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悪い女のつくりかた  作者: 風花てい(koharu)
悪い女のつくりかた
38/88

Entangled Yarn 5

  なんとも遅ればせなことながら、最近になってようやく、森沢は、なにかにつけて自分が明子のことで頭を悩ませていることに気が付いた。

 だが、森沢が彼女のことを煩わしく思っているかといえば、決してそんなことはない。忙しい仕事の合間にふと思い出す明子の顔は、たとえそれが泣き顔であったとしても、彼の気持ちを少なからず和ませてくれるのである。


 では、なぜ明子のことを考えると気持ちが和むのか?


 ちょっと考えれば、すぐにわかりそうな疑問を、森沢は、あえて疑問のまま放置していた。とっくの昔に自分の中に芽生えている本当の気持ちを、『頼りなさそうな彼女を、どうにも放っておけないから』とか、『女性に優しくすることは自分の信条だからだから』とか、そんな言い訳で上手に包んで、森沢は、本日もまた食堂で遅めの昼食をとりながら、飽きることなく明子のことで思い悩んでいた。 



 本日の考え事のテーマは、『全部私が悪いんです』という明子の言葉と、その時に見せた彼女の涙の意味である。


『全部私が悪い』と明子は言っていた。だが、彼女のできる悪さなど、たいしたことであるわけがない。せいぜい信号無視かつまみ食い程度のことだろう。しかし、いくら明子が真面目でも、その程度のことを気に病んだりするとも思えない。

「それ以上の悪いこと? 悪いことねえ」

 ぶつぶつ言いながら森沢がB定食のハンバーグを箸で突っついていると、同年代と思われる若い男性社員が彼の前に座った。


 昼飯時のピークは、とう過ぎている。周りに幾らでも席があるというのに、目の前に座ったということは自分と話があるのだろう。森沢が顔を上げると、男性社員は、「営業3課の田端です」と名乗った。

「あなたも、いい神経してますね」

 定食を乗せた四角いプラスチックのトレーを森沢のトレーの前にぴったりと寄せると、田端は、聞こえよがしにため息をつきながら座った。

「ここのところの食堂は、あなたと喜多嶋専務の噂でもちきりです。どちらが良いとか悪いとか、どちらに付いて行けば良い目を見られるかとか、誰もが、好き勝手なことを言ってます。達也さんが計画していた海外移転のせいで明日にもリストラされるんじゃないかとヒヤヒヤしているド田舎の工場や支社では、あなたの人気は徐々に上がってきているかもしれませんが、ここ喜多嶋紡績グループの本丸に限って言えば、今のところは9対1の割合で喜多嶋専務が圧倒的に優勢です。問答無用で不採算部門をカットしようとする前任の喜多嶋専務は強引だが、彼は、有益な投資で既に会社に多大な利益をもたらすことに成功している。一方、森沢係長は、自分たちの仕事を無駄に引っ掻き回すばかりで、さしたる効果も上げていないというわけです。しかも、自分と関係の深い取引先には、たいそう甘い。森沢係長は、経営の何たるかが、根本的にわかってらっしゃらないと…… まあ、あちらは喜多嶋社長の息子で、あなたは喜多嶋の傍系。 初めから分が悪いことは否めませんが」

「なるほど」

 のんびりと相槌を打ちながら、森沢は味噌汁を飲み干した。 

「悔しくないんですか?」

「別に」

 達也と比べられるのは昔から慣れてる。


「あ、でも、えこひいきをした覚えはありません」

「ええ。私は、わかっています」

 田端はうなずくと、急に人懐っこそうな笑みを浮かべて、森沢のほうに身を乗り出した。

「一昨日の会議で達也専務の意向に逆らって、オーダースーツの高畑や奈良井縫製工場、OEM美苑などとの取引を継続させたこと。私は正解だと思います。注文が細かかろうが発注量が少なかろうが、舶来の高級服地ばかり扱う高畑が唯一扱う国内産の服地はうちだけです。奈良井は昔から地味でも堅実で、商品の質はピカイチ。美苑の社長は若いけれどもやり手です。今は弱小でも一度ついた顧客が離れていない。将来的に非常に有望な会社です。私は、あなたのことを喜多嶋の血縁であることを鼻にかけたお坊ちゃまかと思って見くびっていましたが、なかなかどうして、わかっていらっしゃるじゃないですか。私を初めとした営業部の何人かは、あなたを見直しましたよ」

「それは、どうも、ありがとうございます」

「営業部だけじゃないんです。他の部署にも、私と同じように感じている者がいます。そして同じような不安を抱えています。『達也専務は今以上に会社を大きくするだろう。だが、儲けにならないところを切り捨てて利益だけを追求し、不動産や株の利益で肥大した会社に本当の意味での未来はあるのか?』」

