#1-14 期待の新星//第4話
お久しぶりです。生きてます。
今日は余裕を持って早起きし、お昼のお弁当を作った。
可愛さと言えばプラスチックのピックぐらいしかない女子力ゼロのお弁当。
ご飯にはごま塩を振って、ミニトマトとブロッコリー、唐揚げも勿論揚げる。
ちょっと彩が足りない気がして、ハムとスライスチーズを花形にくるくると巻いてみた。
……可愛いんじゃない?
花形のハムチーズ、強いな。
シンプルな白いお弁当箱に蓋をして、咲菜さんのSDキーホルダーがついた白い保冷バックに入れる。
その他の身支度も終えて家を出て、昨日よりも軽い足取りで駅を目指す。
過去1番軽い足取りで登校している自分に驚きつつも、当然か。と思う自分もいる。
だって、楽しかった。
昨日1日は、思い返せばにやけてしまう程楽しかった。
私が芸能科でやっていけるなんて勿論思っていないし、授業はついて行くのが大変で疲れた。
でもそれ以上に、直輝とくるみんと、3人で過ごす時間が楽しかった。
……友達と過ごす学校生活って、こんなに楽しいものなのか。
普通科にも友達がいたら、もう少し色のある学校生活を送れたのかな?
……何て考えるのは辞めよう。
それより今は、「今日も直輝とくるみんのお陰で楽しくなるだろうなー。」と考えていたい。
私、ちょっと思考がポジティブになったんじゃない?
最寄り駅からいつもより1本早い電車に乗る。
いつもHRギリギリに登校していたけど、早く登校して2人と話したい。
そう思って、いつもより早く家を出た。
電車が違うから、勿論乗っている人もいつもと違う。
いつも疲れた顔をした紺のスーツのサラリーマンも、何処かの制服を着た2人の女子高生もいない。
運よく私の定位置、1番端の席は空いていて、そのすぐ近くに吊革を握って立っている男の人がいる。
……座らないのかな?
その人は私と同じく、来々星学園芸能科の制服を着ていた。
他にもちらほらと空いている席があるし――と自分に言い訳しながら座り、ちらりと男子生徒のネクタイの色を盗み見る。
黒いチェックのネクタイは青みがかっているから、3年生。先輩だ。
左手で吊革を掴み、右手でスマホを操作している先輩は、とても格好いい容姿をしていた。
ジッとスマホ画面を見つめる鋭い柿色の瞳と、深緑色の髪。
右耳についている4分音符型のピアスは、丸みを帯びているのに可愛さよりも格好良さの方が勝っている。
通学鞄と一緒に背負っている筒状のものは何だろう?
じっと先輩を見ていると、柿色の瞳が僅かに動いて目が合う。
ドキリと心臓が跳ねた。
慌てて目を逸らすと、チっと小さな舌打ち音が聞こえた。
――――怖い。
青ざめた(かもしれない)顔で背中を丸めて座っていると、停車時の揺れに耐えきれずぐらりと体が傾く。
隣に人はいないけど、これはダサい。
どうにか持ちこたえようとしていると、ぐっと肩を掴まれた。
そのまま引き戻され、体の傾きは失われる。
私の肩を掴んだのは、スマホ画面を見ていたはずの先輩だった。
「……気をつけろよ。」
意外と優しい先輩にペコペコと頭を下げると、先輩はまた舌打ちをする。
「目の前でふらふらされると目障りだろーが。じっとしてろ。」
キッと睨むように言うと、先輩は乱暴に手を離してまたスマホ画面に目を落とした。
先輩を見続けるとまた怒られると思い、なんとなく開いたドアと、人の動きを見る。
ぞろぞろと人が降りていき、その後は人が乗ってくる。
この駅からこの電車に乗る人が少ないのかこの車両に乗る人が少ないのか、乗って来たのは1人だけだった。
何気なく見ていただけなのに、その人から目が離せなくなる。
その人はイケメンを通り過ぎて美貌の持ち主というか、ご尊顔というか……。
とにかく整った顔立ちをしていた。
2か所だけ大きく跳ねたアホ毛の目立つ亜麻色のさらさらとした髪。
優しそう垂れたの若葉色の瞳。
ほわほわとした雰囲気を纏った王子様のような容姿の彼に、高級感のある真っ白なブレザーが良く似合っている。
真っ白なブレザー――そう、彼も来々星学園芸能科の生徒だ。
青みがかったネクタイ、この人も先輩。
って、思わずジッと見てしまったけど、目を逸らそう。
気づかれたらさっきみたいに怒られるかもしれない。
そーっと目を逸らそうとすると、亜麻色の髪の先輩とバッチリと目が合ってしまった。
時、既に遅し。
先輩はにこりと優しそうな笑みを浮かべると、真っ直ぐにこちらへ歩いてきた。
ああ、どうしよう……話しかけられるかな?
私、同級生とすらまともに話せないのに、先輩とか無理だよ?
先輩は私のすぐ前で足を止めると――――ずっとスマホを見ているもう1人の先輩に向き直った。
私じゃなかった。
あれ?私って、自意識過剰?そんなことないと思ってる(思いたい)けどなあ……。
「おはようございます、秋季。」
優しい笑顔で先輩が挨拶をする。
ずっとスマホを見ている方の先輩は、“秋季”って言うのかな?
秋季先輩(?)はちらりと柿色の瞳を動かすと、小さく呟いた。
「……るせーよ。」
睨むように見ているが、亜麻色髪の先輩は全く気にしている様子がない。
メンタル強。
「おはようございます、ですよ。ところで、そろそろ生徒会に書類を出してくれませんか?無断で活動されると困るんですよ。」
「…………だから何だってんだよ、生徒会が困ろうが、俺にはかんけーねぇ。」
秋季先輩(?)の素っ気ない態度に、亜麻色髪の先輩は困ったように笑う。
「わかりましたよ。とにかく、書類を出すことも覚えてくださいね?今まで何故軽音部が廃止にならずに済んでいるのかわかっています?僕もそろそろ大変なんですが。」
「別に、お前のお陰って訳じゃねーだろうが。」
「どうでしょうね?」
亜麻色髪の先輩は溜息交じりに苦笑すると、爪先の向きを変え、真っ直ぐに――私の方を向いた。
綺麗な若葉色の瞳と、バッチリと目が合う。
亜麻色髪の先輩は私の顔を見て、にっこりと優しく微笑んだ。
「――――お隣よろしいでしょうか、山田未無未さん。」
――――何で、私の名前知ってるの。
投稿遅れてすみませんでした!!
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