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悪い女のつくりかた  作者: 風花てい(koharu)
悪い女のつくりかた
73/88

Butterfly  7

達也の2度目の結婚式当日の天気は、雲ひとつない冬晴れだった。


「こういう天気の日って、風邪のウィルスが蔓延しやすいのよ」

 自室の窓を開け、乾ききった風を頬に感じながら、紫乃は空に向かって悪態をついた。そんな妻を、白いネクタイを締めながら弘晃が笑う。

「今日の紫乃さんは、どんな天気だって気に入らないと思いますよ」

「だって」

 外の冷気は、病弱な夫にはよろしくない。紫乃は、窓を閉めると、近づいてきた弘晃に不機嫌な眼差しを向けた。

「ねえ。本当に、弘晃さんも出席しなければいけないの?」

「さあ、どうなんでしょうね」

 今日何度目かの紫乃からの同じ質問に、弘晃がとぼけた返事を返す。

「でも、急なことにも関わらず、この年末の忙しい時期に、普段から忙しい皆さまが、わざわざ時間を割いて披露宴にいらしてくださるんです。僕が出席することで、少しは来た甲斐があったと思ってくださるのなら……」

「弘晃さんは、人寄せパンダではないわっ!」

 紫乃は、憤然と叫んだ。今日の結婚披露宴で、彼女が、まず気に入らないことといえば、そのことである。 めったなことでは人前に姿を表わさない弘晃と話をする機会だと思えば、自分から喜んで足を運んでくれる客も増えるだろう。だが、今日は、弘晃のトークショーではなく、達也の結婚披露宴なのだ。しかも、その達也ですら、自らの未来を寿ぐ気になれない披露宴である。そんな催しに、弘晃をダシに使うことまでして大勢の人を出席させて、達也や喜多嶋社長を笑い者にする必要が本当にあるのだろうか? 

「達也さんを懲らしめるために、あの女の正体をわからせた上で結婚させてやろうという父の考えは悪くないと思うのよ。でも、大勢で、ひとりを寄ってたかってというのは、わたくしは嫌なの」

 唇を尖らせながら、紫乃が、自分の不満を弘晃に訴えた。 


 中学生の頃、紫乃は酷いイジメにあったことがある。大勢 対 ひとり。最初のうちは、誰も紫乃の味方をしてくれるものはいなかった。自分がターゲットではないとはいえ、今日の結婚式の図式は、その頃の心細さと辛さを彼女に思い出させせずにはいられない。なによりも紫乃が嫌なのは、自分自身が達也を懲らしめる大勢の中に含まれることだった。喧嘩は原則1対1を旨としている紫乃には、この状況が、ひどく不快に悪くてしかたがない。


「紫乃さんは、そういうのが大嫌いだものね」

 妻の性格を熟知している弘晃が、ふて腐れている紫乃を慰めるように、彼女の頬に触れた。

「だから僕が行くんだよ、奥さん。結婚式を喜多嶋の吊し上げ大会にしないためにね」

「そうなの?」

 紫乃は驚いた。それは初耳である。

「僕が行くのは、お義父さんに頼まれたからだけではないよ。中村グループは今後も喜多嶋と懇意にするつもりだということを、披露宴で僕の口から喜多嶋社長に直にお伝えしたほうがいいと思ったんだ。そうすれば、喜多嶋社長も少しは安心できるだろう? ……なんて、我ながら自分自身を買いかぶりすぎていると思わないでもないけどね」

 弘晃が、照れくさそうな笑みを浮かべた。

「この披露宴を開く目的が、明子ちゃんと達也くんが離婚したことで六条と喜多嶋との間に決定的な亀裂が生じたと世間に勘ぐられないようにするためだという六条さんの言葉は、決してただの方便ではないよ。紫乃さんだって、そのことをわかっているから、お義父さんのやりたいようにさせているんだろう?」

「そうなんですけど……」

 だが、あの父のことである。本当に父を止めなくてよかったのかと、紫乃は今だに悩んでいる。

「大丈夫。僕が君を卑怯者にはさせないから」 

 弘晃が、穏やかな笑顔で約束してくれる。

「うん」

 弘晃の心遣いに感謝しながら、紫乃は、彼の手に自分の手を重ねた。すると、ついさっきまで頼もしげだった弘晃が、「とはいえ……」と、急に情けない顔を見せた。

「明子ちゃんがしようとしていることについては、紫乃さんに頼まれても、止める気になれないのだけどね。彼女がしようとしていることは見ようによっては一種のイジメかもしれないけれども、どんな悪事も必ず露見するのだということを、香坂唯さんには、一度、なるべく大勢の人の前で思い知ってもらう必要があると思うんだ」

