リュイとの対話
ヘランが訪ねてきて、どのくらい時間が経っただろうか。私はある事を思い出し彼に尋ねる。
「そういえば、あの木箱に入っていた紙が朝起きたら燃えカスになっていたわ。あれ、どういう仕組みなの?」
「ああ、あれはサラが読んだ後自然になくなるように魔法をかけておいたんだ。燃えていたのか」
「火は出ていなかったはずよ」
「まあ、俺の属性が火だからな。少なからず影響が出たんだろう」
彼はそう言いながら、二敗目の飲み物に口を付けた。
「そういえば、ここに来る前に中央魔法局に寄ってきたんだが門前払いされたな。あそこはなんであんなに厳しくなったんだ?」
「知らないわ。あの人の命令なんじゃない?」
「お前らは相変わらずなんだな……。ルカは元気なのか?」
「昔と変わらずといったところね」
少しの沈黙の後、彼は気まずそうに言葉を口にした。
「なあ、サラ。さっき言っていた子に会ってみたいんだが……会わせてもらえないか?」
「そうね。あなたから敵意は感じないし……少し待ってて。呼んでくるわ」
私はそう言って、椅子から立ち上がり二階へと向かった。リュイの部屋のドアをコンコンと叩く。中からすぐに返事が聞こえた。
「リュイ、あなたに会いたいと言っている人がいるわ。相手に敵意はないし、会ってみない?」
「はい、今行きます」
部屋のドアが開き、リュイは中から出てきた。一緒に階段を降り、椅子に座って待つヘランの元へ向かう。
「ヘラン、この子がリュイよ。さっき話した通り、後天的に魔力を持った人間の子供よ」
「やあ、リュイ。昨日ぶりだな」
「あっ、昨日の! ヘランさんでしたか? こんにちは」
リュイは不安そうな表情から、少し安心したような表情に変わり彼に挨拶をした。そのままリュイは私の席の横の椅子に座り、じっとヘランを見ていた。
「リュイは小さいな」
「まだ子供よ。見てわかるでしょう?」
「いや、そういうことじゃなくて……魔力の話だ」
リュイは不思議そうに話を聞きながら、何度も私のほうを確認するように見ていた。
「でも、ちゃんと基礎の魔法は使えたわよ?」
「基礎は使えるだろう。でも元から魔力を持っている子供と比べたら薄いというか小さいというか……」
「仕方ないんじゃない?リュイは生まれた時は魔力のない普通の人間だったんだから」
そう言っても彼は、何か考えている様子だった。
「僕、魔力が小さいんですか?」
「個体差じゃないかしら。色々な人間がいるように、魔女や魔法使いにも色々な種類があるのよ」
少し不安そうなリュイを心配しながらそう答えた。
「ヘラン、レミナを知っているでしょう? 彼女もリュイに魔力がある事を知っているわ。それに、属性の反応も出ているわよ?」
私はレミナが持っていた道具の説明をしながら、彼に経緯を伝えた。
「属性か。なんだったんだ?」
「火と光に反応が出たらしいわよ」
「火だったら俺と同じだな! 光……光か。そんなに人数いなかったよな?」
「私の属性よりは数が多いわよ?」
「サラの属性は珍しいからな! 光だったら後々大変じゃないのか?」
「そうなの?」
私たちが話していると、リュイが恐る恐る言葉を口にした。
「あの、サラとヘランさんはどういう関係なんですか?」
リュイの質問に私たちは顔を見合わせる。少しの間部屋に響いていた音が消える。
「昔馴染み……えーっと、同じ施設にいた時期があるわ」
「そうだな! 友達と言ってもいいくらいだ」
その言葉に私は固まりながら彼を見る。
「あなた、私の友達だったの? 私は同僚くらいの感覚だったわ」
「サラはたまに胸に刺さるような言葉を口にするよな!」
そう言って彼は大きく口を開けて笑っていた。リュイはそんな彼を見て、少し困ったように私に視線を向けた。私も少し困惑しながら笑顔をリュイに向けた。
部屋の中にはまた音が戻ったような、そんな雰囲気だった。