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図書館

 次の日、私はいつもより早めに起きた。窓の外はまだ朝日の光が差し込む前で、音もなく静かな空間が広がっている。私は着替えてから、静かにドアを開け部屋から出て薬を作る作業部屋に移動する。

 中央魔法局からの魔法薬の依頼書に再度目を通し、依頼書通りの種類・分量で魔法薬を作った。今回の依頼された量は前回のものより少なかったため、朝日が昇る頃にはる栗尾えることが出来た。

 作業部屋を出て、調理場に移動する。リュイが起きてくる前に、朝食の準備を始めた。たまにリュイが早く起きた時は、彼が朝食を作るのだがほとんどの朝は私が担当している。

 カチャカチャと音を出しながら朝食を作っていても、リュイは起きてこないので今日はよく眠れているのだろう。

 出来た朝食を机に並べていると、二階から物音が聞こえ始めリュイの部屋のドアがカチャリと開いた。トントンと音を立てながら、まだ眠そうな顔でリュイはゆっくりと階段を下りてくる。

「さら、おはようございます。今日は早いんですね」

「おはよう、リュイ。あなたはまだ眠そうね。まだ寝てても大丈夫よ?」

「いえ、もう充分寝ましたから」

 そう言ってリュイは大きなあくびをした。それを見て私はクスクスと笑った。


「僕、顔を洗ってきますね」

「いってらっしゃい。朝食は先に頂くわね」

「はい。いってきます」

 そう言ってリュイは手洗い場のほうへと向かい、しばらくすると眠気が取れたようなスッキリとした表情で部屋に戻ってきた。


「眠気は取れた?」

「はい。じゃあ、僕も朝食を頂きますね」

 リュイはモグモグと朝食を食べ進めていく。私は今日の予定の事を思い出し、食事中のリュイに話しかけた。

「リュイ、今日は私は街の図書館に行こうと思っているの。もしかしたら、私がまだ見ていない古い本に卵の事が載っているかもしれないと思って……それを探しに夕方くらいまで図書館にいるつもりなの」

「図書館ですか? 僕も用事があるんですよね。付いて行っても大丈夫ですか?」

「でも、今日は結構な時間図書館で過ごすけれど大丈夫?」

「僕も、今日読む本は時間がかかりそうなのでちょうどいいかなって思ってます」

「そう? それなら朝食が済んだら準備をして街に行きましょう」

「はい!」

 話が終わるとリュイは、残った朝食をもぐもぐと食べていた。私は自分の食器を片付けた。朝食の片づけがすべて終わった頃、リュイは借りていた数冊の本を持って二階から下りてくる。


「重くない? 私も何冊か手伝えるわよ?」

「えっ? 大丈夫です! それにサラだってそのかばんの中はたくさん入っているでしょう?」

「それを言われると言葉が出ないわね」

 話しながら私たちは街に向かって歩いて行く。

「そういえば、サラは街に行くのに魔法は使わないんですね」

「そうね。だって歩けば着くじゃない? そんなに遠いって訳でもないし……まあ、私は魔女の中でも珍しい考え方を持つ方なのかもしれないわね」

「誰かに言われたんですか?」

「中央魔法局にいたルカ様に昔ね……」

「ああ、あの人……」

 どうやらあの出来事で、リュイはルカの事が苦手になったらしい。初めての出会いがあのようなものだと第一印象が悪くなるのは仕方ないだろうなと私は思った。

 色々話しながら歩いていると、街の入り口が見えてきた。街の入り口の門を通り、私たちは活気のある商店を見ながら図書館に向けて歩く。

 途中、軽食を私とリュイの二人分買っていった。

「図書館の中って飲食は大丈夫なんですか?」

「中は禁止だったはずよ? でもあの図書館外に綺麗な庭があるの。記憶が正しければ、あの庭だったら飲食も大丈夫だったはずよ」


 話し終わるのと同時に、私たちは図書館の入り口の前に着いた。リュイが扉を開け、私たちは中に入る。

 図書館の独特な匂いが身体を包み込む。管理人と目が合い挨拶をした。

「管理人さん、こんにちは。あの、食事って外の庭だったら大丈夫でしたよね?」

「はい。大丈夫ですよ」

「そうですか、ありがとうございます」

 私は管理人に頭を下げ、そのまま本棚のある空間に進んだ。


「リュイ、私は色々なところを見てまわる予定なのだけれど一人で大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ、またお昼くらいに会いましょう」

 そう言って私たちは別れ、お互いの目的とする本がある棚へと向かった。

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