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春の章 桜が眺める淡い季節 開花2

朝日で目を覚ました夢茨(ゆめじ)は布団の中で寝転んだまま伸びをして一人しかいない家の中で夢刻(ゆめこく)は既に旅立った事を理解した。

布団からムクっと起き上がり夢刻が残してくれた家と夢刻の後継者として薬草師を続けて行くことを決めていた。

「薬草探しに行くぞ!っ」

 夢茨は、一人の寂しさを紛らせるために大声で気合いを入れる。

「なるほど、薬草探しに行くのか」

 居間に来た夢茨はちょこんと暖炉に座る、淡い桜色の髪の女性を見て一瞬思考が停止した。

 ゆっくり襖を閉めて、夢茨は深呼吸をしてもう一度、今の襖を開く。

「夢茨、何をしてるんだ、お前は」

煉華(れんげ)さま、なんでいるんですかー!!」

声の張りの違いがあれども2人とも同時に声を上げていた。

「夢刻から頼まれてな。お目付け役という感じの。出かけるなら護衛として同行しようか」

 煉華は頷きながら言ってきた。

 夢茨は赤くなったり何かを悩んでいたりしている。

「......護衛、多分、大丈夫。」

 煉華の言葉に夢茨は今日行くはずの現場の場所を思い浮かべて、やっとのことで片言のような言葉を紡いだ。

「野生動物位しか出ない場所だし」

 夢茨の言葉に煉華は目に見えて元気が無くなってきていた。

「話、相手......欲しい」

煉華の覇気が無くなった姿を見て夢茨は慌てて言葉を紡いだ。

 夢茨の言葉を受け煉華が明るい雰囲気に包まれたの夢茨はホッとして笑って見ていた。

「煉華さま、お仕事はないんですか??」

夢茨は煉華に問いかけて問う。

「......見回りを兼ねているから気にするな。」

 煉華は軽く笑って夢茨に伝える。

「…………」

「私がこなしている仕事が無いと、思ってないよな?」

 夢茨の無言の反応に煉華はジト目で夢茨をみた。

「思ってない無い!!!」

 全力で否定している夢茨。


 夢茨と煉華は、小さな山へと出向いていた。

「今日狙うのは、食べられる山菜含めて薬になりそうなのを取っていきたいと思う。」

 夢茨は、山のけもの道の入口付近で見本で何個か取って煉華へと見せる。

「...食べるのか?肉などは?」

「オレ、捕まえるの得意じゃないから食べられるのを捕まえられたら......って感じかな」

煉華は「山菜だけじゃ...な、……捕まえておくか」と夢茨を見て思う。

(心配で着いてきてよかったな。良からぬ気配はするが、言うほど強くは無い私だけでなんとかなるだろう)

