閑話 はろうぃーん
障子の開け放たれた部屋に、昼下がりの暖かい風が吹き込んで、畳の上に大の字で寝ている男の柔らかな前髪をふわりと揺らす。
今日は10月31日。
朝や夜はそろそろ布団が恋しくなる時期だけど、昼はちょうどいい季節。
え、なんにかって?
そりゃ…
「あ〜!神主さん!またサボって昼寝なんかして!」
そう、昼寝に。
突如のどかな静寂を破って部屋に入ってきたのは、巫女装束の少女。
その手には相棒の竹箒。
「ん、紺か…」
目をこすりながら体を起こす神主さんに、
「神主さん!」
紺はずいッと顔を寄せると、
「は、はい?…」
「今日はなんの日か知ってますか?」
「え?今日?…お昼寝デー?」
「違いますよ!もう…」
紺は呆れたようにため息をつきながら体を離すと、
「ほら、どこか変わったとこ、ありませんか?」
「変わったとこって言ってもなあ…」
顎に手を当て、紺を見つめる神主さん。と、
「ああっ!」
「気づきました!?」
「耳と尻尾がない!なんで!?もふもふは!?もふもふもふ…」
「神主さん!」
紺は神主さんの顔の前に人差し指を伸ばすと、
「今日は、はろうぃーん、ですよ!!」
「ハロウィン?ああ、あれか。パリピが馬鹿騒ぎするアレだろ?」
「偏見がすごいですね…」
「ん?ハロウィンこそもふもふの出番じゃないか!…なんで!?」
「それはですね〜」
コンは胸の前で腕を組むと、ドヤ顔で、
「今日は、人間の仮装をして見ました!!」
ふんす!!
「…」
「…」
「え〜、なんか思ってたのと違う…」
畳の上にうよ〜んとなる神主さん。
「わわ、ちょっとまってくださいよ〜!せっかく仮装したんだから感想ぐらいくださいよ〜!ほら、見てください!」
「…」
うにょ〜んとしたまま首だけ振り返る神主さん。
「ほらほら、いっつもショートだからわざわざロングのにしたんですよ!?」
「…かわいいんじゃないか?」
そう小さく言うと再びうにょ〜んとなる神主さん。
「ほんとですか!?えへへ、そう言ってもらえると嬉し…あれ?神主さん?ひょっとして照れてますか?」
「照れてないよ!ぼくはもふもふじゃないとダメなの!」
「とか言って本当は可愛いとか思ってくれたんじゃないですか?」
「あ、おいこら!箒でつつくんじゃない!」
「可愛いって言ってくれたらやめてあげますよ〜」
「わかった!かわいい!可愛いからやめ!ははははっ!」
「もっとまじめに〜」
☆
「トリックオアトリート!お菓子くれなきゃもふもh…」
「はいどうぞ」
「…ありがとう」
お菓子を受け取る神主さんの顔はちょっと悲しそう。
「とりっくおあとり〜と!」
「はいどうぞ」
「ありがとうございます!」
紺の手の中にあったのは、
『ホワイトサ◯ダー きつねうどん味』
「…美味しそうですね…」
袋を破ると、こんはおそるおそるといった感じで口に運んで
「…うん」
「ぼくにもちょっとちょうだい」
「どうぞ」
「…うん」
今度は2人同時に食べて、
「「……うん、微妙!」」
こんばんは、さーにゃです。お久しぶりです。少し時間が取れたので、ハロウィンということで特別版を書かせていただきました!-次話投稿もいつになるかわかりませんが、出来るだけ投稿していきたいと思ってます。よろしくお願いします。




