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春の章 桜が眺める淡い季節 蕾3

楝華(れんげ)は、割られた結界を貼り直し部屋の中に夢茨(ゆめじ)を座らせていた。

「結界術は苦手なんだがなー。」と言いつつも屋敷全体に結界を貼る。

「まぁ、後で得意なやつを呼ぶから急ごしらえでいいか」とブツブツ言いながら屋敷のみの結界になっていたのだった。

「なんで結界??を貼り直してるの?」

張り直して、戻ってきた煉華に夢茨は首を傾げる。

「…何となく、かな?」

煉華は一瞬、悩んで夢茨の問いに答えた。

「煉華さま、戻りました」

(つき)は廊下で声をかける。

「おかえり。入っていいぞ」

煉華は月の声に答えた。

煉華の言葉に月は後ろに連れてきていた者を先に中に入れた。

夢刻(ゆめこく)さん!」

夢刻を認識した瞬間、夢茨は走り出して飛びついた。

「夢茨?!」

夢刻は抱きとめた相手を認識すると混乱していた。

「なんでお前この世界(鬼の世界)にいるんだ!」

夢茨が煉華の屋敷にいることは道すがら月から伝え聞いていた。

「偶然にも煉華様のお屋敷に匿われて良かったが……」

「煉華……さま?」

夢刻までも煉華に"様"付けしてることを耳聡く問い返していた。

「鬼の姉姫だよ」

夢刻が頭を抱えながら力無く教えられた夢茨は煉華を見つめていた。

「おれ、食べるの?」

かたかたと震えながら煉華に問いかけ、問いかけられた煉華は肩をすくめる。

「人間は食べないよ。喰う鬼は別の派閥だな」

「煉華さまは、逆に人間を守護する鬼だ」

煉華の言葉が足りないと月は夢茨に教える。

「...…危険だから、覚えなくていいがな。今、現在この世界にはふたつの派閥がある。人と共存派と人は食糧派だな」

2人の話をより噛み砕いて夢刻は教えてくれた。

「迷い込んだ人間を匿い人間の世界に帰すということを煉華さまと天華さまはしている。だが配下の鬼は匿うことなく食うてしまう奴らもいるから警戒は怠るな」

夢刻は腕を組んでこんこんと言い聞かせている。

「んでだ、夢茨、お前はいつの間に煉華さまと知り合っていた?」

「寺院で遊んでいる時に見つけた」

夢茨の軽い言葉に再び頭を抱える。

「煉華さま、大変お騒がせしたと思います…」

夢刻は頭を下げる。

愧焔(きえん)様へは、ご報告しておりますが…人の世に人喰いが来ております。こいつ(夢茨)を追いかけていたのは人の世に出ていた鬼の1人やもしれません」

夢刻は伝える。

「必要に応じて呼んでくれれば行くから任せろ」

煉華は夢刻の言葉にうなづいたが、夢茨の顔色が青くなってきていた。

「ここの空気が人には毒なのを失念していた。この子は特に小さいからこれ以上ここにいるのは危険だろう」

煉華は「解散」と宣言した。

「お気遣いありがとうございます」

夢刻は一礼してフラフラになっている夢茨へ背中を向ける。

夢茨も意地を張ってる場合ではないことを理解をしたようですぐに背中に張り付いていた。

夢刻は夢茨が背中に乗ったことを確認し、夢茨を支えて立ち上がる。

人間の世界に戻っていこうとしているのを月が「護衛でついて行こう」と2人と一緒にでていった。

「さて、と」

煉華はかなりの時間を放置していた、鬼が激突し崩れた塀を片付けようと近づいた。

放っておけば月が帰ってきてから片付けを手配するであろうことは理解していた。

しかし、1人で抜け出した事がバレたためご機嫌を取ろうと動いたのだが…。

数個瓦礫をのどかしていたが、違和感がある。

巨体が埋まっていたはずなのに瓦礫をいくらどかしても身体が見つからない。

瓦礫をどかした場所に血痕は残してはいるが、鬼の身体が存在していなかった。

「...…不味いな。非常にまずい。生きているのか死んでるのか分からないのは悩ましいな」

煉華は拳を握りしめて呟いていた。


しばらくして戻った月は仁王立ちをして座っていた煉華を見下ろす。

「……あ。やっぱり?」

「分かっておられるようでよかった。」

煉華の反応に月は笑顔でうなづいた。

「悪かった。今後はお前か、もしくは置き手紙にでも一言でも残して行くから」

絶対零度の目を前に煉華は宣言した。

「まぁ、天華(てんか)さまと違ってあんたは強い方だから心配はしては無い。一応、俺は"お前の護衛"ということを頭に入れておけということは紹介されてあんたに付いた当初からずぅーっと!今日まで言っていたはずだ」

説教モードに入った月を相手に勝てる煉華ではなかった。

縁側にて正座して月のお叱りが過ぎ去るのを怒鳴られながら延々に我慢している。


月のお説教から解放されたのは、かなりの時間がたったあとだった。

「……瓦礫の掃除は感謝する」

月は怒りが落ち着いたようで一礼していた。

「ところであの吹き飛ばした鬼は?」

煉華の「見つからなかった」という言葉に月も怪訝そうな顔をする。

「手応えもあったし、この出血だから、最悪な事態ではないだろう」

月の言葉に煉華はうなづく。

「心配であるなら、人間の世で見回りしていればいい。危険なこと以外なら好きにしたらいいと思う」

月は煉華に伝えていた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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