「それについては、わたくしも弘晃さんに賛同するしかないわね」

 紫乃も、渋々と同意した。弘晃の言うとおり、香坂唯には、これ以降は姑息な悪事は通用しないのだということを、徹底的にわからせる必要がある。そうでないと、この先も、大勢の人が迷惑を被ることになりかねない。

「嫌だけど、この際、そこは我慢するわ。それはそうと、弘晃さんの体調のほうは? 本当に?」

「大丈夫だよ」

 上着に袖を通しながら、弘晃がうなずいた。

「どちらにせよ。今日の披露宴は、あっという間に終わると思うから、それほど疲れたりはしないと思うよ。そろそろ、行こうか? 明子ちゃんが待っている」

「ええ」

 紫乃は、ビーズの刺繍が施された真珠色の小さなパーティーバッグを手に取ると、 弘晃と一緒に家を出た。



 達也と香坂唯の結婚式は11時からだが、彼らの身内ではない紫乃たちが出席するのは、その1時間後に行われる披露宴のみである。一方、ふたりの身内でもないのに今回の結婚式の主催者を買って出た紫乃の父親の六条源一郎は、結婚式にも披露宴にも出席することになっていた。


 11時を15分ほど回った頃を狙って、紫乃たちが結婚披露宴が行われる茅蜩館ホテルに到着したのは、披露宴が始まる前に、源一郎に知られずに明子と会うためである。 

 明子と森沢は、昨晩から、父には内緒で茅蜩館ホテルの1室に滞在している。明子によれば、東京に戻ってきたことを父に秘密にしているのは、事前に計画を知られれば彼が邪魔するかもしれないから……だそうだ。だが、紫乃も弘晃も、父が明子の計画を知ったら邪魔するどころか先頭に立って悪乗りするだろうと確信している。茅蜩館のスタッフも紫乃たちと同じ考えであるようで、六条源一郎には可能な限りおとなしくしていてもらいたいと願っているようだった。宴会客用の玄関に車で乗り付けた紫乃たちを見つけるやいなや、彼らは速やかに、かつ人目を忍ぶようにして、ふたりを明子のいる控え室まで案内してくれた。 

 部屋の中には、明子や森沢だけでなく、ガロワや彼の弟子たちらしき外国人が数人がいた。森沢の両親はいなかった。結婚式に出席しているのだろうと紫乃は思った。


 部屋の真ん中には、ドレスアップした明子が、こちらに背を向けて、背もたれのない椅子に座っていた。


 先日のパーティーと同じく、今日の水色のドレスもガロワが明子のために用意してくれたものであるらしい。それは、彼女がもっている清楚で落ち着いた雰囲気を際立たせ、ため息が出るほど彼女を美しく見せていた。だが、明子の姿に感嘆しながらも、紫乃の口から出てきた言葉は、「あなた…… その格好で、いいの?」という、妹を心配する言葉だった。

「え? 似合ってない?」

 紫乃の言葉に、明子が驚いたように身を竦ませる。

「そうじゃないの。とても素敵だわ! でも……」

「ああ、これのこと?」

 明子が、長手袋をした手を後ろに回すと、緩やかに波打たせた髪を片側に寄せて、うなじと背中を紫乃たちの視線に晒す。以前に比べれば良くなってきてはいるようだが、後ろが大きく開いたドレスから見える背中やむき出しの二の腕には、まだところどころにうっすらとじんましんの痕跡が残っていた。耳の付け根から襟足にかけての皮膚は、それ以上に痛々しく見えた。

「もう気にしないことにしたの」

 明子が姉に向かって微笑んだ。 

「髪で覆ってしまえば、それほど目立たないと思うし、せっかくガロワさんが私の為に作ってくださったドレスですもの。着ないのは、もったいないと思ったの」

「それは、そうかもしれないけれども……」


「そうです。とても、もったいないのです!」

 突然、それまで部屋の隅のほうでチマチマと作業をしていたガロワが、大声を出した。

「このドレス。私が、彼女をイメージしてデザインした時よりも、今のアキコには、とても、よくお似合いなのです!」

 ビックリしている紫乃のことなどお構いなしに、ガロワが弟子たちを連れて明子を取り囲み、淡く細かい葉がついた小花と細いリボンで明子の髪を飾り始めた。

「僕がこのドレスのデザインを決めた時、僕は、普通の……といったら変ですが、水の精霊をイメージしていました。でも、今日のアキコは水の女王のようです。なんという嬉しい誤算でしょう!」

 髪をいじっている間も、彼は興奮気味に話し続ける。 

「花嫁の白は汚れのなさを表します。だけど、白は、醜さや汚れを覆い隠し塗りつぶす色でもあります。これに対して水色……青は、真実の色です。水は無色透明。見えるままに、あるがままに、なにも隠そうとしない。海も空も、そして宇宙も、色のない透明なものを無限に重ねていけば、いつしか青になる。青は真実を映す水鏡。『正しき行いは、絶え間ない小川の如く、正義は、大河の如くに流れさせよ』!。 香坂唯さん、あなたが落としたのは、金のタツヤ? それとも銀のタツヤ? 愚かで嘘つきなあなたには、どんなタツヤもあげません! さあ、できました。どうですか?」

