リュイの体調
私は階段を降り、レミナにリュイが目覚めたことを知らせる手紙を書いた。それを魔法陣が書かれた机の上に置く。手紙は吸い込まれていき、その数分後に庭に強い風が吹いた。
私は玄関のドアを開け、目の前に立っていたレミナを家に入れた。
「リュイ、目覚めたって?」
「ええ。時間はかかったけれど、レミナの言うとおりだったわ」
「私の知識が役に立ってよかった」
「レミナにはいつも感謝しているのよ?」
「そうなの? ありがとう」
話しながら二階へと続く階段を上る。レミナはコンコンとドアを叩いた。
「どうぞ~」
その声を聴いて、レミナは勢いよくドアを開けてリュイに向かって走り出した。ベッドの近くでピタリと止まる。
「レミナ先生!」
「リュイ、身体は平気?」
「はい。まだ少し感覚が慣れないですけど、体調は大丈夫です」
そう言って、リュイはニコニコと笑って閉じていた目をゆっくりと開けレミナに視線を合わせた。透き通った金色がキラキラと輝く。
「リュイ、瞳の色が変わったのね」
「サラにも言われました。綺麗な金色になったって」
レミナは持ってきていた鞄から、手鏡を出しリュイの顔をそれに映した。リュイは自分の映った顔を見て驚いたような表情をしていた。
「うわぁ。本当に色が変わっていますね。これ、よくあるんですか?」
「属性の中でも、火、水、光の魔力を持つ人は見られることがあるわね。でも、光の属性はその魔力を持つ人が少ないから、私も久しぶりに見たわ」
「あっ! だからヘランさんの瞳は赤色だったんですか?」
「そうね」
レミナとリュイの会話を聞きながら、私はリュイのおでこに汗が浮き出ていることに気付いた。
「リュイ? 汗が出ているけれど暑いの?」
リュイは自分のおでこに手をあて、手に付いた自身の汗を眺めた。その様子を見ていたレミナが、すぐにリュイの首に手をあてた。
「リュイ、あなた少し熱があるわよ」
「そうなんですか? 暑いとは思わないんですけれど……」
「まだ、横になっていなさい。熱が上がったら大変だわ」
「分かりました」
そう言うとリュイは、ゆっくりとベッドの中で横になった。
「サラ、熱冷ましの薬はある?」
「在庫はあったはずよ。持ってくるわ」
私は指示された魔法薬を取りに、一階の薬が入った棚を目指す。在庫から必要な量を手に持ち、リュイの部屋に戻った。
「レミナ、これで大丈夫かしら?」
「ありがとう。大丈夫よ」
そう言って熱冷まし用の液体をレミナはハンカチに浸み込ませ、リュイの額の上に置いた。この薬は一時間ほどで、体温を平熱まで下げる薬だ。レミナの適切な開所を見ながら、リュイの様子も確認した。
「リュイは目覚めたけど、身体への負担が大きかったのかもしれないわね」
「だから熱が出ていたの?」
「そうね。でもこの薬が効けば本当の意味で元気になるはずよ」
「良かったわ。ほかに何か準備していた方が良いものはある?」
「そうね……。温かい飲み物とかリュイの好きな食べ物とかじゃない? 眠っている間食事を摂っていないでしょう?」
「そうね。用意するわ」
そう言って私は一階に下りて、食事の用意をした。温かい飲み物でリュイも好きなスープをコップに入れ二階へ上ってベッドの近くの机にそれを置いた。
リュイは熱冷ましの薬が効いたのか、汗は出ていなかった。リュイはコップを手に取り、ゆっくりとスープを飲んでいた。
「美味しいです! サラありがとうございます」
「別にいいのよ……早く元気になってね」
「そうよ、リュイ。心配したんだからね」
そう言って、レミナはリュイの髪の毛をクシャクシャと撫でた。開けていた窓から、少し冷たい風が部屋の中に入ってくる。外を見ると、空は夜のはじまりが近付いているような色をしていた。
夜も更ける頃、レミナは急いで街に帰っていった。明日も彼女は仕事らしい。私は手を振りながら見送り、自分の部屋で眠りについた。




