#1-13 期待の新星//第3話
家に帰ってきた私は、すぐにシャワーを浴びて疲れ切った体を湯船に沈めた。
それだけで結構疲れは取れて、今は自室のベットに寝転んでいる。
結局昼休みに2人と連絡先を交換するのを忘れてたけど、帰りにくるみんと校内チャットのアドレスを交換して、くるみんから間接的に直輝とも繋がれた。
お風呂から上がると新しくくるみんが作ってくれた3人のグループにメッセージが来ていた。
☆直輝☆:『やっほう☆みなみん、疲れてたみたいだけど大丈夫?疲れた時は寝たいだろうけど、ちゃんとご飯食べてからじゃないと夜中にお腹空くよー?』
くるみ:『お風呂も忘れずにね~?ダンスレッスンもあったし、汗かいてると思うから。』
2人とも、優しい。
メッセージを送ってくれた事はすごく嬉しい。
……でも、私は今すごく悩んでいる。
――――なんて返信すればいいの!?
普段全く喋らない私は、こういう時の対応が分からない。
どうすればいいんだろう?
チャット画面を開いたまま、1文字も打つことなくぐるぐると悩んでいる。
このチャットはご丁寧開くと既読を表すニコニコマークがつく。
つまり、私がもうメッセージを読んでいるのはばれている。
どうしよう。既読無視だと思われる……!
『早く返信しなきゃ!』と焦る程、何も打てなくなる。
取り敢えず、『心配してくれてありがとう』?
『今お風呂から上がってきたよ』かな。
それとも『今からご飯食べます』の方がいい?
分からない。絵文字とかいるのかな。
結局、悩みに悩んだ結果できた文章がこれだ。
『心配してくれてありがとう。今お風呂から上がってきたところです。ご飯も今から食べます。』
……なんか、硬いな。
んー……難しい。取り敢えず敬語を無くそう。
タメで大丈夫だよね?
『心配してくれてありがとう。今お風呂から上がってきたところ。ご飯も今から食べるよ。』
これでいいかな?
果たして正解なのかは分からないが、私の中ではこれが1番良いと感じたので良しとする。
本の登場人物とかも、こんな感じだしね。(読書部だったから……)
不安は拭いきれていないけど、送信ボタンを押す。
……あああーー送信しちゃったよ。
すると、すぐにニコニコマークが1つつき、立て続けにもう1つつく。
ああああああーーーー既読ついたぁ……もう後戻りは出来ない。
失礼な事書いてたりしないかな?大丈夫だよね?
じたばたとバタ足で泳ぐように足を動かしていると、くるみんから返信が来た。
くるみ:『ならよかった!今日は本当に疲れたと思うけど、みなみん、よく頑張ってたと思うわ。明日も頑張ってね!』
☆直輝☆:『そーだね!それより、みなみん普通に話せてるねー。チャットは流石に普通?』
……直輝、そんな事ないよ。
普通に話せるのなら返信にこんなに時間がかかる事はないと思う。
2人はとても速い。
私もせめてチャットくらい、ちゃんと速く返せるようにならないと。
それでも一般的な女子高生にしては遅いのだろうけど、頭をフル回転させて急いで返信を打ち込む。
未無未:『明日も頑張るよ。普通……よりもかなり遅い返信になっちゃうけど、ごめんね?』
急ぐことだけを考えていたから、確認せずに送信しちゃった!?
大丈夫かな?何処か変な所はない?
多分ないよね?大丈夫だよね?
☆直輝☆:『遅いくらい、気にしなくていいよー!忙しかったりするかもだし。』
くるみ:『みなみんって、結構周りに気を使うタイプっぽいし、何て打とうか考えてるとか?』
私は『当たりだよ!くるみん凄い!』と返信する。
短文だから速くできた。これは絶対何処もおかしなとこないでしょ。
見事にくるみんに当てられて、かなりびっくりしている。
私、そんなに分かり易い性格してるかな?
くるみ:『やっぱりそうよね!わたし達には気を使わなくていいからね?』
☆直輝☆:『そうそう!くるみんの悪口言っても、別に怒らないから。』
くるみ:『わたし!?なおくんにだって言っていいのよ?』
未無未:『言わないよw』
ぽんぽんと直接話している時と同じようにテンポよくお笑いのように会話する2人の文面を見て、クスリと笑ってしまう。
そして、短文とはいえそのテンポについていけた自分に驚きつつある。
「w」とか使えちゃったよ?
くるみ:『わたしももうご飯!ばいばいー』
くるみんにそれぞれバイバーイと返し、会話は終了する。
……まさか私がチャットで友達と会話する日が来るとは……。嬉しすぎる。
折角だし校内SNSも覗いてみよう。
くるみんと直輝もなんか書き込みしていたりするかな?
何も書き込まれていない初期状態の私のアカウントのページをスルーして、まずはくるみんの名前を検索する。
すぐに見つかったくるみんのアカウントは、結構使用しているようで投稿数が多い。
名前も初期状態だと“関 繰来”のはずだが、“くるみ(RePea's)”に変更されている。
取り敢えずフォローをして、過去の書き込みを見てみる。
『なおくんとゲームセンターで遊んだ!』
『RePea'sのみんなとカラオケに行ったの。』
等、クラスメイトらしき人との書き込みもちらほらあるが、殆どが直輝と火鳥副会長さん――“RePea's”関連だ。
かなり遡っていると、昨年度の投稿になってしまった。
私はとある1つの投稿を見て、スクロールする手をピタリと止める。
3月21日、“ミラクルスター発見スカウト”の放送日。
『今年の“ミラクルスター発見スカウト”も面白かった!スカウトされた子、なんとなく気が合いそうな気がする〜。来年から同じ学年だし、仲良くなりたいなー。』
そんな書き込みを見て、私の目から勝手に涙が零れた。
音も立てず静かに流れる涙は、生まれて初めてかもしれない嬉し涙。
――――私も、くるみんと仲良く――ううん、もっと仲良くなりたいよ。
心からそう思ったけど、コメントする勇気はないから小さな呟きに留めておく。
少し(いや、かなり)心があったかくなった。
それは私にとってはお風呂で温まった体よりも温かく感じた。
――――――その後、直輝のアカウントでも同じような書き込みを見つけて更に涙を流す私だった。
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