 田端が、期待を込めた眼差しを森沢に向けた。 

 森沢は少し考えたあと、「つまり、そういう不安を抱えている人が、10人のうち、ひとりしかいないってことですよね?」と、苦笑いを浮かべた。


「残りの9人が専務のやり方でいいと思っているのなら、それが時代の流れってものだと思いますが?」

「でも、そのたった1割の中に社長が混じっているじゃないですか」

 田端が食い下がった。

「伯父…… いや、社長が?」

「ええ。社長は、ご自分の息子さんとはいえ専務が進もうとしている道に不安を覚えているんだと思うんです。だから、森沢係長を喜多嶋専務を競わせる形で今回の任に着けたのではないでしょうか? 場合によっては、達也専務ではなく森沢係長を喜多嶋の次期総帥にと……」

「ストップ」

 森沢が田端の前に掌を突き出した。


「ありがとう。俺をそこまで買いかぶってくれるのは、かなり嬉しい。だけどさ」

 森沢は、素の口調に戻って田端に笑いかけた。 

「それはありえないよ。俺は喜多嶋を良くするための憎まれ役なら幾らでもでもするつもりはあるけれども、トップって柄じゃない」

「でも……」

「ごちそうさまでした」

 まだ何かを言いたげな田端を残して、森沢は食堂を後にした。



「なんだか、おかしな流れになってきたよなあ」

 食堂から出た森沢は、前髪をかきあげながらぼやいた。


 最近になって、達也に対抗して森沢を持ち上げようとする動きが見られる。

 今日の田端などは、まだ理性的なほうだ。これまでに森沢に擦り寄ってきた者の中には、ただ強いものに巻かれたいだけの太鼓持ちのような者も少なくない。しかしながら、そんなものに担ぎ上げられて浮かれるほど森沢は間抜けではなかった。好意を持って近づいてくる者、森沢を認めてくれる者たちの存在をありがたいと思いつつも、それらが妙な派閥などを形成しないように、最近の森沢は、自分の言動に慎重になっている。


 思い返してみると、彼は、小さい頃から幾度となく、『達也に万が一のことがあった場合には、お前が喜多嶋を継ぐことになるのだから』という言葉をかけられてきた。しかしながら、その言葉は、もっぱら森沢の放蕩を諌めるための方便として使われてきた。言っている者も言われている者も、森沢が喜多嶋を継ぐことなど期待していない。

 唯一の例外は、森沢の母方の祖母で、彼女だけは、『達也に万が一など、冗談でも言うものではない』と本気になって怒っていた。祖母は達也を喜多嶋の跡取りとして育てることに生きがいを感じていた人だった。だから、もしも森沢が達也を差し置いて喜多嶋の跡を継ごうものなら、きっと森沢の枕元に化けて出ることだろう。


 ちなみに、森沢本人はどうかというと、彼は達也の代打など真っ平ゴメンだった。

「今は仲間内で割れている場合じゃないと思うのだけどな」

 誰がトップになるかなど、本当はどうでもいいことだと森沢は思っている。

 要は、この会社がよくなるように、皆が知恵を出し合って、トップに立った者に協力すればいいだけのことである。派閥争いや相手を追い落とすための中傷合戦など、森沢には時間の無駄だとしか思えない。

「うちの会社って、いまいち危機感がないんだよな」

 森沢は、ため息をついた。特に本社には、『喜多嶋紡績は大企業だから潰れない』と高を括っている人間が多すぎる。『いっそ潰れてしまったほうがいいのかも』 という台詞を人目もあるので飲み込みつつ、森沢はエレベーター脇の薄暗い階段のほうに歩いていった。重役用のフロアは、この2階下だから、階段の方が面倒がない。そう思って下へ降り始めたものの、森沢は戻るべきフロアを通り過ぎ、階段を降り続けた。食後のコーヒーが飲みたくなったのだ。同じコーヒーなら、重役室で飲めるコーヒーより、喜多嶋ケミカルの分室で淹れるコーヒーのほうが断然美味い。なにせ水が違うからな。 そんなことを考えながら、森沢は5階へ向かった。


 分室の扉を開けた森沢は、部屋の中に思いがけない人物をふたりも見つけて驚いた。


 一人は、明子である。

 入り口に近いところに置かれている椅子に座っていた彼女は、森沢が入ってきた気配に振り返ると、「お邪魔しています」と、遠慮がちに微笑んだ。彼女は、先日森沢が渡した綿のマフラーを首に巻いてくれていた。森沢が想像していた通り、白くてふわふわとしたマフラーは、彼女のおっとりとした優しい雰囲気に良く馴染んでいた。

