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夏の章 鬼灯が照らす灼くる季節 燐光1


 煉華(れんげ)が落ちていた扇を拾い、倒れていた天華(てんか)を横抱きに抱えて寺院に向かって歩いている中、遠くから夢茨(ゆめじ)が走ってきているのを気づいて煉華は立ち止まる。

「戦闘のあとがあったんだけど…何が……?」

「強い力を感じたから、見に来たら天華が倒れていた」

 夢茨の言葉に煉華は天華を抱え直しながら呟く。

「一先ず、部屋に連れて行って」

 夢茨の言葉に頷きながら煉華は寺院へと駆けて行った。

「天華様より強い人がいたの?」

「……そうだな。私たちは、鬼の世界の方では、弱い方だ」

 心配そうに覗き込む夢茨に天華を布団に寝かせつつ楝華は呟く。

 拾った扇を枕元に置いて天華の顔をみた。

 薄らと目を開いて「姉様?」と声をかけてきた天華に気づいた楝華は頭を撫でて「ゆっくり休め」と声をかけている中で天華は再び眼を閉じて寝息を立て始めていた。

 寝息を立て始めたのを確認すると楝華は部屋を出ていく。

 楝華について夢茨も部屋を出た。

「……何か聞きたいことでもあるのか?」

 夢茨が何か聞きたげにしつつ口を閉じているのに気づいた楝華は声をかけていた。

「人の感情を武器にって出来る?」

「……出来ると思うが、危険すぎる。私はおすすめはできない」

 真剣な目で問いかけてくる夢茨に楝華は首を横に振りながら拒否の言葉を伝えている。

「激しい感情になると、使用主が振り回されるだけだろう」

 楝華の目を真正面から受け止めて「俺の感情で作ってくれ」と夢茨は引かない。

「だめだ」

 短くより強い声で拒否を突きつけて自室に戻ろうとしたら、夢茨が楝華の袖を掴む。

「お願いだ」

 楝華は、夢茨が袖を掴む手を見つめ、そのまま夢茨の顔に目線を向ける。

 真剣な目で楝華の目を見つめ返してきていた。

「ひとまず、放せ」

「答えを変えてくれないと離さない」

 楝華の言葉に「いやだ」と即答して言い募る夢茨に楝華は大きくため息をついている。

「……楝華さま」

「とりあえず作ってやる」

 夢茨を見て楝華はうなづいていた。

 むすっとしながらもうなづいている楝華を見て夢茨は袖から手を離す。

「お前の感情で使えそうなのは憤怒と怨嗟だな」

「ついでにこの場にいる子どもたちの感情も上乗せできない?」

 夢茨の言葉に思わず楝華は「ばかなのか?」と言いかけて口を噤む。

 上乗せをするということは強すぎる力になり、それを振るう使用者の意識を飲み込む恐れがある。

 しかし、楝華は夢茨の思いは読み取ってしまった。少しため息をつきつつ「お前が扱えなかったら絶対に封印するか、私が没収をする」と短く宣言し、夢茨の部屋の前にある中庭に2人で降りていた。

 向かい合い楝華は夢茨に向かって手を挙げた。

「目を閉じて、気を楽にして何があってもそのままでいろ」

 楝華に言われて夢茨は目を閉じて楽な格好で佇む。


「顕現せよ」

 いつもの楝華の声ではあるが、神官が祝詞を述べるような静かな声が空気を震わせる。

 大きな力の奔流が楝華と夢茨の間の空間に生まれて暴れ回る力は夢茨や楝華に余波として流れていた。

 小さな声でなんらかの言葉を楝華は唱えている。

 攻撃的な力が楝華を傷つけて行く。

 バチバチと大きな静電気の音に目を開く夢茨は息を止めた。

 小さい切り傷など作りながらも集中を続けて呪を止めることなく続けていた。

「な……」

 声を上げて動こうとした夢茨に楝華は睨みつけている。まるで動くなと言うように。その眼を見て、夢茨が動きを止めた。

 夢茨が楝華の方へ動こうとした時に大きな見えない力が楝華の腕を襲っていたのだ。

「気を落ち着けなさい」

 天華も起き上がって来ていて、夢茨に声をかける。

「ただでさえ荒ぶる感情で武器を作ろう?……としてるのだから」

 天華は屋敷の縁側に立ち力の余波が屋敷ないに行かないように結界を張った。

 大きな野太刀と刀が宙に浮いている。

 黒い禍々しい気を纏わり付かせて落ちて庭に差さる2本の刀。

「眠ってたらのんびりできない気配が膨れ上がったのできちゃいました」

 天華は楝華に治癒の呪をかけながら声をかける。

「これは、……どうなるか予見できないな」

 傷が無くなったのを確認し、できた2本の刀を眺めていた。

「使える人居ないと思いますが……」

「使える奴いるか?ってほどの危ない刀だな」

 天華と楝華は2人で真剣な表情で野太刀を眼にしている。

 楝華は野太刀―憤怒―を手に取ろうとしたら黒い静電気が走る。

「夢茨、刀の怨嗟はお前が使え。憤怒は私が使う」

 憤怒を見つつ楝華は静電気の衝撃を逃がそうと手を振りながら宣言していた。

「憤怒は危ない刀だなって今、二人だっていってたじゃん。しかも今ビリって結構、強い衝撃だったはずだよ?!」

 わかってる?と言いたげな夢茨の声に楝華は手を握り開いてを繰り返していた。

「まぁ、かなり痛かった……かもしれない」と呟いている中で野太刀は一人でに夢茨の前に移動していた。

 まるで、憤怒自体がお前に決めたといいたげな雰囲気であった。

「宿敵に触られたくないってことか」と楝華は憤怒を眺めて心中で考えていた。

「封印的な鞘を作り、持ち歩きの際は危険が無いようにするしか方法ないかもしれないですね」

「鞘から抜き出したら、危険はあるだろうが、人はこういったものには飲み込まれやすいんだぞ」

 天華の言葉に楝華は腰に手を当てて言葉を返している。

「それに憤怒が暴走したら、特に怒りの感情は誰でも自分を見失う。下手したら夢茨の思いとは逆の結果になるはずだ」

「二人一組で動けるようにしたらいいと思いますよ。暴走しても一人が冷静ならば、正気は取り戻すことはできるはず」楝華に天華は考えを出していた。

「術と武で2人組で動いてもらうようにきめてしまえばいいのです。夢茨の願いと添います」

 天華は夢茨を見て楝華を見た。

「そして今後の組み合わせは夢茨、楝華で動けばいいのですよ。他の子は相性を見ながら組み合わせは考えていけば良いので」天華の言葉に夢茨は納得した。


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