 ガロワは明子を立たせると、誇らしげな表情を浮かべて、森沢の前まで連れて行った。


 森沢は目元を緩めると、「きれいだ」と、率直な言葉で明子を誉めた。彼の言葉に嬉しそうに頬を染める明子を見れば、『気にしない』 という彼女の言葉が強がりや遠慮から発せられたものでないことは、紫乃の目どころか誰の目にも明らかである。紫乃は、これ以上の心配を口にするのはやめ、「本当に綺麗よ」と、笑顔で森沢の言葉を補強するだけに留めると、「なにか、わたくしたちが手伝うことはあるかしら?」と、たずねた。

「大丈夫。ありがとう。お姉さま」

 明子が、森沢と目を合わせてうなずき合ってから、柔らかな声で礼を言った。森沢が、「俺たちだけでなんとかなるとは思うけど、なにか不測の事態が起こったときには、頼りにさせてもらうので、よろしくお願いします」と、明子に代わって言い添えた。そうこうするうちに、弟の和臣が、一般の招待客がそろそろ披露宴会場に入り始めていると告げにきた。


「行きますか?」

 弘晃が紫乃を促した。

「ええ。じゃあ、頑張ってね」

 まだまだ明子に言い足りないことはあるような気がしたものの、紫乃は、あえて何も言わずに部屋を出た。


 宴会場に向かう道すがら、弘晃が紫乃にたずねた。

「寂しいですか?」

「これでいいのだと思うわ」

 紫乃は、サバサバした口調で答えた。

「これからは森沢さんが明子の傍にいてくれるもの。わたくしはお役御免ね」

「旦那さんよりもお姉さんが頼りにされる時は、この先も、まだまだありますよ」

 弘晃が慰める。

「それに、僕の目には、紫乃さんから森沢さんに保護者役が代わったというよりも、明子ちゃん自身に保護者がいらなくなったように見えましたけど?」

「そうね。でも、そんなふうに明子を変えたのは、森沢さんだわ」

 どこがどうとは言えないが、明子は確かに変ったと、紫乃は思う。これまでずっと姉の後ろに隠れていた気弱な女の子は、もういない。今日の明子は、紫乃の後ではなく彼女と対等に向きあう、ひとりの自立した女性だった。紫乃の庇護は、もう、明子には必要ない。自分の口出しは、もはや、ただのお節介でしかないだろう。

「だから、これでいいの。でも、ちょっとだけ、寂しい……かな」

 どうせお見通しなのだからと、紫乃は、チラリと弘晃に本音を漏らした。

 優しい夫は、「では、寂しくなった分だけ、僕が貴女に余計に甘えさせてもらうとしましょう」 と言って笑ってくれた。



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 紫乃たちが行ってしまってからほどなく、ガロワとその弟子たちも帰っていき、部屋に残っているのは、明子と森沢だけとなった。


「そろそろ結婚式が終わった頃かな」

 森沢が、腕時計で時刻を確認する。

「お式のあとは、写真撮影でしたよね?」

 明子は、数ヶ月前の自分の結婚式を思い出していた。

 写真撮影の後は、親族が披露宴会場に入るまで、別室でしばらく達也と待たされたはずだと明子は記憶しているが、今回の結婚披露宴では、披露宴の前に明子の父と達也の父から招待客への挨拶があるので、達也も、いったん花嫁を残して先に披露宴会場入りすることになっているという。 

 明子が招かれざる客として披露宴会場に乱入するのは、唯が会場入りする前、最初の父の挨拶が終わった後となる。入場のタイミングは、この結婚披露宴の運営責任者である梅宮が教えてくれる手はずになっている。


「緊張してきた?」

「え?」

「手、震えているよ」

 言われて、明子は視線を落とした。なるほど、手袋をした手は、明子の意思を無視して、小刻みに揺れていた。森沢が、彼女の手を取って、その揺れを止めてくれる。彼の手から伝わってくる温もりと力強さが、彼女の心を落ちつかせていく。

「大丈夫?」

「ええ、なんとか」

 明子は、強張ってはいるものの笑みらしきもの浮かべると、「それで、あの……」と、手を握られたまま、遠慮がちに森沢を見上げた。

「本当に一緒に行ってもらってもいいんですか? 私、ひとりでも……」

 森沢まで巻き込むことを、明子は、まだ少しだけためらっている。

「この期に及んで、つれないことを言うね。俺だって、君に見合うようにと、こんなにおめかしをしたというのに……」

 明子の遠慮を笑い飛ばした森沢が、ファッション誌のモデルよろしく気取った顔でポーズを決めた。黒いジャケットにグレーのベストとネクタイ、そして黒地に灰色の縦縞がはいったコールパンツ……と、今日の森沢は昼の準礼装で身を固めている。

