春の章 桜が眺める淡い季節 開花3
スマホ油浸水事件が起こりました。
第1章 桜が眺める淡い季節[開花3]
翌日、煉華は天華を連れて桜の咲く寺院へと降り立った。
籠傘を被り、落ち着いた雰囲気で白装束の人と、籠傘を少し上げつつ周囲を興味しげに眺めている黒装束の人物が後ろに控えている。
「夜、少し落ち着け。」
「だって!……だって、すごい明るい! すごい綺麗!!!」
白装束の男は静かな声でたしなめるが、夜と呼ばれた女性は桜を見上げて声を上げる。
「ここの桜はほんとに見事だよなー。術で光らせてあるけど太陽の光の方が綺麗だな。」
同じく桜を見上げて煉華が言う。
「ところで、夜が手合わせの相手をして大丈夫ですか?」
心配そうに天華は声を上げる。
「……手加減したらいいんですよね! 全力でするよー!」
天華の後ろから手を挙げて夜は何故かやる気に燃えている。
「手加減……てきるかわからないこですよ?」
昨日、煉華の話を聞いて二つ返事で了承したのはいいが、夜の辞書に「手加減」の文字があったのかと再確認していた。
色々考えていると彼女は手加減できない子というのを思い当たってしまった。
「夜はここで手加減を全力で覚えろ」と煉華の言葉に夜は全力でうなづいていた。
「まて!待て待て!!」
煉華と夜、2人の反応で月が制止の声を上げる。
「夜はダメだ! 天華さまの方がまだマシだろう!」
月は煉華に怒鳴る。
「じゃ、夜は見学で」
「えー?!」
煉華の言葉に夜は不満そうに声を上げる。
「えーっ?! じゃない。なんの訓練も受けてないただの人の子だぞ? 手加減できない常に全力なお前相手だと……」
「…………生命の安全は保証できないですよね…………」
月の言葉を悩んでいる体勢の天華は困った声で続ける。
「最悪の事態だ。」
月は煉華と夜を睨む。
「えっ? 最初は夜ちゃんは見学だったよ。」極めて本気でと付け加えつつ煉華は言う。
煉華の言葉に全力で止めてよかったと月は不満気な夜を横目で見つつ安心した。
そのまま放置していると夢茨という人の子相手に夜を相手に手合わせをさせようとしていただろう。
頭痛いと籠傘被ったまま頭を押さえる。
「……煉華さまに、……月だよな?」
首を傾げつつ4人様一行を見つめて夢茨が来た。
夢茨は白装束の服を見て月と予想立てたのだろう。
「こっちは月で間違いないよ。」
煉華は夢茨の言葉にうなづいて、天華の背中に手を置いて夢茨を見た。
「この子は妹の天華だ。 後ろに控えてるのは夜だな。」
紹介された天華は一礼をしているが、夜と紹介された人は、まっすぐこっちを見た。
「この子、誰ですか?! 人の子ですよね」
すごい明るい声で夜は夢茨の周りを回って上から下まで観察している。
「もしかして犬……の鬼?」
「いや……犬では無い」
夢茨は居心地悪そうに煉華を見た。
「夜、……紹介するから落ち着こうか……?」
目が笑っていない煉華と絶対零度の視線を投げてくる月に夜は天華の後ろに逃げ隠れた。
「夜です!よろしくお願いいたします!」
元気に挨拶しているが何故か背の低い人の後ろに隠れてているのだろう。
隠れてるつもりなのだろうが隠れられていない。
「そして、こちらの子は夢茨という子だ」
煉華は気を取り直して紹介をした。
名前を聞いて夜はまた目を輝かせていた。
「煉華さまの恋人さまだ!」
「まだちがーう!!!」
夜は夢茨を指さしながら紡いだ言葉に思わず夢茨は声をあげた。
「そして、指さすな!」
月は夜の頭を叩く。
「恋……?」
「……人?」
煉華と天華は夢茨を見た。
2人の金色の瞳に射抜かれて夢茨は目線を逸らす。
「……えっ? 違うの??」
月のツッコミを受けつつケロッとした表情と声で首を傾げる。
「いや、……ゆ、ゆくゆくはなりたいなぁ~とは……」
目線を逸らしたままぼそっとつぶやく夢茨。
笑顔で夜はうんうんとうなづいた後「きょうりょくするねー!」なんて明るく言ってのけた。
「天華、お前の部下の教育どうなっているんだろう……と今、思ったわ」
夜の行動に頭を押さえている煉華。
同じく夜の言葉に笑っていた天華は、煉華の言葉に自分の頬を撫でた。
「夜には、のびのびして欲しいですから」
「自由奔放過ぎると思うがな……」
ため息つきつつ煉華は手を叩いた後に「さて、早々に始めますか」と声をかけた。
月と煉華が2人で組手等の訓練を請け負っている。
夜は手加減は無理そうなので、夢茨が太刀打ちできる力が着いてきたら手合わせに参戦ということになり、天華が夜が暇しないように相手をしている。
「……はぁ……」
扱かれすぎて疲れて寝転んでいる夢茨。
「なんで、ふたり、元気なの?」
息をするのも話すのも辛いようで夢茨は途切れながら言葉を紡いだ。
「いつもより楽だったが……まさかこれでもお前の体力消耗激しいとは……」
読みが甘かったと煉華は思う。
「最初はやはり体力作りか?」
月も夢茨の今の状態を見つめて悩む。
「……体力作りも組手も必要だろうな」
煉華の言葉で夢茨は起き上がって座る。
「死ぬ気でついて行くから、そのままでもいいよ……」
「……死ぬ気は駄目だよ」
夢茨の言葉は宙に解けていったが、隣に座った夜は夢茨の言葉を聴こえていたようでぼそっと言う。
「夢茨くんは、なんでそんなに必死なの」
不思議そうな声色で夜は夢茨に声をかける。
「煉華さまと……」
夜は首を傾げる。
「もし、一緒になりたいのなら、護れるくらいにはならないと……って」
夢茨は煉華を見つめる。
「まぁ、強くなった方がいいかもしれない……」
色々と脳裏で考えた夜はうなづいている。
「なんなら姉さまが一緒に住んで軽い訓練を実施したらいいんじゃ……?」
天華の言葉に煉華は手を打つ。
「その案いいな」
煉華は楽しそうに声を上げる。
「……なんか寒気が……」と呟いた夢茨の前に煉華がしゃがみこんで「私がお前の家に合宿するぞ」と宣言した。
「……まあ、あまり乗り気にはなりませんが……」
月もうなづいたのだった。
「息抜きもさせてあげてくださいね。」
天華は心配そうに煉華を見て声を上げた。
煉華はうんうんと軽くうなづいている。
そして、煉華と夢茨の同棲?
共同生活という名の同棲が始まったのだった。
➡︎続くよー
復活しました。
バックアップが消えてしまいましたのでまた書き直しです。
不定期ですがよろしくお願いします。