呼び出し(2)
レミナの馬車に乗り込み、先に乗っていた管理人にも挨拶をする。レミナが指を振ると風が馬車に集まりあっという間に、空高く馬車は浮かんだ。下に庭や家がおもちゃのように小さく見える。
「さあ、風に乗って中央魔法局まで真っ直ぐよ!」
レミナがそう言うと、馬車はスピードを上げ目的地である中央魔法局がある方向に進んだ。馬車は道中がたつきもなく安定した状態で進んでいった。
十五分を過ぎたころには、中央魔法局の目の前に着いた。
「レミナ先生の馬車、速いですね……!」
「まあ私は風を使った魔法が得意なのもあるし、この馬車が風の魔法に特化して作られているのも関係あるわね」
「でも十五分には驚いたわ。今度からレミナに送ってもらおうかしら……」
「これでも相当魔力を使っているのよ。それに、サラだって本気で魔力を使えばこのくらい平気でしょう?」
「私は、ほらリュイが怖がるから……」
そんな話をしながら馬車を降りると、管理人はまだ中に座っていた。
「管理人さん、何かありましたか?」
「へ?えっと……少し酔ってしまって。あまり経験したことのないスピードだったもので。すみません」
「大丈夫?」
レミナは馬車の中に戻り、管理人に何か薬のようなものを渡していた。それを口に入れ、3分ほど経つと管理人は自分で歩いて馬車から降りた。
「お騒がせしました。もう大丈夫です」
「レミナ、何を飲ませたの?」
「子供用に用意していた酔い止めよ。もしかしたらリュイに必要かもと思って、鞄に入れていたの」
「効いて良かったわね」
私たちは、それぞれが受け取った封筒を手に持ち受付の列に並ぶ。リュイの分の受付は私だけでも対応できるので、リュイは列の外でベンチに座って待ってもらっている。レミナの受付が終わり、管理人の受付も終わる。私も封筒を受付の魔女に渡し、名前を伝えて鍵を受け取った。
「リュイ、受付終わったわよ」
「もう行きますか?」
「ええ、こういうのは早い方が良いのよ」
そう言って、私はリュイの手を取って出入り口に向かった。そこにはレミナも管理人も並んでいた。
レミナも管理人もドアに入っていく。鍵が三つあるということは、もしかしたらそれぞれ違う場所に案内されているのかもしれない。私たちの番になり、私は鍵穴に鍵を挿し込みゆっくりとドアを開けた。
手を繋いだリュイも一緒にドアの中に入る。ドアの先は広い室内で、20人ほどの魔女や魔法使いが椅子に座ってこちらを見ていた。その中央にある大きな椅子にはルカが座っているのが見えた。
「サラ、こっちよこっち!」
小さな声が聞こえ、私が振り返るとレミナと管理人がニコリと笑ってこちらを見ていた。
私たちは四人とも同じ部屋に呼び出されていた。二人の近くに駆け寄ると、ポンという音と共に椅子が四つ現れた。
「そちらの椅子に座ってください」
室内の魔女の誰かが指示をする。私たちはそれに従い、椅子に座り魔女と魔法使いの集団と顔を合わせた。
私たちが全員椅子に座ると、カツカツと足音を立てて一人の魔女が中央に立ち私たちに向かって話を始めた。
「魔女のサラとその弟子リュイ、魔女のレミナと図書館の管理人であるエマ……今日は呼び出しに応じて頂き感謝いたします」
そこで私は初めて管理人の名前を知った。それはレミナも同じだったようで、私に視線を送ってきた。
「今日あなたたちに聞きたいことがあり、こちらに集まって頂きました。先日の図書館であった出来事についてです」
そう魔女が言った瞬間、周りの魔女や魔法使いたちがざわつくのが分かった。その光景を不思議に思っていると、コホンと話していた魔女が咳払いをする。
「静かに! これからルカ様がいくつか質問をされます。あなたたちはその質問に対して嘘偽りなくお答えください」
そう言って魔女は私たちに頭を下げると、壁際のほうに向かった。目の前の大きな椅子に座っていたルカはいつもの様子で立ち上がった。