 もうひとりは、だぶついているスーツを着た胡麻塩頭の男だった。頑丈そうな黒いプラスチックフレームでがっちりと固定された分厚いレンズの奥にある彼の目は子供並に表情豊かで、部屋に入ってきた森沢を懐かしくも嬉しそうに見つめている。


「親父? なぜ、ここに?」

「ママに家を追い出されてしまったのだよ」

 喜多嶋ケミカルの社長にして森沢の父親である森沢信孝が、面目なさそうに胡麻塩頭を掻きながら打ち明けた。

「コストカッターという仕事と、金食い虫の研究所を守る仕事。『いくら俊鷹が器用でも、そこまで矛盾する仕事を一緒にさせるのは可哀想よ。研究を続けたかったら、自分で東京に行って、自分の舌で権利を勝ち取ってらっしゃい!』と言われてな」

「あ、それは助かる」

 森沢は、素直に父に……ではなく母に感謝した。誰もが森沢に面倒ばかり押し付けがちな今日この頃。 彼の負担を減らしてくれようと手配りしてくれるのは、もはや彼の母親ぐらいしかいないようだ。信孝も、そのあたりはわかっているようで、「俺を差し向けた、ママに感謝するんだな」 と恩着せがましい。ついでに、「本社の入り口の前で入るかどうか迷っていたらしい彼女に声をかけてここまで連れて来てやったのも自分だから、感謝しろ」と、偉そうにのたまわった。


「でも、よく彼女だとわかったね」

 信孝は、明子とは結婚式の時にしか会っていない。それを覚えていたとは、顔覚えの悪い父親にしては非常に珍しいことである。

「そりゃあ、お前。このホワホワした白い綿マフラーを見たら一目でわかったよ。いやあ、こっちに来た早々に、もうひとつの目的が果たせるとは、私も運がいい」

「もうひとつの目的?」

「いいんだ。こっちのことだ。ところで、お嬢さん」

 森沢の質問を無視して、信孝が明子に笑みを向けた。


「このコーヒー、美味いと思いませんか?」

「本当ですね。先日こちらに伺ったときにも思ったのですけど、とても美味しいです。お豆が違うんですか?」

「ほう。以前にも、この部屋においでになられた?」

 信孝は嬉しそうな笑みを浮かべると、得意げに明子に説明を始めた。

「種を明かせば水が違うのですよ。うちの研究所で作った浄水器を通して作った特別な水でしてな」

「そのうえ、その浄水器はこの部屋の半分を占拠しておりまして、こちらの社員は、狭い部屋で肩を寄せ合って慎ましく暮らすより他ないのです」

 放っておくと長くなるので、森沢は、とっとと父親の御託を打ち切ると、「それは、これから改良してだなあ」という彼の叫びを無視して、今度は自分が明子に話しかけた。


「ところで、今日はどうしたの?」

「ええと、その…… 先日のお礼が言いたくて」

 明子がはにかんだ笑みを浮かべた。

「このマフラーも他にいただいたシャツも、どれもとても着心地が良かったので」

「かゆくならなかった?」

「はい。おかげさまで、最近とても調子がいいんです」

 心配する森沢に、明子が嬉しそうにうなずく。


「ちなみにね、そのマフラーは、うちの研究所で、この俊鷹が近所の小中学生まで巻き込んで丹精込めて作った綿を原料に作られておるのです」

 信孝が話に割り込んだ。

「まあ、そうなんですか?」

「ええ。 愛情を込めて込めて込めまくって作りました」

 何が主張したいのかわからないが、信孝が両手の拳を握り締めながら強い口調で明子に訴えた。それだけでなく、傍観者に徹していた3人の社員までもが、信孝に同調するかのように、「ええ、愛情たっぷりです」と声を揃えた。


「森沢さんって、綿のことになると、とても熱心ですものね。お話も尽きなくて……」

「おや、そんなことまで話しましたか? うっとうしくて大変だったでしょう? それなのに、まだ、こやつに愛想を尽かさないとは、いやいや、実に素晴らしいですな」

 明子の言葉に、信孝がいちいち大喜びする。

「私の妻がこの話を聞いたら、私以上に大喜びすることでしょう。感極まって泣くかもしれない」

「森沢さんのお母さまが……ですか?」

 不思議そうな顔をした明子に、信孝が「いやいや、こちらの話です」と首を振った。なんだか話が微妙に噛み合っていないような気がする……と森沢はいぶかしんだが、信孝は、お構いなしに話を続ける。

