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#1-01 転入生//第1話

すみません(汗)

ミスで一話飛ばしてました……。

どうりで可笑しいとおもったら。

 ――――鬱だ――――


 今の私の気持ちを表すのに、これ程適した言葉はない。

 今の私の気分は鬱。物凄く鬱だ。


 え?お前は誰だって?

 それが分からないと、始まらないね。

 私は山田 未無未(やまだ みなみ)私立(しりつ)来々星学園(きらぼしがくえん)に通う、ごく普通の高校2年生。


 高校2年生と言っても、まだ気持ちは1年生だ。

 だって私はまだ、新学期が始まってから一度も学園に行っていないのだから。

 別にサボりとか、不登校とかではないよ?

 今は4月。始業式から既に一週間が経過している。


 実は私だけ、新学期の始まりが今日なのだ。

 新1年生よりも少し遅いのは、私が特別な制度の転入生だから。


 みんなは知らないと思うから説明しよう。

 私が通う来々星学園には、2つの学科がある。

 ひとつは、他より少しだけお洒落で部活動が活発過ぎるだけの、“普通科”。

 もうひとつは――――豪華絢爛できらびやかな、全くの別世界にも思える場所。

 将来の在り方に確たる自信と目標を持った才能溢れる芸能界の卵達が、日々自分の能力を琢いている学び舎、“芸能科”だ。


 ……私はどっちかって?

 当然、普通科だ。

 ――と言いたいところだが。

 どんな神様の気まぐれか悪戯か、私は今年から――――今日から、芸能科の生徒なのだ。


 全てにおいてがほぼ平均(平均よりもちょっと下とも言う)な私が、ごく一部の才能豊かな天才と同じ場所で過ごす。

 ありえない。そんなことがあって良い物だろうか。


 正直言って、辛い。

 やっていける気がしない。


 何であの時頷いちゃったんだろう?

 あの時の自分を責めたい。

 まあ、責めた所であの時の私はこういうだろう。


『仕方がないでしょう?カメラいっぱいあったし、何よりあの咲奈(さな)さんの頼みで頷く以外何ができる?』


 と。

 一理ある。

 雲の上の憧れの人が急に話しかけてきて、お願いしてきたら断れる?

