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カウントブランク  作者: 小平リオ
第1章 【終わりの始まり】
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第1話 激変

   カチカチカチとできていく……………………


 音をたててできていく。完成されていくパズルのように、()()だったものが埋まっていく。全てのピースが埋まっていく。あるはずのないものができていく。


「クソッなんでこんな事になるんだよ…」


   ぽろぽろぽろと落ちていく……………………


 音をたてて落ちていく。ひっくり返したパズルのように、埋まっていたものが()()になっていく。あらゆるピースが欠けていく。あったはずのものが落ちていく。


◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□


「早く起きなよ!」


 まだ、はっきりとしない頭が現実へと引き戻される。だがまだ目を開かない。一体何事だろうか、何か声が聞こえた気もする。勘違いだろう、勘違いにちがいない。そうやって自分を納得させ、今一度深い眠りの中へと意識が吸い込まれ…


「早く起きるんだよー!!!」


 今度は目が開く、どうやら勘違いではなかったようだ。目の前には、緑色のモジャモジャ頭にまん丸な顔。馬眼に緑色の瞳、なんとも頼りなそうな風体な男。


「相変わらずモジャモジャでぷくぷくで背が小さいな。第8王子のジグミルさん」


「開口一番で悪口か!朝の弱いお前を起こしてやった礼もないのか?黒髪で平々凡々な村人と変わらない幸薄そうな顔で、わっちよりすこーーーしだけ背が高いだけの第7王子のソーマさんよ!!」


 朝のまだ働いてない脳で余計なことを口走ってしまった。

確かに礼を言うのは忘れていた。王子としてある程度の教養を受けているため言葉遣いには気をつけなければならな、ん?何か俺めっちゃ悪口言われてない??一応王子の位は俺の方が上のはずなのに悪口言い過ぎじゃないか?そう考えているとだんだんと怒りが膨らんできたが、ここは第7王子らしく務めようじゃないか。


「起こしてくれてありがとよ。そして今日は何かあったか?」


「おいおい、今日はクラウンズギルド討伐会議だよー?」


 そうだった。今日は討伐会議だ。だから休みであるはずの今日にこのジグミルに起こされたのか…まぁ位が低い俺たちにとっては、ただ話を聞くだけの会になりそうなものだが。


「あぁ、そうか。分かった準備するから待っててくれ」


 まずカーテンを開けて太陽の光を浴びる。そして寝癖を整え、青の書を使い水を生成し顔を洗う。最後に正装へと着替え鏡の前に立つ。幸の薄そうな顔が写り、全くアイツの言う通りじゃないかと肩を落としつつ、そんな現実をつきつけた扉の前に立つ張本人の方へと向き直した。


「この魔法の書ってヤツは本当に便利だよなぁ」


「何を今さら、四代元素の魔力をだれにでも扱えるようにした魔法の書。便利に決まってるんだよー」


 魔法の書…赤、青、緑、黄と分かれる魔法の書。何時ぞやかの大賢者さんが扱っていた魔法の媒体として使われていたマジックボードを参考に作られた簡易版マジックボード。

通称魔法の書。詳しいところは分からないが、これがないと今の世界は成り立たないだろう。


「さて、早速いくかー」


 冴えない男二人組が肩を並んで長い廊下を歩きだす。ふと左を見ると大きいガラスから見える、綺麗に透き通った色の空に、どこまでも続いているかのような生き生きとしている草原。そんな美しい光景に見惚れていると後ろから声がかかる。

「ポンコツ二人組じゃねーか。お前らなんてお呼びじゃーねーぞ」

「シュウ…」


 第3王子のシュウ、真っ赤な髪に虎眼から覗かせる真っ赤な瞳。睨んだだけで燃やせそうなその瞳に俺が写る。

 問題はそんな見た目から想像できないほどの口の悪さ。

正義の鑑のような見た目をしてるのに俺らに対する扱いは雑なんてもんじゃない。特に俺には.…


「ソーマ…てめぇはどんな面して会議に参加しやがる?お前みたいな自分の力もまともに扱えないような失敗作が??」


「…」


 すこしの沈黙が3人を包む。そんな静寂を破ったのが俺の隣に縮こまる第8王子。


「ま、まぁ会議には全王子が呼ばれているし、行かなきゃいけないんだよー」


「ふん」


 鼻を鳴らして足早に去っていく。前方にある扉を開け会議室へと入っていく。俺たちも少し遅れて会議室に到着し、扉を開ける。どうやら俺たちが最後だったようだ。朝の雑談のせいで遅れしまったではないか、後でジグミルには説教をしてやる。


「これで全員揃いました。」


 と王の補佐である大臣がいう。


「これからクラウンズギルド討伐会議を始める」

 

 そう王が口火を切ると、会議が始まった。そんな中、周りを観察すると第1から第8までの全ての王子が集まってるのが分かる。こう全員が集まると自分が如何にオーラがないかがよく分かる。やはり第1王子のメリカーと第2王子のアシロは積極的に王に質問をしている。この2人は俺たちと違ってエリート中のエリート。頭もよかったら腕もたつ。まさに王の器そのものだ。

 だがやはり我が王、グラディウス王は別格だ。深淵のような黒い短髪に猛々しいその風体は歳をとった今でも色褪せない。まさに王。さすが世界最強の男である。


「メリカーとアシロの2人を連れ、今夜クラウンズギルドを討伐しにいく」


 話もろくに聞いていなかったがそのような決断になったらしい。まぁそうなって当然だ。それがベストの軍だろう。それ以外がついて行ったら足手まといになってしまう。誰もがそう考える。アイツを除いて…


