顧問
「ねえねえ、そういえば江戸城に行った時、何かの石碑をみんなで蹴り倒したわよね?」
「そうそう。みんなで蹴り倒せば怖くないわよ。」
「実は徳川家の先祖たちが祀られている石碑だったりして?」
「構わない! これも少年少女剣客隊を盛り上げるためだ! 第十六代将軍の僕が言うのだから、きっとご先祖さまも許してくれるのだ! ワッハッハー!」
「家々! おまえが笑うな! 殺す!」
「調子に乗っていると、大砲をぶち込むわよ!」
「お腹空いた。」
「静かに! みんな席について!」
子供たちが騒いでいると桜先生が教室にやって来た。
「そして、さようなら。」
「桜先生、さようなら。」
子供たちは学校から去って行く。
「少年少女剣客隊! どんな難事件でも解決します! お小遣い求む!」
ちいたちは、放課後に少年少女剣客隊の活動をすることにした。
「どう? いい看板でしょ?」
「住所も学校の教室だし、信頼はバッチリ。」
「お腹が空いても、給食室で盗み食いができます。」
「まさに徳川第十六代将軍に相応しい仕事だ。」
「これも貧しい家々が生きていくためにお金を稼ぐためよ。」
「そうそう、孤児の家々を助けなくっちゃ。」
「同じ寺子屋のクラスメイトだもんの。」
「ありがとう。みんな。僕はみんなのことを誤解していたよ。ありがとう。本当にありがとう。うるうる。」
本当は何か楽しいことがしたいだけの、ちいたちであった。
「あなたたち!」
そこに桜先生が現れた。
「ゲッ!? 桜先生!?」
「バレた!?」
「怒られる!?」
「家々を差し出しますから、お許しください!」
「裏切ったな!? お主たち!?」
桜先生にバレて、我が身が可愛い、ちいたちは家々の身柄を差し出す。
「教室の使用許可申請書を出しなさい!」
「あ、そういうこと。」
「少年少女剣客隊? あなたたち部活動をするの?」
「はい。これも貧乏な家々のためです。」
「そう。友達思いなのね。」
「それ程でも。」
「でもね。部活動をするなら顧問が必要よ。」
「顧問?」
「監督する先生のことね。」
「私が少年少女剣客隊の顧問になってあげましょう。これで少年少女剣客隊は正式な部活動として認められるわ。」
「わ~い! やったー!」
「桜先生ありがとう!」
こうして少年少女剣客隊は正式に発足した。
「すいません。ここは少年少女剣客隊でしょうか?」
そこに一人の男が現れる。
「はい、そうです。」
「ようこそ。お客様が少年少女剣客隊のお客様第一号です。」
「事件ですか? それとも食い逃げですか?」
「なんでも僕たちが解決するでござる。」
「食べたい。」
「え?」
「おまえたちの霊力を食べたい!」
「キャアアア!?」
現れた男は、全身を邪霊に憑りつかれていた。禍々しい存在であった。
「じゃ、じゃ、邪霊!?」
「初めて見ました! ワンダフル!」
「蛍ちゃんを呼んでこなくっちゃ。」
「僕なんか食べても不味いぞ!? どうせなら女子を食った方が美味しいぞ!?」
「霊力を寄こせ! 俺は甦ったばかりで霊力が足らないのだ! ガオー!」
逃げ惑う子供たち。迫りくる邪霊。
「フッフッフ。子供たちは顧問の私が守る!」
「たかが女に何ができる?」
桜先生が邪霊に立ち塞がる。
「いでよ! 妖怪! 幽霊! 魑魅魍魎!」
「なんだと!? おまえ!? 人間ではないな!?」
「そう私は、幽霊! でも人間の姿をしている霊体だ! そして、得意技は、妖の召喚だ!」
「おまえは!? 平将武!? 確かに倒したはず!? なぜおまえがここにいる!?」
呼び出したのは、桜の亭主の蛍であった。蛍は、蛍の集合体の妖怪である。
「知るか。安らかに眠っていたら、最近、禍々しい妖気に誘われて目が覚めたのだ。」
「光れ! 蛍光灯! 夏の世の光!」
「ギャアアア!?」
蛍は必殺の一撃で、邪霊、平将武を切り裂いた。
「すごい! 蛍さん!」
「楓のお父さんは光ってます!」
「蛍ちゃん、お腹空いた。」
「みんなが無事で良かった。」
「さすが私の旦那様!」
なぜ邪霊が現れたのか、謎だけが残った。
「家々。家々。」
その夜。解き放たれた徳川家康の邪霊が家々の枕元に来た。
「zzz。」
しかし、熟睡している家々は目覚めなかった。
つづく。