「こんな格好までして君に置いていかれてしまったら、かなり格好悪いと思わないか?」

 森沢が今度は思いっきり情けない顔を作って明子に訴えた。それでも明子がためらうと、「一緒に行くよ。だめ?」と、ねだるような視線を向けながら、明子の手に口付けた。どうやら、森沢は、なんとしてでも明子に付き合ってくれるつもりらしい。

「いいえ」

 森沢の百面相を見せられた明子は、笑いたいのを堪えながら、うつむいた。

「本当は、すごく心細いの。だから、一緒に来てくれれば嬉しいです」

 その言葉に、森沢がピクニックに行く子供のように目を輝かせた。その上、「頼りにしてます」と明子が言葉を足せば、森沢は、急に尊大ぶって胸を張り、「素直でよろしい」と、明子の頭を撫でてくれようとする。

「ダメですよ。 髪が崩れちゃう!」

 森沢の手を退けようとしながら、明子は笑い声を上げた。


「じゃあ、一緒に行く代わりに、交換条件」

 森沢が、妙なことを言い出した。

「はい?」

「そろそろ『森沢さん』は、やめてほしいんだけど」

「は?」

「いや、だから『森沢』って、実は沢山いるからさ。長野のほうは、近隣住民の3分の1が森沢姓だし、今日の披露宴にだって、うちの両親を除いても5人はいたはずだし…… 紛らわしいと思わない?」

 いくぶん唐突な提案に面食らう明子に、森沢が言い訳のようなことを口にする。

「そうかもしれませんけど、今からですか?」

「『思い立ったが吉日』とも言うしね。時間もあるようだから、練習してみようか? はいっ! 『俊鷹』『俊鷹』『俊鷹』!」

「え…… と、と、と、し、し……」

 明子が口ごもっていると、黒いお仕着せをきたホテルの女性スタッフが迎えにきた。

「よし、行こうか?」

 再び緊張を覚える暇もないまま、明子は、森沢の腕に手を絡まされ、宴会場に向かって歩き始めていた。



 本日の結婚式の花婿よりも元気一杯の森沢と、本日の花嫁よりも気立ても品もよく美しい明子は、本日の花嫁花婿よりも、よほど微笑ましいカップルに見えるらしい。ホテルの従業員や、たまたま居合わせた客など、行く先々で、人々が立ち止まっては、ふたりに祝福の気持ちをこめた笑顔を向けてくれた。

 宴会場のあるエレベーターホールでは、森沢の友人でガロワのドレスを追いかけているカメラマンも待ち構えていて、明子のドレスと、ふたりの姿を、あらゆる角度からカメラに収めた。 


「そろそろ、六条さまのスピーチが始まります」

 本日の披露宴を取り仕切っている梅宮がふたりに声をかけ、ドアを少しだけ開けてくれる。隙間に顔をくっつけるようにして、明子と森沢は中の様子を探った。金屏風が置かれた長いテーブルの前で、マイクを持って話し始めた源一郎は、まず、数ヶ月前に盛大に祝ってもらったにもかかわらず、自分たちの子供が早くも離婚することになったことを招待客に詫び、離婚後も喜多嶋家と六条家は仲良くやっていくことを彼らの前で約束した。そして、最後に、昔から思い合っていた女性と、新しい人生を送ることを決めた達也を祝ってやってほしいという言葉で話を結んだ。離婚した次の日に行われる結婚式と披露宴そのものが、源一郎が仕組んだ達也と喜多嶋への壮大な嫌がらせではあるものの、スピーチを聞く限り、彼には、この披露宴を自分から積極的に台無しにするつもりはないように、明子には見えた。


 『とはいえ、六条さんが呼んだ招待客の多くは、言葉の裏の裏を読まずにはいられない狸ぞろいだし、どのみち披露宴は、紘一伯父さんがメチャクチャにするに違いない。スピーチの中で、達也が浮気をしたことを招待客の前で打ち明けて、離婚の原因が全て達也にあると暴露せずにはいられないだろうからね。それに喜多嶋の親族の誰一人、今日の結婚式を喜ぶ気はないから、披露宴は葬式みたいなことになるに違いないよ』

 ……というのが、昨日森沢たちが予測した、この後の展開である。


 この披露宴は、いずれにせよ、人々の記憶に長く残るような酷いものになるだろう。その事がわかっているから、源一郎も、自分からは酷いことを言わず、お膳立てだけして、後は壊れるに任せることにしているのだ。

(だから…… ごめんね。達也さん)

 明子は、心の中で先の夫に謝ると、「今です」という言葉と共に宴会場への扉を開けてくれた梅宮の言葉に従って前に歩き出た。 





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