「お言葉ですが王!第3王子である。このシュウ・グラディウスを連れていかない理由は何でしょう!」


「お前では力が足りんのだシュウ」


 そう王が反論した。短い言葉だったが、それで十分だった。それ言う資格は他の誰でもない王しかいない。世界最強の男から発せられた音が、この静寂に支配された空間をさらに重いものに変えていく。


「シュウさん、ここは私たちに任せてくれませんか?王家の位である第1から第8までの番号。これは私たちの総合的な順位です。確かに第2なんて私には恐れ多い位ではありますが、今はこの順で判断するしかありません。時間は刻々と迫っているのです。私もあなたの分までこの戦いに重んじるつもりです。どうかご理解を」


 そんな重い空気をそのよく回る口でかき消すのが第2王子であるアシロ。頭はそれだけ切れるという事か。その頭脳派な彼とシュウが仲が良い訳もなく、


「ふざけやがって、よく喋りやがる野郎だな!なら今ここで俺がお前を殺して俺が第2王子になってやろうか!!!」


 そう言いながら背中に背負われている大剣に手が伸びる。


「おい!王の御前だぞ!!言葉を慎めシュウ。それとお前もだあまり挑発するなアシロ」


 一触即発な会議室を言葉一つで切り捨てた黄金の髪を靡かせる第1王子のメリカー。その言葉だけで2人の動きは止まる。そうさせる圧力が彼にはある。まるで蚊帳の外である俺たちまでも背筋を伸ばさずにはいられない。


「という事で、このメンバーで今夜討伐作戦を実行したいと思います。他の王子は各自の部屋にお戻りになってください。」


 そのように大臣が告げるとゾロゾロと俺たちは部屋を後にする。最後まで部屋に残ろうしたシュウだが抵抗むなしく、部屋を出された。


「クソッ!!!」


 会議室の中にまで聞こえるような大きい声で文句を言うシュウ。そんな彼をわき目に部屋へと戻る俺とジグミル。ふと、右のガラスを見ると、夕日が差しているのが分かる。帰りの廊下では行きのような元気はない。それもそうだろう、まだ反論していたシュウはともかく他の王子達はどんな顔しいればいいのだ。誰にも頼られず、見送ることしかできない。1番尊敬している王に選ばれなかった悔しさは誰もが感じているものだろう。

 それぞれの気持ちを抱えて帰路につく。この討伐作戦の成功を信じて。。。。


「はぁ、今日はいろいろあって疲れた」


 そんな誰にも届かない愚痴を自室で呟く。ソーマ自身が何か行ったわけではないが、やはり全ての王子と王の前に立つというのは気苦労するものだ。

 唐突に眠気が襲ってくる、暗い暗い暗い闇の底へと意識が沈んでいく。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 黒い空。そこには一筋の光もなく、黒く暗く、どこまでも広がっているような闇。あるいはそこには何もなく先も見えないような闇。

 赤い草原。そこには一切の生もなく、赤く暗く、どこもかしこも死の匂いが纏わりつく。あるいはそれこそが生なのかもしれないような深紅。

 そこに佇む3人の男。その1人がこと切れる。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


ズギッーーーーー


「うっ、、、、」


 突然の頭痛により深い眠りから覚醒する。何か嫌な汗を全身にかいている。悪夢を見ていた気がする。だからといってソレを思い出そうなんて事はしない、わざわざ嫌な思いを再度味わうなんてゴメンだ。鼓動が早くなる、全身に血がまわっていくのを感じる。ダメだ…気持ちを落ち着けよう。

 ふとカーテンを開けて窓の外を見ると、少し青みがかかった空に今日の訪れを感じる。嫌な目覚めをしたせいか体の疲れはとれていない。すぐにまた眠気が襲ってくる。何やら外が騒がしい、王が帰ってきたのだろうか。しかしそんな事考えているうちにまた身体の力が抜けベッドに沈んでいく、沈んでいく。


◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□


「これから緊急会議を始める」


 そのように第1王子のメリカーが言葉を放った。こうやってまた全ての王子が集められている。大方、昨夜のクラウンズギルド討伐作戦の報告だろう。しかし、全ての王子が集められているのは確かだが討伐作戦参加者の1人である第2王子のアシロが見えない。そしてグラディウス王の姿もだ。

 余程の戦いであったのだろう、メリカーは片目を包帯で覆っている。王もそれなりの負傷を負い医務室にでも運ばれているのだろうか…


「君たちも存じている通り、我々はクラウンズギルド討伐作戦を実行していた」


 少し間をあけて、、、


「結論から言う、作戦は失敗した」


 ざわついた。聞き間違いか?そんな訳ない誰もが敗北なんて考えていなかった。そんな言葉を聞くだけで1つの考えが頭をよぎる、王は?グラディウスは?私の父は?大丈夫なのか、嫌な妄想が浮かぶ。そんな訳はない。身体の血の気がひき汗が溢れ出す。そんな瞬間…


「おい!!言葉を選べよ!メリカー!!王はどこだ?」


 そんな誰もが感じている疑問をシュウがメリカーにぶつける。誰もが息を呑み嫌な静寂があたりをつつむ。早く答えがほしい。はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく


 ドンドン


 背後の扉が叩かれる。この最悪の雰囲気の中でその答えが近づいていた。扉が開かれる。そこに姿を表したのは、深淵のような黒い髪、猛々しい風体に王者の風格を纏ったグラディウス王…ではなく、碧い長髪を靡かせる、その端正な顔立ちと白衣の上からでも分かる引き締まった身体を真っ赤な血で汚した第2王子のアシロだった。


「王は死んだ」



 


 


 



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