冬の章 紅椿の落ちる白き季節
煉と夢華を残して夢茨は姿を消した。
島脇たちも捜索してくれたが手掛かり一つもなく今残っている鬼狩りの者たちの中の河水と言う古株の人間に全権委ねられていた。
柘榴は桜の封印を解いたとして捕縛されたと言うくらいしか情報はなく、どうなっているのかは鬼灯のものはわからない。
「鬼城に戻りたいものがいたら戻って欲しい」と河水は鬼灯の館まで来て声をかけたのだが戻る選択をしたものは数人のみしかいなかった。
鬼城に戻る選択をしたものは煉華と天華が鬼狩りの中で活動した事やあの方達の功績を削除されないようにするためと鼻息を荒くして戻った。
夢茨と煉華の忘形見となる煉と夢華の処遇も雪太郎と河水で話し合いが行われた。
煉だけでもどうかと鬼城の者たちの声に雪太郎は絶対零度の視線を投げた。
「夢茨の後継だとしても、あんたら、煉華を一度でも裏切ってんだ。誰が預けられるか」と突っぱねても引かずに雪太郎に何度も頭を下げに来ているようだった。
「信じられないのなら鬼灯のものを煉に付けてくれてもいい」
河水は雪太郎にまっすぐと視線を投げていた。
「……」
雪太郎は河水の真剣な表情に煉を預けてみる事にした。
夢華は風音と穂香が中心となり健やかに成長していた。
煉華より少し色の濃い緋桜のような髪に優しげな光を宿す金色の瞳の少女になる。
時折、煉を連れて鬼灯の方へ戻る子たちもいたようだった。
「……雪太郎」
「来てたんだ」
雪太郎は声をかけられた方を向き声をかける。
「煉も勉強ばかりだし……息抜きにね」
にへらと笑う鬼灯のものに雪太郎はうなづいていた。
「夢茨は見つからないの?」
「うん、まだ見たい」
雪太郎は悩む。
「こっちは雪太郎を中心としと動くと言うようにして天華様が離れた後も混乱は少なかったけど」
鬼城は……と今も混乱状態の組織を思い返してため息をつく。
「それは、鬼城の問題だから」
雪太郎は鬼城に出向している青年をみて言う。
「あと、煉華さんと天華さん関連の情報隠し部屋に保管したよ」
青年はのんびりと答える。
「なんか不穏な動きでもあった?」
「うーん、あっち、派閥で揺れてるなー。煉くん連れてもどっていい?」
雪太郎の質問に青年は軽く雪太郎に返していた。
「別に戻ってもいいよ。鬼城がどうなろうと知ったことではないし」
相変わらず感情のない声で鬼城のことは語る。
「柘榴が天華さま、刺したのやっぱ耳に入ったのか」
「……」
無言で青年をみる雪太郎。
「……あいつ殺してやりたい。けど鬼城から行方を伏せられてたら復讐にもいけない」
柘榴が天華を傷つけた話を聞いて、だからずっと姿が見えなかったんだと納得した。
納得して、いまだに姿を見せてくれないのは天華様も死んだからだと考えてしまう。
だけどと雪太郎は思う。
一番殺したいと願ってるのは他でも無い目の前で煉華の命を奪われた夢茨なんだと雪太郎は思いを押し戻していた。
「まぁ、煉がいるうちは頑張るけどね」
「鬼城に染まるなよ」
雪太郎は青年を見て声をかけた。
「煉に夢茨さんと煉華さんの絵を見せるんだけど少し寂しそうな表情で見るんだ」
絵の好きな者が描いたものを煉に見せて話して、やはり寂しいようでそんな顔を見せるらしい。
今は、夢華と話しているため寂しい顔はしてはいない。
煉と青年を見送り、部屋に戻ると少しの違和感。
席を外していたのはあの会話する少々の時間であったはずなのに雪太郎は自分部屋の違和感に気づいていた。
何時でも天華が訪れた時に手渡せるように机に置いてあったはずの煉華からの天華の書状がない。
「……天華様への、書状……」
雪太郎は慌てて周囲を探すがどこにも机の下、座布団のしたをめくり探すもどこにも落ちては無い。
「……もしかして」
天華が生きていて、書状の存在を月から聞いてきたのかと脳内で結論つけた。
真実がどうであれ雪太郎は天華がどこかで生きていたらもうそれで良いと感じていた。




