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第11話 手作り弁当

 朝。起きたら心陽からメールが送られてきていたことに気づいた。

 2つの弁当の写真と共に。


『おはようございます。これ持ってきますね。中身はお楽しみです』


 ここまで学校へ行くのが楽しみな朝はあっただろうか。

 昼にしっかり食べられるように朝はそんなに食べないで行こう。

 と言ってもいつもほとんど朝は食べていないのだが。


 さて、ご飯食べて行きますか......あっ、やばいこのペースだと電車乗り遅れる。

 

 俺は急いで身支度をして駅に向かった。


 ***


「柚李ー、昼食食べに行こうぜー」


 俺はいつも通り司に肩を組まれた。

 いつもなら俺はそのまま食堂へ向かっていたのだが、今回は違う。

 今日の昼食はなんてったって聖女様の手作り弁当。


 俺は司の腕を掴んでするりと抜け出した。


「え、どうしたんだ?」


 あくまでも通常の表情で、でも少しドヤ顔で。


「すまん、俺別の友達と食べるから」

「な......お、お前......まさか、女子か?」

「ん、ああそうだぞ」

「ぐぬおおおおお、お前!」


 司に肩を掴まれて思いっきり揺さぶられる。

 

「お前だってこの前一緒に口説いた女子と食べてただろ」

「それとこれとは訳が違うー!」


 情緒が不安定な人だ。落ち着きないからいつまで経っても彼女ができないんだよと言ってやりたい。


「......ちなみにだが相手は?」

「七瀬」

「はぁ、やっぱりか」

「なんでため息こぼすんだよ」

「いや、嬉しい反面、嫉妬というか。恋に嫉妬しているという表現が正しいか」


 そして司は俺の体を揺らすのを止め、肩を掴んでこう言った。


「俺はお前の恋路、応援するで」

「だから好意を抱いている訳ではないし、友達だって何回も言ってるだろ」

「あ、そっか。じゃあお前の脱ヘタレ応援するで。お前女子と今の今までまともに接点持ったことなかったからな。というか持ってこようとしてなかったからな。嬉しいぜ」


 俺の事情を理解している司にとっては驚くことなのかもしれない。

 昔の俺は女子の友達を持つなんて考えられなかった。

 清楚で真面目で、努力家である程度面倒見がいい心陽だからこそ心許せた感じだろうか。

『聖女様の普段の顔』を見てギャップも感じて親近感が上がったのだ。


 ***


「はいこれ、調月くんのお弁当です」

「ありがとうございます......!」


 お弁当なんていつぶりだろうか。

 コンビニ弁当は今まで食べてきたが、市販のものではないお弁当なんて久しぶりだ。

 俺は1人暮らしなのだが、自分で作ることを毛嫌いしてきたので健康な食事を摂ってきたとは言い難い。


 弁当を開ければ何とも食欲がそそられ、美味しそうで、それでもバランスの取れた献立だった。

 唐揚げ、白ご飯、野菜、その他諸々の副菜。


 パクッと口まで運べば冷めていても衰えることのない旨さが口の中に広がった。


「お味はどうですか?」

「......めっちゃ美味い。毎日作って欲しいくらいだ」

「毎日は無理ですが......たまになら作れますよ?」

「それはそれでなんか申し訳ない」


 箸を進める手が止まらない。


 その様子を見て心陽はいつもの聖女様スマイルで微笑んだ。


「少し不安だったので......気に入ってもらえたようで何よりです」

「料理もできるって、多才だな」

「練習すれば誰でもできますよ。調月くんは作られないのですか?」

「俺は基本、コンビニ弁当だ。不健康なのはわかってる。1人暮らしする前に料理覚えとけばよかった」

「なるほど。でしたら私が今度調月くんの家へ行って料理を教えましょうか?」

「それは是非とも頼みたい」


 正直ここまで心陽が料理をできるとは思わなかった。

 心陽に教えてもらえれば今後の健康な食生活が期待できるだろう。


 前に実は自分でネットで調べて作ったことがあった。

 しかし何故だろう。あまり美味しくならないのだ。ちゃんとレシピ通りにやっているにも関わらずである。

 ......多少の誤差はあると思うが。


 別に漫画みたいに黒焦げになるわけでもない。しかし食べ切れるほど美味しいわけではない。

 たしかそれが嫌でコンビニ弁当生活になったんだっけか。


 まあでもたまに実家から漬物などの仕送りも来るし、食堂で健康な食事が摂れるので何とか今日までやっていけたのだ。

 

 そろそろ食生活見直した方がいいかな。




 食事中、聖女様と食べているという事実に同級生から困惑と羨望、嫉妬の目を向けられていたが、俺は気に留めなかった。

 







 



 


 

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