表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/46

二通の封筒

 手に取った二通の封筒は、どちらも中央魔法局からだった。封を開け、中身を確認する。一通目は魔法薬の依頼についてだった。締め切り日が近づいているのでなるべく早く届けるようにという内容だ。これについてはもう魔法薬は出来ているので、明日にでも届けようかと思っていたところだ。

 二通目の封を開け、中の文書に目を通した。

「え……?」

 私は思わず言葉が口から零れた。

 その文書には、中央魔法局に一度リュイを連れてくるようにと書かれていた。サラも同伴して構わないとも書かれている。呼び出しの詳細な内容は記されていなかった。しかし、タイミング的にリュイの属性や変化について聞かれるのだろう。

 私は、その二通の封筒を握りしめ自室に戻った。


 時間がお昼を過ぎたころ、昼食を終えたリュイに文書について話そうと声をかけた。

「リュイ、今時間は大丈夫?」

「はい。特に何も用事はないので、大丈夫ですよ!」

 リュイはワクワクしたような表情で、私の話を聞いている。

「リュイ、明日なのだけれど中央魔法局に一緒に行ってくれないかしら?」

「中央魔法局ですか?」

「ええ。今日文書が届いて……そこにリュイを一度連れてくるようにと書かれていたの」

「なにか用事でもあるんでしょうか?」

「私にも詳しいことは分からないわ。詳細は一切書いていなかったから」


「でも、呼び出しには応じないと駄目ですよね?」

「そうね。余程の理由がない限りは従わないといけないわ」

「なら、明日行きましょう! 中央魔法局に」

 リュイは手をぎゅっと握り、胸に当てそう言った。

「分かったわ。大丈夫、何かあっても私が守るわ」

「えっ! そんなに危険な場所なんですか?」

 あまりに驚くリュイの表情を見て、私はクスクスと笑った。

「もしかして、僕からかわれてますか?」

「そんなつもりじゃなかったのよ? 少し大事にし過ぎたわ」

 笑いながらそう言うと、リュイは頬を膨らませて拗ねたような表情をしていた。しばらくして、リュイの機嫌が直った頃私は部屋から持ってきた服を机の上に置いた。


「どうしたんですか? この服……」

「村の人たちが、子供に買ったけど着なかった新品の服をくれたの。サイズはリュイにぴったりのはずよ」

 私がそう言うと、リュイは服を数着広げて見ながら目をキラキラと輝かせていた。


「今着ている服も、汚れが目立ってきていたしちょうどいいかと思って……。それに明日は中央魔法局に行くでしょう?」

「そうですね。身なりは整えないと駄目ですね!」

「リュイはどの服を着ていきたい?」

「うーん。悩みますがこれが良いです」

 リュイは茶色系の服を手に取り、自分の身体に重ねた。


「あら、似合うじゃない!」

「そうですか? 今度、村の人たちにお礼を伝えたいな~」

「きっと、みんなも似合うって言うわ」

 リュイはニコニコしながら、他の服も身体に重ねる。その様子を見ながら、私は明日持っていく魔法薬の確認をしていた。すべての魔法薬を袋に入れ終わる頃、リュイは満足した様子で、服を持って二階へ上がっていった。


「リュイ、明日は朝からになるけど大丈夫?」

 リュイが部屋に入る前に声をかける。

「大丈夫です。今からしっかり準備します」

 リュイはこちらに振り返りそう言うと、部屋の中に入っていった。


 私はリュイが部屋に戻った後、魔法薬の入った袋と送られてきた文書を鞄に入れ自室の机の上に置いた。ヘランが持ってきた小さな木箱も、ついでに入れる。どうせルカに合うことになるのだ。彼にこれを見せて、ヘランの事を聞いてみようかとそう思った。

 夕食を済ませ、その日はリュイも私も早めに部屋に戻った。リュイには部屋に戻る前にちゃんと寝るようにと言いつけてある。明日は気力も体力もいつもより使うことになるだろう。

 そう言った意味で、中央魔法局は子供には向かないなと私は思った。

 明かりを消し、ベッドに入る。少し憂鬱な気持ちを抱えながら、私は眠りに落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