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春の章 桜が眺める淡い季節 花散雨


 桜が眺める淡い季節[花散雨]


夢茨(ゆめじ)は、幾日も(つき)と手合わせをしていた。

身のこなしは、月から武器の扱いは煉華(れんげ)から教わり形になってきていた。

天華(てんか)(よる)はのんびりと薬を捜索して来てくれたりして夢茨の生活が苦しくならないように万全の体制で対応してくれたりしていた。

ある時、煉華から呼び出しがあり夢茨宅に訪れた天華は、縁側に座っている煉華を見た。

「とうとう夜……出番ですか?」

天華の言葉に煉華は頷く。

「月だけだと、訓練にもならないだろうし、手加減ない相手とも手を合わせた方が伸びると思うしな」

 天華の後ろに控えてる夜を見つつ言葉を紡いでいた。

「……手加減、多少はできるようになってるよな?」

 あれから何ヶ月かたっている。はず……と煉華は祈るような気持ちで夜に問う。

「月に判断してもらったら大丈夫と思いますよ」

 にこっと天華は言いつつも知った顔が二人いないことに気づいた。

「ところで月と夢茨は?」

「ふたりなら、薬売りに都へ向かった」

 バサっ!

 いいタイミングで風を打つ羽音が頭上から聞こえてきた。

「……お? 八雲(やくも)か」

 肩に止まった白いカラスを見て足に結ばれている手紙を広げる。

「都で鬼退治を手伝って戻ると」

 手紙を読んで煉華はのほほんと返事を書いている。

「月も一緒なら、普通の鬼くらいなら余裕で倒せるはずだ。……なんならもう終わってるかもしれないが」

 煉華は返事を結んで八雲を旅立たせた。


 煉華の予想通りに夢茨と月は鬼退治を終わらせていた。

 都は街人たち全員で宴を始めてしまっている。

「早く帰りたい……」

「……そう言うな……」

 夢茨の隣に来た武士は苦笑していた。

「鬼が居たおかけで、なかなか羽目を外せなかったのだ。手伝って貰い感謝する」

武士が一礼していた。

 (武士がしかもいいところの人が頭下げるってなかなか見た事がないや) と夢茨は思って慌てて頭を上げてもらう。

「ただ、お主のように鬼に対抗できる者は何人か見ことあるが、お主は見たことがない何者だ?」

「……桜の寺院がある村の薬売りです」

 武士に何者かと問われ、夢茨は一瞬悩む。

 しっくりくるのが今の所、薬売りがしっくりするなと思い薬売りと答えた。

「あの村か……」

 夢茨の言葉に武士は頷く。

「腕が良いので、ひとつ頼まれてくれないか?」と武士が真剣な声で夢茨を見た。

 夢茨はその声色まっすぐ目を向けて聞こうと言う意思を武士に向ける

「先程の戦い。実に見事であった。そしてあの村の守護がいないので、守護役、鬼狩り衆の主になってもらいたい」

 武士の言葉に夢茨は目を見開く。

「自分は平民ですよ?」

「……出来ればあの村の出身者がありがたいのだ」

 武士は村の方に視線を向ける。

「昔、あの村には巫女がいた。鬼王を封じるために人柱となり消えてしまったのだ」

「巫女さまの後継者はどうなっているのですか?」

 夢茨の言葉に武士は、首を横に振る。

「力を使ってしまった者は普通の人になるか、そのまま衰弱してなくなってしまったらしい。巫女になれる力ある子が産まれなくなったのもあるようだが」

 武士は力無く続ける。

「巫女の血脈も数年前に途絶えてしまってな、何とか他の地区から集めようにも他の地区も手一杯らしくて頼める人がいないのが現状だ。」

 武士は困った表情と声色でつぶやく。

「だから頼む。あの桜の寺院を本拠地に置いて、鬼狩り衆の主をお前に頼みたい。」

 夢茨は真剣に悩む。

「早く回答は欲しいところだが、少し悩む時間が要るだろう、今度呼んだ時に答えを聞きたい。」

 武士は無理やり夢茨を据えようとはしていないようだったので安心して頷く。