 私は無理。頷くことしかできない。


 ――――♪♪♪………………


 無機質なデジタル音が紡ぐ、聴いているだけで元気になれそうな長調。

 …………そういえばアラームをセットしたんだっけ。

 枕元に置いていたスマホを手に取り、アラームを止める。

 画面を見るとホーム画面に表示されている数字は06:30。

 そろそろ起きないと遅刻してしまう。


 ゆっくりと体を起こし、名残惜しいがベッドから出る。

 パジャマを脱いで、白いシャツを取ってはっとする。

 あ、違う違う。

 慣れって怖いなあ。と思いつつ薄桃色のカラーシャツを手に取る。

 唯一両学科共通の赤色がかった黒いチェックのミニスカートを履く。

 並んでハンガーに掛けられている紺色のブレザーと、純白のブレザー。

 同じデザインなのに、色が違うだけで随分と印象が違う。

 紺色を着たい気持ちをぐっと抑えて白い方を着る。


 うちの学園の制服は芸能科があるせいかお洒落で、ブレザーの形がかなり普通と違う。

 男子はあまり変わらないが、女子の襟がセーラー服の襟みたいな形をしている。


 白いシャツに紺のブレザーなのが、普通科。

 男子は薄水色、女子は薄桃色のシャツに白いブレザーなのが、芸能科だ。

 普通科は白、芸能科は黒のラインが裾に入っている。


 やはりさすが芸能科と言うべきか。

 何かとお洒落だ。

 普通科もかなりお洒落だが、芸能科はもっと細かい所にも気を使われている。


 薄桃色のカラーシャツと白いブレザーの襟や袖には銀色の糸で星や月の刺繍が施されており、肌触りも良い。


 白い膝下のソックスを履き、ブレザーの胸ポケットに赤い星型のピンバッジを付ける。

 最後に赤みがかった黒いチェックのネクタイを締めて、芸能科2年生完成である。


 これで着ているのがキラキラの芸能人だったら、完璧だったんだけど。

 残念なことに着ているのは一般人の私だ。


 姿見に映る可愛い制服と平凡な顔の差にうんざりする。


「未無未~。いつまで寝てるのー?今日学校でしょ?」


 1階のリビングで私を呼ぶお母さんの声が聞こえてくる。

 起きてます。


 仕方がないので階段を下りる。

 リビングに行くとお母さんが朝食を先に食べていた。


「おはよう、未無未。遅いから先食べてるわよ。」


 洗面所に行って顔と手を洗い、リビングに戻り自分の席に座る。

 市販のロールパンとレタスのサラダ、コーンスープ。

 いつも通りの朝ごはん。


 お父さんはいないということは、仕事は休みでまだ寝ているのだろう。

 いいな。と思ってしまう。

 私は嫌々学校に行くのに、お父さんは休みなのか。


「ほら、早く食べなさい。遅刻するわよ。」


 何処か呆れたようにお母さんに言われ、サラダにごまドレッシングをかけて食べる。


「まさか未無未が芸能科なんてね……。テレビでよく見るその可愛い制服を自分の娘が着る日がくるとは思ってもみなかったわ。」


 私もです。思う訳がない。


「浮かない顔ね。大好きな咲菜ちゃんと同じじゃない。それに咲菜ちゃん、先生になったんでしょ?咲奈ちゃんに授業してもらえるんじゃない?よかったわね。」


 よくないです。咲奈さんは大好きだけど、全然よくない。

 …………なんて。

 思ってても言えない。

 親とか、他人とか関係なく私は会話するのが苦手。

 所謂コミュ障ってやつだ。


 嫌われたりするのが怖くて、自分がズレてたりするんじゃないかと不安で、ハリボテみたいににこにこ肯定ばかりしていたら、いつの間にかこんな性格になっていた。


 私だって好きでこんな性格しているんじゃない。

 なってしまったものは仕方ない。

 会話が苦手で、頷いてばかり。

 ちょっとした反論すらも、私にはできっこない。


「…………大丈夫よ。そんなに不安がらないで。

 未無未は“未知で無限の未無未”なんだから。自分で思ってるよりも向いてるかもよ?」


 何を馬鹿なこと言っているんだろう?

 そんなわけない。

 お母さんやお父さんは“未知で無限の未無未”と言うけれど、私は“未だ何も無い未無未”だと思っている。

 未だと言っても、永遠にないと思う。


 早々に食べ終え、もう一度洗面所に向かう。

 歯を磨き、ブラシで肩に少しかかるくらいの髪を整える。


 寝癖が残ってないか確認、大丈夫。


 去年と同じ通学鞄を持ち、去年と違って少し黒みの強い茶色、木枯色のローファーを履く。


「行ってらっしゃい。頑張って来てね。」


 見送ってくれるお母さんに動作だけで応えて家を出る。

 いつもの駅から電車にのり、いつもの駅で降りる。

 去年と同じ道を通っていると、私が着ている物と色違いの、紺色のブレザーを着た女子3人組がいた。


 楽しそうにお喋りしている3人に気付かれないように、そっと広い道の反対側に移動する。

 気付かれないようにそっと抜かして、すぐ目の前のあの角を曲がれば……。

 少し遠回りになるが、学園に行ける。


 そう思いそろそろと、気配を消して早めに進む。

 何だか忍者みたいだが、そんな事を言ったら忍者に殺されそうだ。

 名誉毀損で怒られそう。


 けらけらと笑い声を上げながら、賑やかに話していた3人のうち1人と、ふと目があった。

 よく目立つ明るい楊梅色に染め上げた長髪の、少し黒い肌色をした女子。

 制服をかなり着崩して、お洒落なアクセサリーをじゃらじゃらとつけた、ギャルって感じの女の子。


 去年同じクラスだった赤羽(せきば)さんだ。

 赤羽さんは長い睫毛に縁取られたくりっとした瞳を細くし、私を睨んだ。


 思わずビクリと肩を竦めてしまう。

 赤羽さんは隣を歩いていた友達に「どうしたの?」と聞かれ、「……何でも。」と答えてまたお喋りを再開した。


 話しかけられなくてよかった…………。

 ほっと胸を撫で下ろし、いそいそと角を曲がる。


 私はずっとクラスでいないようなものだった。

 確かに存在しているのに認識されない、空気のような存在。

 ずっと独りぼっちだったけど、平和。

 私は空気という地位に満足していた。


 でも、“あの制度”の後から。

 良くも悪くも注目を集めるようになってしまった。

 そのほとんどが赤羽さんのような、冷たい視線。


『何でこんな子が?』


 そんなこと、こっちが聞きたいよ。


☆☆☆☆☆を★★★★★に!!!お願いします。

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