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冬の章 紅椿の落ちる白き季節3


 金の瞳、桜色に見える髪を一つ結びした女性が腕を組んで天華をまっすぐ睨んで立っている。

「止まれ。それ以上は進むな」と厳しい声で静止する。

煉華(れんげ)姉様……?」

 煉華は天華(てんか)を睨む。

「戻れ」

 煉華のそばに鬣のような髪と金の瞳を持つ大きな男と黒髪を纏めていて、青緑の色の瞳の小柄な女性が現れた。

「せっかく……助けたのだから、生きろ」

 粗暴な性格なのが声に表れているのだが、天華に対しての言葉は、優しさを含んでいる。

「生きて、天華。……今度、会う時には楽しいお話聞かせてね」

 優しい声で光の方へと背中を押してくれる声。

「姉様、父様、母様……ありがとうございます」

 ゆっくりと3人が佇む方向とは逆の方へと歩き出していた。

「天華、あの子たちを頼んだ」最後、煉華の声が聞こえて来たのを最後に光に包まれたのだった。


 意識が浮上していくに連れて、肩が、左胸から右腹へとかけて袈裟懸けに痛む。

 ゆっくりと目を開いて、ゆっくりと周囲を見まわす。

 泣き疲れている寝ている黒髪の女性が布団の傍に座っている。

「……よる?」

「……天華さまー!」

 うわー!!と夜は、泣きながら被さり抱きついてより一層激しく泣き出していた。

「……何かありましたか?」小鬼が慌てたように走り襖を開いた。

「て、……てん、……天華さまー!」

 小鬼も走って寄って来ていた。

「大丈夫ですか? どこか痛いところありますか?」

「……まだ、動かしづらいなーって感じでしょうか?」

 天華の上に被さっている夜をどかしながら小鬼は天華を助け起こしてやっていた。

「水を飲んで、まだ、ゆっくり休んでいてください」

 小鬼は水を差し出しながら呟く。

「……何日くらい眠っていましたか?」

 天華は小鬼たちをみて問う。

「……一ヶ月です」小鬼たちの言葉に天華は立ちあがろうとして肩の痛みに呻く。

「……治癒したら……」

 天華は術を行使しようと集中したが、力が発動する気配がない。

「鬼狩りの刀になんらかの術を施していたらしくて、天華様の妖力が空になっているみたいなのです」

 小鬼は天華に伝えられていた。

 鬼狩りの刀自体も、持ち主でさえもなんの力も有してなかった為、違うと天華は思った。

「……多分まぁ、色々あって使い切ったんだと思います」

 天華は「それにしても一ヶ月……」ふう、と大きく息をつく。

 完全に妖力が溜まるのが何時になるか予想がつかない事態に天華は頭を抱えた。

「あいつ、殴っておけばよかったですか?!」

 夜は天華を見て言う。

 誰をとは言わないが、多分、襲って来た柘榴のことだろうなと天華は横に首を振る。

「……そんなことされてたら私、治療、間に合いませんでした」

「……それはそうでした」

 天華の言葉に夜ははっとしてうなづいていた。

「天華様が起きるの何時になるか怖くて怖くて……」

 夜が話ながら滝のような涙を流していく。

「……あれから、小鬼を集めて止血の対処してもらいながら、月を呼んで怪我の対応してもらって……」

 ぐすっと鼻を鳴らしつつ話していた。

「……動いて、いいですか?」

 天華は周りを見て問うが全員慌てて首を横に振る。

「……何を言ってるのかわかってます?! 今、人間の赤ちゃん以下の天華様をここから出せませんよ!!」

 夜が天華必死に言う。

「……言い過ぎだと思う」

 天華の言葉に小鬼たちは「本当のことかと」と声を揃えて言う。

「せめて怪我が治ってからの方がよろしいと思います」

 小鬼は今回は夜の味方になるようで、天華の言葉に首を縦に振ることはなかった。

「……みんな、何気にひどくない?」

「酷くありません。どのくらい心配したと思っておられるのですか? 一時は、生死の境を彷徨っていたんですよ!」

 天華の言葉に小鬼が涙ながらに怒っている。

「私たちを助けて頂いたのに、我々は貴女様に何もできずに……悔しかったのです」

 小鬼の言葉に隣で夜はうんうんとうなづいている。

 まるでもっと言ってやれ!!と言ってるかのようにしている。

「……ごめんなさい」

 小鬼たちに天華は頭を下げた。

「わかっていただければよろしいのです」

 小鬼はほっとしてうなづいていた。

「あ。そういえば、月が天華様にって」

 夜は思い出したかのように書状を差し出す。

「……多分、私じゃ、この内容を遂行できないような気がしてきました」

 真剣な顔で書状を開き読み進めていく天華に夜は首を傾げていた。

「願わくば夢華だけは最悪の結末を向かえない事を祈りますね」

 天華はため息をついて夢華(ゆめか)のいく末だけ、心配していた。

 きっと、周りの人物の性格が良ければ最悪な結末にはならない、と天華には確信はある。

 だからと言って天華は目を離すことはできない。

 煉華との約束がある。

「体力回復したら行っていいってことですよね」

 小鬼たちに確認を取る。

「はい。夜さんか月さん同伴であれば」

「わかりました」

 小鬼の言葉に天華はうなづいて身体を治すことに妖力を回す事に意識を向けた。

「無茶して治療しようとしないでください!!」

 夜は天華に対して泣きながら声を上げる。

 小鬼たちもそんな天華を見てどこからか縄を持って来ていた。

「おとなしく、します」

 天華は身動きできなくなることは阻止したく、小鬼たちと夜の言う事を聞くことにしたみたいだった。

 完治にはそれから数日の期間を要し、見守り隊が居る時であれば人間の世界へと足を向けることができた。


 

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