歩くのが大変ならペガサスに乗ればいいじゃない
時刻は分からないが辺りが暗くて夜という事だけが分かった。
渋谷からみて新宿は北側にある。
昔見た漫画で『北極星を頼りに歩いたら北に着く』と言うカッコいい知識を持っていた俺は一番光る星を目印に歩き続けた。
道という道はなく瓦礫や地盤が歪んでまともに歩ける場所などほぼない。
「歩くのだけでも一苦労ですわ。ドレスが埃まみれになってしまいましたわ」
お嬢様感丸出しでエイブラハムがドレスに付いてる埃を払いながら言う。
「歩くのも良い運動になると思ったのですが、やっぱり面倒ですの」
そう言いながらエイブラハムは手をかざした。
「ーーー召喚スキル【天馬の馬車】」
かざした手から魔法陣が出現し、そこから3頭のペガサスが引く純白の綺麗な馬車が出てきた。
「さ、これで行きましょう」
お嬢様(男)はニコッと笑って言った。
「わーーい☆羽根つきのお馬さんだー!☆」
シャルルが子供の様に喜ぶ。
「凄いなぁ。こういう事も伝説の勇者なら出来るんだな」
俺は感心しながらペガサスの馬車を見た。
「けっ!こんなん出せるんだったら早く出しやがれってんだ」
ユウは気に食わない感じでエイブラハムに言った。
「あら、別に貴方だけ徒歩でもかまいませんのよ?」
「っるっせー!乗るわ!」
あ、そこは素直に乗るんだ。
俺達一行は馬車に乗り込んだ。
流石勇者のスキルなだけあって、そこから目的地までは一瞬だった。
新宿の目印とも言える、実物大ジゴラの巨大な頭が瓦礫の山にあった。
「……生存者を探そう」
渋谷同様無残な光景となった街を見渡し、ラヴィニアが僅かな希望を持って言った。
だが……生存者は見つからなかった。
「生きてる人いないないだよー☆」
シャルルよ、シリアスな時に"☆"はやめてくれ。
「ここもダメか…。他の場所もーー」
ヴゥゥーーン
空に黒いブラックホールの様なものが出現した。
【ゲート】だ。
そこから魔物達が"あの時"と同じ様に大量に出てきた。
俺の脳裏に焼き付いた、あの一方的虐殺が身体を硬ばらせる……。
「ネ、ネーナブルガの魔物達……!!」
恐怖から自分の声が震えてるのが分かる。
「大丈夫だ、じゅーご。もう恐れる事はない。私達が、いる!」
ラヴィニアが背中に背負っていた2本の剣を抜き力強く言った。
「あらあら、これはまた大量ですこと」
「ハッ!雑魚がわんさか来やがったぜ!」
「よーーし☆がんばっちゃうぞーーー!」
エイブラハム、ユウ、シャルルの3人の勇者達が同じく戦闘モードになっていた。
そうだ……。
前みたくやられてたまるか!伝説の勇者達の力で返り討ちにしてやる。
「応戦するっ!!」
ラヴィニアの掛け声のもと、俺達の戦いが始まる。




