出撃! 少年少女剣客隊!
「ねえねえ、提灯のお化けさんが出るんだって。」
「電気や蒸気機関車のある時代なのにね。」
「なんか時代設定が江戸から、明治維新にズレてない?」
「面白ければ良いのだ。カッカッカ!」
「家々! おまえがまとめるな! 殺すぞ!」
「大砲ぶっ放しますよ!」
「お腹空いた!」
「いいではないか!? 世が世なら僕は徳川第十六代将軍であるぞ!」
「静かにしなさい! はい! みんな! 席について!」
いつもの寺子屋の風景。ちい、ペリー、楓、家々が街で噂のお化けの話をしている。そこに桜先生が現れる。
「みなさん、最近、街にお化けが出るそうです。寄り道しないで帰って下さいね。」
「はい。さようなら。」
家々たちは寺子屋を後にする。
「ねえねえ、私たちで提灯お化けを退治しない?」
「面白そうですね。やりましょう。私は、江戸で名をあげるわ!」
「少女剣客隊の誕生だね。」
「僕も行くから、少年少女剣客隊でござる。」
「なんで少年が先に来るのよ? 少女少年剣客隊でしょ。」
「そうです。女の方が多いんですから。」
「男尊女卑。女性軽視だ。」
「ゴロが良いから、少年少女剣客隊でいいのだ。」
「良くない!」
何気ない日常の会話。子供たちの興味本位から、剣客稼業が始まった。
「どこにいるのかしら? 提灯のお化け。」
「夜の街って、悪そうな大人しかいないのね。」
「お昼にやっていないおいしそうなお店がいっぱい! 寄って行こうよ!」
「きれいな女子もたくさんいるの。きっと僕は大奥を再興して見せる!」
「家々、殺す。」
「エロガキ、大砲に詰めて東京湾に沈めるぞ!」
「大奥は諦めて、遊郭で遊んで行きなよ。」
「それもいいな! カッカッカ!」
夜の街を満喫した家々たちだったが、提灯のお化けには出会えなかった。疲れとお腹が空いてので、子供たちは家に帰ることにした。
「会いたい時に会えないものね。」
「もう、クタクタで疲れた。」
「楓、お腹が空いたよ。」
「もう帰ろう。家族が心配しているでござる。」
「あの、夜道も危ないので、良かったら提灯を使いませんか?」
その時、家々たちに声をかけてくる提灯がいた。
「いいんですか? すいません。気を使ってもらって。」
「で、で、でた!?」
「提灯のお化け!?」
「ギャアアアー!?」
家々たちは提灯のお化けに驚いて気絶してしまった。
「ケッケッケ! 大成功! なんだか最近は昔みたいに霊力が高まってきたな。美味しそうな子供たちだ。いただきますー!」
ズドーン! その時だった。提灯のお化けを一発の銃弾が貫いた。
「ズドーン? ギャアアア!?」
撃たれた提灯のお化けの姿は消滅していった。
「若!? 大丈夫ですか!?」
「直ぐに荷台に乗せて、子供たちをお家に送るのだ!」
「おお!」
提灯のお化けにビビって動けなかった黒子たち。しかし提灯のお化けが消えると何事もなかった様に現れて、気絶している子供たちをそれぞれの荷台に積んで、自宅まで送り届けようとする。
「家々様! お気を確かに! 傷口は浅いですぞ!」
「うう!? 提灯のお化けに襲われる!?」
家々は気絶してもうなされていた。この時、黒子には黒子頭と黒子A、B、Cという黒子の存在が最大4人以上ということが認識された。
「すいません。娘さんの宅配です。」
「は~い。」
「すいません。ハンコください。」
「ポン。」
「毎度あり。」
黒子の宅配便はちい、ペリー、楓を、無事に自宅に送り届けるのだった。
「ちい! どこで遊んできたんだ!」
「あ!? お兄ちゃんだ!?」
「あ!? お兄ちゃんじゃない!?」
ちいは兄のライの元に無事に送り届けられた。
「それにしても、提灯のお化けを撃った銃弾はどこから飛んできたのだろう?」
黒子頭は、家々を布団に寝かせると、謎の狙撃手のことを考えるのであった。
「また、つまらない者を撃ってしまった。」
教会の高い鐘台にペリーの父親のザビエルがいた。鉄砲の銃口から少しの煙を風に流しながら。
「すいません! 黒子の宅配便です! 娘さんをお届けしました!」
「はい! 直ぐに行きます!」
ザビエルは、教会の鐘台から降りていくのであった。
つづく。