第20話
朝の涼しい風が、爽やかな小鳥のさえずりを運んでくる。
そんな部屋の中には3人の男女が……2匹と1人が……もふもふ2つと男がいっこ。
それぞれ言葉を交わすことなく座っています。
ドアに一番近いところにいるのは、好青年風の眼鏡の男。
その正面に座るのは1人の少女。
その頭からは、もふもふの狐耳が。
お尻からはふさふさの狐尻尾がそれぞれ飛び出しています。
そしてその少女の膝の上に頭を乗せてスヤスヤ眠るのは、これまたもふもふな漆黒の猫耳の少女。
その背中では尻尾が気持ち良さそうにゆらゆら。
「しゅぴー」
呑気な寝息を立てる猫耳少女に、
「ほわ〜、かわいいですねぇ〜」
紺の頬も緩みます。
ーかわいいなぁ
神主さんの頬も緩みます。
ほんわかほのぼの、幸せな空気が辺りを包んでいるようです。
ーどんな険悪な家庭にも!一家に一匹!猫耳少女があなたの可愛を明るく笑顔に!かわいいは正義!さあ、なあなたも一緒に!もっふもふ〜もっふもふ〜(BGM)
「ちょっと、神主さん?」
「ん?」
紺の声に、脳内テレビショッピングを中断して顔を上げると、怪訝そうな顔で紺がこちらをみていた。
「どうしちゃったんですか?そんなにだらしない顔して…?」
「ん?いつもの顔だけど?」
「…そうでしたね」
「いや、それはそれでなんか馬鹿にされた気がするんだが!?」
そんな神主さんには御構い無しで、紺は猫耳少女の頭をなでなで。
「…そういう紺の顔も、ゆるんでるぞ?」
「なっ!?そ、そんなことないですよ!」
「え〜?今にも取れて落ちちゃいそうなんだが?」
「むーっ!だって…しょうがないじゃないですか!この子がこんなにかわいいから…!」
紺は、拗ねたように下を向くと、猫耳少女のほっぺたをつんtー
ぺしっ
「…」
信じられないという様子で、はたかれた手を見つめる
紺。
「…今、何が起きたんでしょうか?」
「…さあ?」
「まあ、今のはきっと気のせいでしょう!だって私はご主人様ですからね…」
ぺしっ
無慈悲の一撃。
「うう…. 、私、嫌われてるんですかね?」
神主さんを見上げる紺の目が次第にうるうるしてきて
…
「いや、そんなことないと思うぞ、ほら、やっぱ寝ている獣には手を出さない方がいいっていうか…紺も寝ている時邪魔されたら嫌だろ?」
「むう…たしかに(ちらっ)」
「だろー?(ぎくっ)」
紺は視線を猫耳少女へと戻すと、
「でも、やっぱり納得できないですー!」
そういうと、再び指を伸ばしてー
ぺしっ
「…」
つん、ぺしっ
つん、ぺしっ
「むぅー!」
つん、ぺしっ、つん、ぺしっつんぺしつんぺしぺしべしべしべしべしっ!
「はあ…」
自分から興味がされたことに安心した神主さんがため息を一つ。
その間にもつんぺし攻防戦は続いていて、
つんぺしつんぺしつべしべしべしべしっ!
「痛い痛い、いたいってば!」
ー…楽しそうだなぁ…ん?
少し離れたところからぽけーっと二人を見ていた神主さんの目が光る。
ーこれは…チャンス!
気配を殺して紺の背後へと回り込む神主さん。
ー神主-1へ、現在の状況を報告せよ
ー神主-隊長へ、こちら、目標もふもふまでの距離、2メートル。
ー気づかれないよう行動せよ。
ー了解。現在、対象もふもふまでの距離、1メートル。
ー気をぬくな。ここからが勝負だ。
ー距離、50センチ。40…30…20…
ーいいぞ、そのまま…
ー20…10…ゼ…
神主さんの指が紺の尻尾に触れようとしたその瞬間。
くるっ!
紺が急旋回。
尻尾が背中に隠れ、代わりに正面にやってきたのは。
ぷにっ
紺の腕に抱かれた、猫耳少女のほっぺたでした。
「ん?」
「んにゃ?」
一瞬の静寂。
「にゃ〜っ!!」
どむっ!
腹にめり込む拳。
「ぐふぅっ!?」
たまらず、変な声とともに床を転がる神主さん。
「猫パンチだにゃ☆…私のお昼寝を邪魔する奴は誰であっても許さないのにゃ!」
フンス!
紺の腕からぴょんと立ち上がった少女は、腰に手を当て、胸をそらして得意げ。
「まだ朝だよ…」
「神主さん!大丈夫ですか?…あーっ!神主さんだけぷにぷにしてずるいです〜!」
「いや、それどころじゃないから…」
「むふー!」
ー触らぬ猫に祟りなし、なんてね…あ、狐もか…
薄れゆく意識の中で、そう思った神主さんでした。
おはこんばんにちは(言ってみたかった)、さーにゃです。読んでいただきありがとうございます!前話からしばらく空いてしまい、ごめんなさい。次はもっと早く更新できるよう頑張ります!




