冬の章 紅椿の落ちる白き季節4
夢斗は煉華の机の引き出しに仕舞われた書状を見ていた。
一度も、開いて読んではない。だけど捨てられなかった、煉華が書いた最後の手紙になるから。
言いたかった事はわかっている……内容は、予想はしている。
しかし、夢斗は煉華が一番大事だったが、煉華の最後の言いたいことだけは呑めないのは夢斗の自己中心的な考えだった。
先代と言っていい夢刻の屋敷だった場所はそのまま夢斗が、引き継いで住み続けていた。
小鬼や半鬼たちが愧焔から派遣されてきているため家の事をする事はないためか、数ヶ月に数日姿を消している。
時折、夢の一族が訪れ、顔合わせなどがある。
鬼灯の屋敷は森の中に建っているためか、隠れて様子を見に行けるが、気配に敏感な奴らの集まりのため、気配を消す術がまだ使いづらい夢斗は苦労していた。
「……鬼?」
白髪に銀髪、薄青い瞳が特徴的な、冷たい雰囲気の美青年へと成長した雪太郎が夢斗の方を見て声をかける。
「……やはり、隠れれないか」
ため息をついて金の瞳で青年を見た。
「……悪いことしないのなら見逃すけど」
青年は冷めた目線はそのままに彼の言葉に夢斗は悩む。
「食べる為に来たのなら容赦はしないけど覚悟はいい?」
青年から冷たい気配が広がっていく。
「……喰うつもりはない」
夢斗は、力を行使しようとする青年を見て話を聞けよと思いながら青年に呟く。
「俺の屋敷に、出入りしている、小鬼の知り合いがいるらしくてな。様子見を頼まれてきただけだ」
夢斗は「もう要件も終わったから立ち去る」と森から離れていく。
離れていく紫色の髪の金色の瞳の男の雰囲気に何故か懐かしい気持ちが出てきた。
「もしかして、夢茨?」
青年は少しだけ、気を許した声を出していた。
「悪い、俺の名前夢斗だよ。雪太郎、きちんとここ守っておけよ」
振り返って青年、雪太郎に声をかけて夜の闇に溶けてきえていく。
「あいつ……」
雪太郎は夢斗が消えた場所を見てモヤモヤとしながらも屋敷に戻る。
夢華は鬼灯の術師として人々を助けているのをみた。
煉は武を極めたいようで鬼城から動かないようだった。
2人とも進む道が別れていたとしても元気そうにしていたが、ふと煉だけ心配になる。
夢斗は鬼城へと潜入をし、武器庫奥に仕舞われてある野太刀の憤怒と刀の怨嗟を見に行った。
憤怒も怨嗟も認めている使用者がまだ生きているのを知っているのか、次の持ち主を探そうともしていないようで、二つとも武器の置き場から動かされても、動いてもいなかった。
夢斗は、何も躊躇いもなく憤怒と怨嗟二つの刀を鬼の世界に持ち出し、夢斗は憤怒と怨嗟の二つとも力を使い粉々に破壊していた。
破壊された欠片から立ち上った憤怒と怨嗟の黒い気は鬼の世界に組み込まれていくかのように消えていくのを確認した夢斗は、安心して息を吐く。
「夢茨だった時の煉華が考えていた、心配の種はこれでなくなった」
手の上に残った憤怒と怨嗟だったものを夢斗は手のひらを返し地面に落としていく。
「煉が選ばれると危ないしな」
夢斗は幸せだった光景を思い出していた。
鬼城の至宝であった二つの刀が紛失し、困るのは鬼城であって煉ではない。
当分の間は大騒ぎになるだろうが、知ったことではない。
もしくは、夢茨の捜索がまた開始されるのかもしれないが、すでに人の世界には夢茨の痕跡が失われているためすぐにうち止めされるだろう。
興味が薄れてすぐに鬼である夢斗の思考に戻す。




