーッと頬を膨らませた。


「いじっぱり」

「どこがだよ......あっ、そろそろ時間だし帰る。じゃあな、心陽」

「うん、またね、柚李くん」


 心陽は満面の笑みを浮かべた。


 ......何だろう、この胸の感覚は。


 そう疑問に思いながら、俺は心陽の家を出た。






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