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夏の章 鬼灯が照らす灼くる季節 燐光4


 穂香(ほのか)が意識を取り戻して嬉しいのか緋流(あかる)は穂香に話しかけている。穂香は曖昧にうなづいていた。

「半妖の私が悪かったの。雪太郎(ゆきたろう)君なら純粋な人間の聞き雪太郎君なら」

 ほんの小さな穂香の思い詰めたような言葉は緋流の耳には風に攫われて届かず消えて行っていたが、天華(てんか)の耳には届いて来ていた。

「……」

「天華さま?」

 立ち止まっている天華を雪太郎は首を傾げて声をかける。

 居なくなり、敵対関係になる可能性があり身の天華には、どうにもできない事柄に胸が苦しくなる。

「……雪太郎、もし、この組織がなにも守れないならみんなを連れて出て下さい」

 天華は真剣な顔で雪太郎を見た。

「屋敷はすでに用意は済んでますが、住めるようになってるかまだ見てはないんですが」

 雪太郎はうなづいていた。

 鬼狩りの鬼城(おにしろ)として動いている中で術組は術組単体での窓口もあり、別口での依頼が届く時がある。

 故に、術組は鬼城から独立して運営するにもさほど難しいとは感じないと天華と雪太郎は考えていた。

煉華(れんげ)姉様との約束があるから悩ましいんです。雪太郎、穂香(ほのか)風音(かざね)白次(しろじ)が術組のまとめ役として育ってもらえればと考えていたんですよ」

 雪太郎、白次は、確実に実力を上げて来ているし、つい先ほどまで付き添っていた穂香は治療士としても申し分ない。

 緋流も雪太郎と白次に並んで実力を上げた。

「風音戻りましたー」と元気よく戻って来た翠の目と黒髪の少女になにやら疲れ果ててる(よる)の姿。

「風音、鬼城の隊士は、私の手助けなしで問題解決しました」

 天華に手を上げて報告をした風音と夜を天華は「お疲れ様」と労っていた。

「天華様、夜ってほんとーにつよいの?」と疑問に思っているかのように風音は問いかけて来た。

「強い……はず……」と疲れ果てている夜を見つめて天華は呟く。

 夜は引き締まっているところは引き締まってるし、力も鬼相手にも引けは取らない(まぁ、夜も鬼だから強いんだと思うけどすぐ泣くが信じられない力を発揮する時もある)と天華は夜の評価をぶつぶつと出している。

「あ、そーか、私たちに花を持たせてくれたのね!」

 子供独特の感性での言葉が風音の口から放たれた。

「そうなんですね。夜偉い」

 天華も風音の言葉に夜の頭を撫でていう。

「おかしい! それはおかしいです!!」

 涙ながらに天華と風音に突っ込む。

「……そして、夜もう一仕事あるのですが」

 天華の言葉に震え涙目になりながら天華を見つめて来ている。

「もう4人もそだってるやないですか!もう大丈夫じゃないですかー!」

 悲鳴のような声が上がっていた。

「あと1人!あと1人だけ緋流を育ったのを確認するだけだから!!あとは夜の好きなように動いて良いから」

 天華は夜に必死に頼み込む。

 その姿を見た雪太郎と風音は天華と夜は、どっちが身分が上なのかと言葉を出すのを堪えた。

「術組の長って雪太郎じゃないの?」

 夜はふと雪太郎を見て呟く。

「ヤダ」と満面の笑顔で拒否の言葉を発している。

「術長になったら天華様と一緒に行動できないからヤダ」

 その言葉に夜は乾いた笑いしか出なかった。

「雪太郎、なにいってるんですか!天華様と君は一緒には居れないんですって!」夜は声をあげながら天華の隣から雪太郎を引き離そうと動く。

「……居る間は一緒に居る!鬼の世界にも俺なら行ける!!」

 雪太郎は天華の腕にしがみついて夜の引き離しに抵抗しながら声を上げる。

「術組の長は天華さまでいーよ?ってか、私ら満場一致で天華様だけど」

 風音もうなづいていた。

「駄目です!天華様は私の主様です」

 ムッと夜は声を出す。

「話を戻すけど、術組で俺たちが分担で天華様の受け持ってた事務を分担すれば良いんじゃね?って話してたのは話していたんだ」

 雪太郎は言う。

「いつまでも天華様を縛れないのは分かってたから」

 風音も真剣な顔でうなづく。

「だから勝手に組織名と組織図を書いて夢茨に提出して来た。今はまだ天華様は相談役として名前を書いているけどちゃんと独り立ちできるようになったら……」

 雪太郎は寂しいけど名前は消すことにするとつぶやいていた。

「んで、2人でどこに向かってたの?」

「夢茨のところにまぁ、報告に」

 風音の言葉にいつもの調子に戻った雪太郎は答えた。

「暇だしついて行くよー」

 風音は夢茨の方へと身体を向けて歩き出したため、慌てて天華と雪太郎も追いかけて行く。

 夜は1人残される形になって周囲を見渡して一呼吸おいて慌てて付いて行っていた。


 夢茨は天華と雪太郎、風音と夜の顔を見まわして「な、なんでみんなできたの」と呟く。

 天華を先頭に3人続いて夢茨の部屋へと入って来た子達を見て夢茨は驚いた、そんな夢茨の顔をみて風音は「私と夜は付いて来ただけー」と笑いながら言う。

「えーと、もしかしてさっきの揉め事の原因の話?」

 夢茨は天華と雪太郎に対して首を傾げていた。

 天華は夢茨の言葉に「まぁ、そうとも言えるけど」と悩みながら口を開いた。

「穂香は怪我と精神的な状態を鑑みたら、しばらくは前線には出せないと言う結論に至りました」

 天華は夢茨に伝える。

「そうだね。怪我でも大事になったら、生命に関わることになるからその決定で大丈夫だよ」

 夢茨はうなづいている。

「穂香の代理でおれが……」

「私行くー!」

 雪太郎を押さえて風音が手と声をあげていた。

 押さえ込まれた雪太郎は驚いて一瞬なにが起こったか分かってなかったようだ。

 天華は風音を落ち着かせて雪太郎の隣に座らせた。

「天華さまーいきたいー」駄々っ子のように天華の着物の袖を握って左右に揺らす。

「雪太郎に決まったんだから風音は大人しくしてなさい」

 天華は風音の手から袖を引き剥がしながら言う。

「それに、風音は昔ながらの友達と組む約束があったんなら、そっちを優先だろ」

 天華の言葉に雪太郎はつなげて風音を睨んだ。

「約束は大事だよね。んじゃ、雪太郎だね」

 夢茨はうんうんとうなづいていた。

「野菊さんと当分一緒になると思うけどよろしくね」

「わかりました」

 夢茨の言葉に冷めた表情でうなづく雪太郎に天華は不安げに雪太郎を見つめていた。

 

 

 

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