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秋の章 彼岸花が見上げる実る季節 情熱2


 あれから時が積み重なり幾月か。

「鬼関連の文が減ってる様な気がする」

「それは。いい事だ」

 夢茨(ゆめじ)の言葉に煉華(れんげ)はうなづいていた。

 最近、天華(てんか)や夜、月の姿も見えない期間が長いのは、気づいていた。

「……もしかしたらあの3人が先回りして解決してくれてるのかもしれないね」

 夢茨の言葉に煉華はうなづいていた。

「……ところで、煉華、体調は?」

 夢茨は、ある時期から煉華に対して様を付けなくなった。

「今日は、すこぶるいいね」

「少しだけ俺、出ていていいかな?」

 煉華の言葉に夢茨は“気になる文があったから”と伝えて来ていた。

「気になるなら行って来た方がいい」

「ありがとう! すぐに月が天華を呼び戻す様にしておくけど」

 夢茨は心配そうに煉華を見ている。

「……気にしないで行ってこい。すぐ終わる事なら夢茨が早いかもしれないだろう」

 煉華は笑いながら夢茨を追い出す様に送り出していた。

 夢茨が出ていき数分後、月が戻って来ていた。

「煉華さま1人か?」

「……あぁ、おかえり。月」

 落ち着いた声に煉華は反応して手を上げる。

「夢茨は……文を見て気になるから行ってくるって行ってたな」

 煉華は先ほどの騒ぎを思い出していた。

「夢茨が戻るまで護衛の仕事に復帰するか」

 月は扉の外で座る。

「大袈裟な」

 煉華は月を見て困った表情を作る。

「……しかし、近くにいてくれるならありがたいな」

 月を見て安心した表情を作る。

「最近、体調が崩れることが多くて」

 煉華は“困るよな”と呟いていた。

 煉華を見て、月は何かを感じたのか「お前それは、」と言いかけて止まる。

「……まぁ、無理しない方がいいな」

 月がうんうんとうなづいていた。

「お前もそれ言うのか……」

 煉華は笑いながら月を見てうなづいていた月に向かって言っていたのだった。


 夢茨が文に呼び出され何日か過ぎていた。その中でも届けられる文は止まってもくれない。

「……これは、あっちに入れて」

 一つ一つ封の宛名を確かめる。

 個人名のものは事務の方で分けてくれてはいるのだが時々紛て夢茨のところに来てしまう事があり、その時は開かずに宛名の人へと手渡しする。

 そこから、封を開いて文の内容を確かめて行くのだが、多少時間がかかる。

「おや、早急にこられたし?……」

 煉華は文を持ち今、戻っている隊士を思い出す。

 鬼狩り組織として機能している中で今誰が戻っているかは、わかる様にしてくれている。

 先日、柘榴(ざくろ)さんが戻っていたことを思い出して“どうか、外出してません様に”と祈りながら柘榴がいるであろう場所に足を向ける。

 月がついてこようとしていたが「訓練所までだから大丈夫」と休憩を言い渡して煉華は歩き出した。

「失礼します」

 今の時間なら訓練所にいる事はわかっていたので扉を開いて覗く。

「……あっ」

 周囲を見回してそこに居る隊士たちを見渡して目的の人物を見つけて歩き出す。

「柘榴さん、先日、戻って来たのに申し訳ないのですが」

「……仕事か?」

 柘榴は煉華を見下ろしてぶっきらぼうに問いかけて来た。

「はい、むかってもらえますか?」

 文を手渡して柘榴が文を受け取り内容を読み進めている。

「……数多くの鬼狩りの経験者か」

「今残っている子たちは見習いか、言うほど鬼を倒していません」

 柘榴はふむと呟いていた。

「わかった。行ってこよう」

 文を煉華に返して外に向かって行く。

「場所は?!」

 煉華は慌てて文を返そうとしたが、柘榴は「記憶した。問題ない」で会話を終わらせていた。

 煉華は、真剣な顔で柘榴に深く一礼をして見送っていた。

「月。休憩してなかったの?」

 姿がみえなくなって文を持ち仕事場に戻ると月は向かう前までと同じところに座っていた。

「ちゃんと休憩しているだろう」

 月は煉華に言うが「気を張ってるのと気を抜いているだけの違いじゃないのか」と月を見て言いながら煉華は残りの仕事を再開した。

「気を抜いたら十分、休憩になる」

 月は煉華に対して言葉を返していた。

 

 夢茨は文の相手と向かい合っていた。

「鬼狩りの中に鬼がいるのは何故なのか?」

 文の送り主は夢茨を見ていた。

 そこに感情を読みとる事ができない無表情であった。

「彼らは俺たち人間を守護してくれている人々だ。しかも、完全に鬼ではなく半分人間なんです」

 まっすぐと黒い瞳を見据えて夢茨は力強く言う。

島脇(しまわき)さんへ、報告することが遅れたのは申し訳ありません」

 夢茨は頭を下げる。

「彼らが暴走する事はないのか?」

「これまで暴走した事はないです」

 島脇の質問に夢茨は顔をばっと上げて即答している。

 これまで、人を襲った事は見た事はない。しかも、純粋な鬼の夜と月ですら人を襲い喰うと言うところを見た事はなかった。

「もし、……もし、あの子たちが人を襲うのなら自分たちで処理をします」

 夢茨は島脇に宣言した。

「……そこまで言うのならば信用しよう」

 島脇は重々しくうなづいていた。

「万一、問題が起きたら術で縛り付ける様にできる様にしろ」

 島脇は夢茨に向かって言う。

「はい、……わかりました」

「到底、そちらの館で話せる内容ではなかったのでな。呼び出してすまなかったな」

 夢茨は一礼して部屋から出て行った。

 島脇は夢茨の出て行った方を目を向けた。

「……鬼相手に人間が生身で戦う事は無謀な事だろう」

 島脇は組織の人間を無謀な戦いから守るためには今の状態を目を瞑るしかない事はわかっている。

 わかってはいるがやはり鬼の血を持つものが近くにいるのは危険すぎる事であると伝えねばならない事でもあった。

 島脇は、“夢茨はわかってくれるはず……”と考えて今回の議題として夢茨に強い言葉で伝えたのだ。

「願わくば、問題が起きないことを祈る」

 島脇は目を閉じて手を握りしめて、呟いていた。

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