TSURU
掲載日:2021/10/10
『つる』
知る人もない 遠くの町で
言葉を忘れ
耳を塞いで
吹き荒れる記憶に
ただ胸を押さえながら
することといえば
いちにちにひとつ
つるを折ろう
贖罪のつるを
丁寧に折ろう
夕べには 羽の先に
火を灯し
灰になるまで
見守ろう
月が出たなら
一杯の湯を飲んで
薄い布団に横になろう
背を伝って
冷たく暗いあの海が
また流れ込むことだろう
私は何かを隠すかに
乾いた咳をするだろう
何も欲しくない
何も祈らない
静かに今日が去り
また静かに明日が現れて
昨日が降り積もる日々を
生きてゆく




