たまには趣向を変えて
ーーー以前は活気ある街であった。
市場や商店、飯屋など様々な店が並び、街は人で賑わっていた。
なのに今はどうであろう。
店は開いている所の方が珍しく、街のメインストリートとされる場所には貧困にあえぐ人々が行く当てもなく座り込んでいた。
生きているのか死んでいるのか分からない、そんな街の人々の目が、僕は耐えられなかった。
この城下町を通るのがいつも辛かった。
「だだだ団長っ……!お怪我は大丈夫ですか?」
「心配には及ばんさ、リュウギ」
僕達【鉄の団】は異世界での賊討伐に失敗しネーナブルガへ帰還した。その報告を王にお伝えしなくてはならない。この城下町を通るのも王宮へ向かう為には仕方がないのだ。
「じ、自分、いつになってもここ通るの慣れないです…。昔は騎士団の帰還に城上町全体での歓迎があったのに、今ではその…みんなの目が痛いです……」
「異世界への扉は王都の外にあるからな。向こうの世界を行き来するにはここを通らねばならん。慣れろとは言わない。胸を張れ。僕達は命を賭してこの国を守っているのだから」
まるで自分にも言い聞かせているかのようだ。
「は、はい!」
【帝国ネーナブルガ】
15年前、先代の王と第1王子がクーデターにより死去した。
それにより第2王子であった現王のネーナニアブリュンガルマ6世がこの国を統治する事になった。
だがそれは統治などではない。
ただの恐怖政治である。
権力や武力で民を黙らせ、反抗する勢力は見世物の様に処刑していった。
今のこの国に、人権も自由というものも存在しない。
この国で生きるという事は、生きる事を辞めるという事なのだ。
僕達騎士団も特殊な【魔痕】という術を体内に刻まれている。もし謀反を起こしたり、直接でなくとも反国の発言があれば即座に魔痕が反応し身体が内部から破裂する仕組みになっている。風船が膨張に耐えきれなくなって割れる様に。
故に騎士団に所属する騎士達は、王に従う他ないのだ。
「到着だ」
僕達騎士団は城下町を抜け、王のいる城に到着した。
この城は決して煌びやかなものではない。凶王がいるからとおどろおどろしい城というわけでもない。外はいたって普通で、内に住んでいる王が狂っているのだ。
「王直属、鉄の団、ただ今異世界より帰投した。王へ謁見したい」
「開門!」
門番は門を開けた。
「王への謁見は僕が行う。お前達は休め」
「はっ!!」
後ろにいた騎士達は敬礼をし各々散っていった。
さて、王のいる王室へ向かおう。
……恐らくいつものことなら、王への謁見など叶わないであろうが。
王室へ続く廊下を歩く。
広く真っ直ぐな廊下だ。
王室の扉が見えてきた。
扉の前には"あの男"が立っていたーーー




