夏の章 鬼灯が照らす灼くる季節 燐光5
煉華は1人で鬼を退治して戻って来ていた。
銀色の長い髪を夜風に揺らし、大きな木に座っていた少女を認めた。
「天華、どうした?」
煉華の声に気付き木から降りて煉華の前に降りて来た。
「……“月の森”の所有権をもらいましたので、術組はそちらに引き篭もろうかと」
天華の言葉に煉華は首を傾げていた。
「月の森って向かいに見える小さな山の麓の森だろう?」
「……色々と考えることができたので、姉様との約束が中途半端な結果になるのですが……」と煉華を見つめて天華は伝える。
「鬼狩りで術組が必要な件があればすぐに合流いたします」
煉華は天華の言葉に「分かった」とうなづいた。
「鬼の子たちはもう移動させたのか?」桜の館を見つつ煉華は呟くようにして聞く。
「はい」
天華はうなづいた。
「夜が月の森の館を作るのを頑張ってくれてますし、あの子達も手伝ってくれてるようです」
みんなで住む家であるからとてもやる気に満ち満ちているのを見ていた。
「守りはどうする?」
「結界をはります」
天華は煉華の言おうとしていることを理解して答える。
煉華は手を合わせてゆっくりと開いて行くと、赤い光を放つ球を出したのを見て天華は驚く。
「結界の一部に組み込んで欲しい」と赤い球を差し出して来た。
「姉様、これは受け取れない」
天華は首を振る。
煉華を護るための力の球であり、鬼王の娘であると言う証でもある。手のひらに転がっている球を見つめて「良い」と天華の手のひらに落とす。
「人として生きると言うことですか?」両手で包み込むように球を握り、煉華に問うようにしてみた。
「まだ、誰にも言うなよ」
ニヤリと笑いながら煉華は人差し指を口の前に持って行って天華に言う。
「私の選択だよ。ただ、今現在の話を聞いたらアイツは他の選択しなくなるだろうな」
天華に煉華はのんびりとした声で言う。
「夢茨自身で選んで欲しいことがあるんだよ」
「わかりました。しかし、なにが有事の際にはお返しします」
天華は大事そうに煉華の力の球を見つめて答えた。
煉華も力の球を見つめて天華の頭を撫でる。
「うん、頼む。……だけど、私より先のある子達を護れるなら返さなくても良いぞ」
煉華の言葉を聞いて天華は笑って姿を消していた。
天華は月の森へと移動をして煉華の力の球を使い結界を発動させる。
煉華の力を返す時のことを考えて天華自身の力も織り交ぜながら結界を作っていく。
「完成ですねー」
夜は結界が完成したのを確認をして近くに来ていた。
「明るくなったら夢茨と話して来ますね」
夜と雪太郎に言う。
「鬼城所属の半妖たちはどうしたら良い?」
雪太郎は天華に問う。
「移動したい子たちいたら移動させて良いよ」
天華は答えていた。
「分かった」
雪太郎は天華の言葉にうなづいた。
天華は夢茨と向かい合って居る。
「半人半鬼や半妖と呼ばれる子、人の中では生活が出来ないと思われる子は“月の館”で受け入れます」
「月の館って鬼の世界の?」
夢茨は最初見た館を思い浮かべて天華に問う。
「鬼の世界の館にあの子達連れて行ったら凍えてしまいますよ」
天華はため息を吐きつつ夢茨に教える。
「ここのお向かいに月の森があります。そこを開拓して館を作ったんですよ。だから、土地の登録お願いしたいのです」
「ということは、”月の森”ごと術組の“鬼灯”の持ちものとして届けてて良いよね」
夢茨の言葉に天華は豆鉄砲が当たったかのように驚いている表情をしている。
「煉華さまに頼まれた」
へへへっと笑いながら夢茨は答えた。
「ただ、天華さまだと困ったことになると思うから雪太郎を代表者として登録することになるんだ“鬼灯 雪太郎”として」
夢茨は勝手なことしてごめんと申し訳なさそうに言うので「問題ないと思うよ」と天華はうなづいていた。
「あと、野菊さんは、注視しておいて欲しいのですが」
天華は夢茨に伝える。
「あの人と一緒に行動した半妖の子たち、鬼城の方でも、鬼灯の方も大怪我して戻っていることが分かったのですよ」
夢茨は天華の言葉に顎に手を置いて悩む。
「……そうなんだ。こっちでも調べてたんだけどそこまで強い鬼でもないのに死人まで出てる時もある様なんだ」
「なんだ、調べてたんですね」
夢茨の言葉に天華は呟く。その天華の呟きに夢茨は「そんなに信用なかったの?」と言いたげに脱力していた。
「流石に犠牲が多いから」
脱力から復活して真剣に答える。
「雪太郎には、何かあったら反撃して良いと許可は出してる」
天華の言葉に夢茨は頭を抱えた。
「雪太郎の場合はやり過ぎるかもしれません」
雪太郎のことを考えて天華は夢茨に伝える。
「あの子は人でありながら、異能を持って生まれ、捨てられた子どもです。人が人外に対して持つ想いと同じ気持ちを同族に向けて居るのが、雪太郎です」
夢茨に対して天華は雪太郎のことを伝える。
横殴りに降る雪嵐の日、鬼の世界で天華の住む雪山の館に幼い子が捨てられていたと夜が拾い連れて来て今に至る。
「……野菊さんが手を出していないのなら良いのですが、もし彼女が半妖に手を出して居る犯人だとしたら、……野菊さんは此処には戻りません」
天華は真剣に夢茨に向かって紡いだ言葉は後に予言になってしまう言葉であった。




