#1-18 期待の新星//第8話
お昼休み。
机に伏せてしまいたい気持ちを抑えて、手早く教科書類を片付ける。
『お昼休みは、一緒に王魔先輩(?)のライブを見に行く。』
そう約束したからには、2人を昨日のように待たせる訳にはいかない。
丁度私の片付けが終わると、くるみんがよしよしと頭を撫でてくる。何故?
「みなみん、昨日はあんなに大変そうだったのに……。子供の成長を見守るママって、こんな気持ちなのかしら?」
色々ツッコミどころが多いよくるみん。
私達は同い年だし、体格だけだとくるみんの方が小さい。
くるみんはまだ若いよ、高校生だよ、しかもアイドルだよ、お母さん気分になるのはまだ早いよー。
「ホントだ、みなみんも慣れてきたのかな?適応速いねいいねいいね!」
「なおくんは、速すぎるけどね。」
ノリノリで親指を立てる直輝だけど、私の適応力はそんな化け物じみたものじゃない。
「学食行こう!」と言う直輝の言葉で、私はお弁当の入った白い保冷バックを持って立ち上がる。
「あら?今日はくるみんもお弁当なのね。お揃い!」
くるみんが自分のお弁当包みを軽く持ち上げ、にこりと微笑む。
うん、お揃いだね。という意味を込めて私も同じ高さまで保冷バックを持ち上げる。
すると、2人が「あっ。」と声を上げた。
2人の視線の先を見ると、私も同じようにあ、と口を開けた。
「それ、咲菜さんのキーホルダーじゃない!スカウトの時もつけてたわよね。」
きらりと瞳を輝かせてくるみんは私の顔を凝視する。
外して来るの、忘れてたぁ……。
キーホルダーは外して家においてこようと思っていたのに、すっかり忘れていた。
朝の如月先輩(が言っていた姫さん)の言葉を借りると、私は仮面を置いてくる代わりにおいてこようと思っていたキーホルダーを持って来てしまったようだ。
「……え、どうしてみなみん恥ずかしがってるの?」
くるみんはびっくりしたように丸い目で私を見つめてくる。
何でばれた。顔が赤くなったりしてたかな?
確かに恥ずかしいよ。
こんなオタクっぽく言うとアイドルの聖地みたいな所で、アイドルグッズ持ち歩くの恥ずかしいでしょ!?
何でもないよ。そう伝えようと首を横に振る私だが、くるみんはまだ不思議そうだ。
「お腹空いたよー、早く学食いこー?」
私に助け舟を出してくれたのか、それともただお腹が空いたのかは分からないが、直輝が不満げな声を漏らす。
くるみんも「そうね、行きましょう!」とさっきの事は忘れたように廊下に足を向けた。
2人の後を追いながら、私は内心で肩を落とす。
やっぱり、細かい説明とか言いたい事は、ちゃんと言わないと伝わらない。
分かっている。分ってはいるけれど――――声に出したって、ちゃんと伝えられる自信がない。
「今日はお昼食べ終わったら王魔先輩達のライブ見に行きましょうね!」
私に合わせてくれたのか歩調を緩めて隣に並んでくれる2人。
2人からしたら当たり前なのであろうその動作が私にとっては嬉しくて、私もそうやって歩調を合わせる事が、隣を並んで歩くことが、当たり前に思える時がくるといいなと思った。
1階に降りると全学年が通るからだろう、一気に騒がしくなる。
横並びの方がお互いの声がよく聞こえて、会話が楽しい。
ガヤのように何の意味の持たぬ音として私の耳に入ってくる沢山の声の中で、声が大きいのか近いのか唯一2人の声以外で文章として耳に届く音がある。
「ほらほらおーねぇ、昼休み終わっちゃう!」
「とーか、昼休みはまだ始まったばっかだよ?前見て走らないと……とーか!?」
女の子の驚いたような叫び声を聞いて、私達3人はほぼ同時に振り返る。
私のすぐ目の前に、私よりも少し背丈の小さな女の子の背中。
え……?と声を漏らす暇も、こちらに迫ってくる背中を支えるために手を前にだす暇もなく、どんっと思いっきりぶつかった。
「「みなみん!?」」
重みを伴った衝撃に耐えきれず体がぐらりと傾く。
あーあ、お弁当、ぐしゃぐしゃになっちゃう。
ぶつかった子、怪我しないかな?
「――――――っ!!」
硬い床に肩がぶつかり、私は声にならない声をあげた。
昨日と今日、沢山の人が見てくれてて嬉しかったです。
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