 夢茨は、宴から離れて荷物をまとめて桜の寺院のある村へと向かおうと都の出入口へと足を向ける。

 宴が始まると同時に月は都から外に出て八雲を飛ばしていた。

「早かったな」

 月は都から出てきた夢茨を見つけて声をかける。

「鬼狩り衆を作りたいと言うことと、あの寺院を鬼狩りの本拠地にしたいって聴いてきた」

「まぁ、あの寺院は確かに人間も鬼も抑えておきたい場所だろうな」

 夢茨の言葉に月はうなづいて答えた。

「……あそこには前鬼王と桜の巫女が眠っているからな」

 月はぽつりとつぶやく。

「桜の巫女さま……?」

 夢茨は首を傾げる。

「俺としたらゆっくりねむらせて置いて欲しいところだ」

「なんで?」

 月の言葉に驚く夢茨。

「戻りながら話してやろう。」

 月は村へと足を向けつつ「当時の鬼王が桜の巫女に興味を持たれてだな」と話し出した。

「食べるために?」

「まぁ、そうだな。」

 夢茨の言葉に月は肯定している。

「能力あるものを喰らえばその分力を伸ばせることが出来るしな、桜の巫女という肩書きがあるのだから相当分チカラを取り込めると踏んだ鬼王だった。」

 月の言葉に夢茨は、無言で聞いていた。

「あの方は人に化けて寺院に乗り込んで行ったが、しばらくして戻ってきた“食えなんだ“と悔しそうに言っていたな。」

「えっ……あんたも行ってたのか」

 月の言葉に夢茨は声を上げていた。

「元、鬼王の部下だしな。煉華さまにお仕えするようになって人は食うては無い。」

 月は平然と言ってのけていた。

「まぁ、その時に桜の巫女に一目惚れしたらしいことは煉華さまと天華さまが生まれた時に鬼王が言っていた。状況的に、煉華さま天華さまは拾い子として巫女達が育てると鬼王に伝えた。」

 月は鬼王のことを思い出す 。


 夜になると桜の巫女と2人の赤子に会いに行き、話した内容、赤子の様子を月に話すようになっていた。

「聞いてもないのにやれ娘二人が可愛いとな。」

 月の言葉に夢茨は首を傾げる。

「煉華さまと天華さまは1度喰われかけたのだよ。鬼王の息子2人にけしかけられた鬼にな」

「えっ……」

 夢茨は歩くのが止まる。

「煉華さまと天華さまは持っていた力で撃退したのだが、力を発現した時に鬼の目になった故に巫女は手放すしかなくなって前鬼王が2人を守るために鬼姫とした」

 鬼王は巫女にも手を差し伸べていたが、巫女は人間だからと寺に居残ることを決めて2人は別れることになった。

「前鬼王は巫女に会いに行くのは止めなかった、その中で人喰い鬼として見つかり、桜の巫女は人を喰らい続けている鬼が鬼王ではないと知りつつも人柱になって封印を施した。」

「え……、じゃ、人喰いは?」

 月の言葉に夢茨は息を飲む。

「本当の人喰いは、現鬼王そしてその弟だな。倒しても倒してもキリがないのは頭を倒してないからだ」

「しかも、煉華さまと天華さまを喰おうともしてるんでしょ、こんなところでのんびりしてられない」

 月の話で夢茨は急がなければと歩き出す。

 空から八雲が降りてきたが、手紙を読まずに帰路に急ぐために足を動かす。

 

急いで家に戻った夢茨が見た光景は、縁側で平和に話している煉華、天華の姉妹だった。

 2人の姉妹と夜の姿を見てほっと胸を撫で下ろしていた。

「ただいまー」

「……何してるんだ!休息とりつつ戻れと八雲に手紙を託したのに」

 怒れる煉華を夢茨は抱きしめた。

 煉華を抱きしめた夢茨から目をそらすもの自分で顔を覆うもの様々な反応をしていた。

「えっ、ところで夢茨と煉華さまは、いつの間にそんな仲に???」

 月に夜は問い詰めて「しらん」と問い詰められた月は夜の頭を押さえつけつつ低い声色で追求するなと言う圧をかけた。

 

 

終わりまで駆け抜けたいと思ってます。

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