夏の章 鬼灯が照らす灼くる季節 燐光2
鬼の世界と今、煉華たち鬼狩りの現状を鑑みて天華は2人を見つめて「考えていた事なんですが」と話を切り出していた。
「鬼の世界では生きて行くのが難しいと思いますが、人の世だと生きていける子たちでしょう。生活していける路を切り拓いてやれれば私も心配はなくなります」
「まぁ、鬼の世界で生きていけって路を作ってやっても鬼に喰われるだけの未来しかないから自殺行為だよな」
夢茨と楝華は、天華の提案に耳を傾けた。
「私が育てていける子たちは術で育てますが、武に関しては基本は教えていけるけど……」と天華は2人を見る。
「お前、体術使えるけど得意ではないもんな。武に関しては任せろ。適任は何人か居る」
申し訳なさそうにしている天華に楝華は、夢茨を指差していた。
「術に関しては、私よりお前が適任だからお前に任せる」と楝華は天華に全投にしてきていた。
半鬼の子供たちは天華が能力に応じて細分化している。
夢茨、楝華は孤児たちの中から、鬼とだけ違う意志のあるもの、裏方で動くものを組み分けしている。
「今更ながらなんだが、島脇から派遣されてくる奴らはどうするつもりだ?」との言葉に夢茨は楝華を見つつ固まる。
「そっか、そういえば受け入れないといけなかったよな。あの人の部下みたいな人らなら。危ない人はいないと思うけど……様子見してもらってて良い?」
楝華に対して首を傾げて夢茨は問いかけていた。
「特にあの子らは警戒するだろうからな」
孤児たちのことを考えながら呟く。
「夢茨殿は何処か?」と夢茨を訪ねて男女3名訪れた。
孤児たちの訓練を休憩中に、訪問してきた3名の前にでた。
「ごめん、夢茨は自分だけど」
「島脇殿より、夢茨殿を紹介されてこちらに合流させていただいた」
真ん中に居る青黒の髪を持つ長身の男性が代表のように声を上げている。
「わたしは河水とでも呼んでいただければいい」
「初めまして、夢茨と申します。今後ともよろしくお願いします」
河水は夢茨に手を差しだして、夢茨は差し出された手を握り挨拶をしていた。
「……煉華と申します」
夢茨が握手をといたのちに夢茨から一歩後ろに下がって待機していた、煉華は一礼して自己紹介をした。
河水は後ろに控えていた男女を前に進み出させて紹介を始めていた。
「赤毛の男は柘榴、右側の女性は野菊という」
赤毛の男、柘榴は一礼をしていた。
野菊と呼ばれた黒翠の髪を持つ女性は夢茨を見つめていたのか、一礼をした柘榴に気づいて慌てて一礼をしていた。
「われわれは、元はこの地区出身で鬼が襲撃してきたおり、とある方に救っていただいた後に、島脇様より拾っていただいておりました」
河水の言葉に煉華は冷静に様子を見ながら話を聞いていた。
「家族の仇を討ちたく鬼狩りの組織へ移籍を希望をさせていただきました」
何世代か前の恨み、憎しみの想いが続いているように河水の表情に現れていた。
柘榴からの視線を感じて煉華は赤髪の男を見返して「どこかで会ったことあるのか」と首を傾げる。
「煉華様?……でしたっけ?」
諸々と思考の海に沈んでいたら、いつの間にか近くまで来ていたらしい野菊は黄土色の目を煉華に向けていた。
「そうですが、……あなたは、野菊、さんでしたか?」
野菊の言葉と上から下まで値踏みする遠慮のない視線を受け止めながら煉華はうなづいている。
「歳も近そうだし仲良くしましょ」
「あ、ああ、よろしく」
握手をするかのように手を差しだしてきた野菊の手に触れるか触れないかの瞬間にさっと手を引いて行く野菊をみて煉華は一瞬敵意を感じたが、さして気にはならないため差しだしかけた手を引っ込めた。
「部屋割りはこちらで決めていいですか?」
夢茨は3人を見回した。
3人は同時に「はい」とうなづいているのを確認して、ひとまず空いている部屋へと案内するために移動を始めていた。
夢茨たちの話中に休憩が終わっていた子どもたちは近づくまいか、近づくか悩んでいたらしいことが伺える様子を見て煉華は手招きした。
「もう大丈夫?」
「話は終わったようだ。ところでまだ訓練続けるか?」
煉華の言葉に近寄ってきた子どもたちは悩む。
「なんか、夢茨さんが忙しそうだし今日はもういいや。自分たちで考えて動いてみる」
煉華は子供達の言葉にうなづく。
「実戦はまだやるなよ?」
「はーい」
煉華の言葉にうなづく子どもたちを見て煉華は自分の部屋に戻って行く。
鬼狩りの人数が揃って来たのを感じて来た夢茨は名簿を持ってうなづいていた。
柘榴は鍛治を齧っていたことがあったらしく武器庫にある刀の状態を見てくれていた。
「この武器は……」
怨嗟と憤怒をみて柘榴は声をかける。
武器の確認で夢茨も一緒に柘榴と武器庫を整理していたのだが、柘榴の言葉に夢茨は振り向いて一瞬時を止めていた。
「その二振りは、大丈夫!!」
夢茨は慌てて野太刀と刀を抱えて声を上げていた。
(認めはしないと思うけど、危険なのは、変わらないからあまり他の人には触らせない方がいいよね……)
夢茨は二振りを抱えて自室に戻った。
野菊は夢茨と煉華が動く時についてくる。
「……まあ、1人で戦えるから問題はないが……」
野菊は夢茨の側から離れないようにしているのを見て煉華は呟きながら2人を眺めていた。
野菊が倒れかけているのを支えた、夢茨を眺め煉華は息をつく。
「夢茨さま、足くじいてしまって歩けませんの。抱えていただけませんか?」
野菊は夢茨へ両手を広げて言う言葉が煉華の耳に届く。
困っている夢茨は煉華を見ていたが「問題はない」と煉華はうなづいたが、目を閉じて息を吐く。
問題はないが……何か心がザワザワしている気がして煉華は落ち着くために息を吐いたようだ。
屋敷に戻るなり夢茨は野菊の部屋へと彼女を運んで行った。
「姉様、イライラしてますよ」
苛々している煉華に声をかけてくる人影がある。
「天華か?」
他の子たちはひどく怯えて遠巻きに煉華を見つめているのを見かねて天華は声をかけて来たようだ。
「一体、何が……」と声をかけて来ていたが、思い当たることがあったかのようにうなづいている。
軽く涙目になってる少年少女たちを撫でている天華を見てまた一つ息をついていた。
「悪かった。」と怯えの表情の子たちに一言謝り煉華は空気を変えるかのように苛々を押さえ込んでいた。
「……煉華様って、恋の病ですか?」
きょとんと夜は声を上げていた。
「えっ?」
夜の言葉に煉華は石化したかのように動きを止めて夜を見ていた。
「えっ、そうですよね……?」
夜は先ほどまでの夢茨と煉華の様子を見て明るく声を上げていたのだった。
その夜を見た天華は肩をすくめていた。




