#1-07 転入生//第7話
「みなみん、此処は音楽室。第一から第六まであるの。」
「こっちは空き教室だよー。」
「窓から見える大きな建物は校内図書館。……って、此処は普通科も使えるから知ってるわよね。」
知っている。なんなら私は読書部だったから放課後をよく此処で過ごしていた。
図書館は数少ない両学科共通の施設だったから、稀に白いブレザーの生徒を見ることがあった。
「この辺は奥までずっと防音練習室なの。A-1からC-5まで、全部で15あるのよ。」
「この教室は空き教室だね。」
「遠いから今日は見に行かないけど、学園の敷地内には3つの屋内ライブ会場と、5つの野外ライブ会場もあるのよ!」
「因みに今横にあるのは、空き教室だからね。」
こんな感じで私は学食へ向かいつつ、学園の敷地内を紹介してもらっている。
私にはずっと気になっていた事が1つある。
…………さっきから空き教室、多くない?
何で?ってくらいどこに行っても空き教室がある気が……。
普通科の何倍も教室があるけど、使われている数は普通科より少し多いくらいなんじゃないかな。
「なおくん、さっきから空き教室しか紹介してないじゃない……?」
「うん?――――確かに。」
苦笑いでくるみんが聞くと、直輝ははっとしたように目を見開いた。
――――自覚、なかったの?
「芸能科では、有償で空き教室を借りることが出来るの。レッスンに使ったり、校内でライブするときの控室とか楽屋代わりに使ったりするのよ。」
「結構高いから、おれ達は借りてないけどね。」
くるみんがすかさず説明してくれる。優しい。
便利そうだけど、学園が生徒からそんなことで金取っていいのかな?
「あっ、ごめんみなみん。大事なこと忘れてたわ。」
はっとしたように立ち止まったくるみんに直輝は「なになにー?」と不思議そうに首を傾げる。
そんな直輝に「TPとGP。」とくるみんが囁くと、直輝はそれの存在に今気が付いたかのように「ああ~!!」と声をあげる。
「みなみん、すごく大事なこと言い忘れてたわ。TPとGPについて、説明するね。」
顔の前で両手を合わせて言うくるみんに、私は軽く首を横に振る。
――――――待って、私『謝らなくていいよ』のつもりだったけど、『説明はいらないよ』だと思われたら駄目じゃん。
などと行動に移してすぐに後悔したが、くるみんは全く気にせず「ありがとう。」と笑った。優しい。
「芸能科って、お仕事も沢山するじゃない?だから社会に出た時の練習と活動意欲向上とかいろいろ考えて、学園内通貨の制度があるの。それがTP。」
「“トレードポイント”の略で、電子マネーみたいな感じだよ!」
そう言って直輝が自分のスマホ画面を見せてくる。
“3年A組 気陽 直輝”と右上に表示された画面のど真ん中には、“GP 105”“TP 250”と表示されている。
電子マネーみたいなものを、そんなに気軽に人に見せていいのかな?
「GPは“グレードポイント”の略で、その人がどれだけ実績を持っているかの大まかな目安になるの。進級にも必要なのよ。」
「TPはお金みたいなものだから使ったら減るけど、GPはゲームのランクとかレベルみたいなものだから、減らないよ!」
後から聞いた話では、
→2年に進級 GP 100
→3年に進級 GP 500
→卒業 GP 2000
がそれぞれ必要らしい。
つまり私は来年までにGPを500集めないと進級できないことになる。
――――集まる気がしない。留年してしまうことになりそうだ。
「TPは電子マネーみたいなものだけど、現金に換金することはできないの。なおくんはすぐ使っちゃうから250しか持ってないけど、普通はもっとあるわよ。」
くるみんは苦笑いしながらこう付け足した。
「――――――因みに、なおくんみたいに簡単に人に見せたり教えたりしちゃダメだからね?」
まあ、そうだよね。
星をー!!星をくださいー!!
…………ちょっとリアル忙しいので次の投稿遅れるかもです。すみません……。