静かな森の中で周囲を見回して思考の中で答えを出した。

「夢茨、あまり私から離れるなよ?」

煉華の言葉に一瞬「なんで」と夢茨は首を傾げる。

「私、やったことないから、色々聞けない」

 煉華は頭を掻きながら、夢茨に言う。

「なるほど……わかた!」

 明るい笑顔で頷いている夢茨に煉華は一応ホッと安心している。

 籠を抱えて夢茨と煉華は話せる距離で別れて野草狩りを始めた。

「夢茨、これは?」

「煉華さま、それは、食べれないくらい苦いやつ...」

 夢茨は、煉華が掲げた草を見て教える。

「苦いのか……」

「でも、なんらかに使えるかもだから別にして持って帰ってみます」

 元気がなくなった煉華に対して、近くまで来て受け取っていた。

「……オレも、夢刻さんに同じような事言われてたから」

照れたような感じで夢茨は呟いていたのだった。

「次からは詳しいやつから聞いて勉強してくる」と言いながら、脳裏に銀色の髪の金色の目をもつ男(つき)の姿を考えて握り拳を作って夢茨を力強く見つめた。

「煉華さま、やる気の方向性がおかしいと思うけど......」

夢茨は軽く笑いながら言っている。


周囲から、生き物の気配が無くなっているのに気づいた煉華は周囲を見渡す。

「……な、何?!」

真剣な顔をした煉華に夢茨は煉華と同じ方向につられて顔を向けた。


 ガサッ、

 ガサッ、ガサガサ……


 低い樹木、草が揺れる。

「美味しそうな匂い………」

 クンクンと鼻を鳴らしながら現れた緑色の肌の異形の生き物が現れた。

 ゆらゆらとゆっくり1歩ずつ地面を踏みしめて目の前に現れた。

「来る日も来る日も、森の生物しか喰えない、美味しそうな獲物がようやく来た……」

 ジュルと垂れてきた涎を腕で拭い、口の中に溢れた涎は嚥下した。

「……夢茨、逃げろ。」

 煉華は身構えて夢茨へと声をかける。

「……」

 煉華の言葉に煉華を見つめる。

「やだ!」

「お前、不味、そうだけど……力は持ってるようだ……」

 夢茨と鬼の言葉が重なる。

「いやいや、喰われる予定もないし、夢茨をお前にくれてやる気もない」

 逃げる素振りもしない夢茨を庇いつつ煉華は鬼の動きを注視していた。

(しかしな……、私の力は火なんだよな)

森の中心で煉華が全力で戦うと間違いなく山火事になるり、大惨事になる。

夢茨の天然の薬草畑がひとつ無くなりかねない。生物は目の前にいる鬼が喰らい尽くしたので気にする気は無い。

「...……ん? 今、気づいたが、知ってる。お前」

鬼の言葉に煉華は鼻で笑い、「今更だな」と口に出していた。

「一姫、煉華、...……」

思い出したかのように鬼が煉華を指さし言う。

「人を喰わない鬼!!! 鬼王の一族の落ちこぼれ!」

煉華は鬼を睨む。

「一番の落ちこぼれは天華(てんか)……だっけか」

鬼は“はて?“と首を傾げる。

すっと煉華が鬼の背後に降り立つ。

「油断しすぎだろ?」

煉華が笑いながら深紅の刀身の長刀を振るう。

鬼の血糊が大地を濡らし、切れ口から火が溢れて鬼が火に包まれて倒れた。

「つ……つよ!」

夢茨は目を輝かせて興奮気味に声をあげた。

「全く逃げろと言ったのに逃げやしないんだからな。」

刀を宙に解かすように消した煉華は夢茨に言う。

「刀は持ってたからなんとかなると思ってたんだよ!!」

夢茨の言葉に煉華は肩を落とす。

大事に山菜や野草が入った籠を大事に抱えて言うセリフでは無い。

夢茨が言っていた刀は今は背中に吊るされている。

「鬼がさっきまでの距離まで来たら、武器を構えてないと遅い。」

煉華がつぶやく。

「一気に詰められて食いつかれる。だから、鬼が夢茨の場所を把握するより先に鬼のいる場所を判別してないと終わりと思っておけ。」

煉華は夢茨に教え込む。

「夢刻は、いい刀をお前に残したな」

煉華は刀の柄を触って夢茨に伝えたのだった。

「さて、今日は帰ろうか」

煉華は夢茨に手を差し出して優しく笑う。

「鬼退治、煉華さまたちと一緒にやったら強くなるのかな......」

夢茨は手を握り返しながらつぶやく言葉に煉華は「さてな」と言葉を紡ぐ。

「やっぱり一緒にいたい、けど今のままじゃ貴女と一緒に居れない。……邪魔になるだけだ」

夢茨にとっては最悪な告白。

「私の護衛、天華、天華の護衛と手合わせして実力をあげてみたらどうだ? 月は実践能力ある。」

荷物を背負って帰るために歩き出しながら煉華は夢茨に伝えていた。

「やる。」

その言葉に煉華はうなづいて「月たちに伝えとこう」とつぶやき玄関前にたどり着いた時は既に山の向こうに日は落ちていた。

「明日、寺院で待っておるからな」

煉華は手を振って戻って行った。


続くよー ➡︎

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