「ちなみに、こいつが渡したというプルオーバーのシャツの原料となる糸は、うちの研究所で開発したものです。いわゆるセルロース繊維と呼ばれるものの一種でしてね。セルロース繊維というのは、例えば木材パルプなどを原料とし……」

「はいはい。そういう話は、また後で、研究所の予算を減らしたがっている人たちの前でやってね」

 またもや長くなりそうなので、森沢は早々に父親の講釈を打ち切った。


「俊鷹。少しは話させてくれてもいいだろう?」

 信孝が不満そうに口を尖らせた。

「ところで、お前の仕事のほうは順調なのか?」

「なんとかね。でも、食堂の噂だと俺の評価は下の下らしいよ。口うるさいばっかりで、なんの効果もあがってないとさ」

 仏頂面で答える森沢を見て、「経費削減係なんてのは、皆に嫌われるのが仕事みたいなもんだ。嫌われているのなら成功しているんだろうよ」と、信孝が励ましにも似た言葉を口にしながら笑う。 

「若造のお前から、あれこれ指図されるのも癪だろうしねえ。いっそ、六条か中村の力を借りて、強引に改革しちゃったほうが早いんじゃないか? 例えば……誰だっけ? お前の友達の『伝説の男』に口きいてもらうとかさ」

「弘晃さん? それは、考えた。でも、ダメだってさ」

「なんだ。ケチだなあ」

「ねえ? 少しぐらい力を貸してくれたっていいと思うだろう?」

 親子は意気投合して盛り上がった。すると、脇のほうから、「でも、それでは森沢さんの立場が悪くなるだけだと思いますけど」という控えめながらしっかりとした明子の声がした。


「え? そうなの?」

 森沢が明子に顔を向けた。明子は、もう少し詳しい説明が必要だと思ったのだろう。手にしていた紙コップを置いて森沢を見上げた。

「そりゃあ、優れた経営者として評判が高い中村の義兄の意見だといえば、森沢さんの意見よりもずっと重みがあるでしょうから、誰だって言うことを聞いてくれる気になると思います。でも、それでは、達也さんがしていることと変らなくなってしまいますでしょう?」

「達也と同じ?」

「喜多嶋の実状をロクに検証することもなく、留学して得た外国流の経営術の知識を頼みにして、頭だけで組み立てた改革案を現場に押し付けようとすることです」

 妻であるにもかかわらず、明子の達也評は辛らつだった。


「なるほど。外国流の経営術も弘晃さんも、喜多嶋の実状を知らないってところは同じだものね」

「ええ。結局のところ、どちらも、自分の意見を補強するための権威でしかありません」

 森沢の言葉に明子がうなずく。

「森沢さんは、現場のことや実務にお詳しいのですから、そこを強みにすべきだと思います。直接手は下してくれなくても、相談ならば中村の義兄は幾らでも乗ってくれるはずですから、迷った時に森沢さんがこっそりと助言を仰ぎにいけばいいだけのことです。それに、達也さんは喜多嶋の御曹司だからこそ、多少強引なことをしても皆が許してくれるんです。喜多嶋は同族色の強い企業です。六条や中村などの外部からの押し付けに、喜多嶋の方は表向きは従ってくれるかもしれません。でも、その時にできたしこりは、いつまでも社内に残るのではないでしょうか? そして、社員さんたちの恨みの矛先が外部の人に向けられるのかといえば、そんなこともなく……」

 明子が話の途中で口を閉じて、森沢を見た。

「外部の人を引き入れた俺に向けられるってことか?」

「例えば、うちの父に直接文句を言うよりも、森沢さんに言ったほうが、ずっと言いやすいでしょう?」

 明子が、申し訳なさそうに微笑んだ。


「ついでに言えば、達也と比べて、お前は人の力を借りなければないもできない無能だとか、『虎の威を借る狐』だとか、散々こき下ろされるだろうな」

「うるせーな」

 森沢は、脇から茶々を入れる父親を横目で睨み付けた。すぐに明子に視線を戻す。すると、彼がわずかに目を離した隙に、ついさっきまで落ち着いた口調で森沢に意見していた六条家の姫は、いつもの控えめで恥ずかしがりやの女性に戻っていた。

「生意気なことを言ってしまいました。すみません」

 明子が頭を下げた。赤くなった顔の前で長い髪が大きく揺れる。

「お仕事のことなんてわからない私が、知ったような口をきいて……」

「そんなことないよ。ありがとう。とても参考になったよ。それに、弘晃さんのことを恨まずにすんだ」

「姉によると、義兄は、森沢さんのことを、かなり買っているそうですよ。任せられるところには余計な口出しをしないというのが義兄の方針だそうです」

 森沢が感謝の言葉を口にすると、明子がホッとしたように顔を上げて姉情報を口にした。そして、誠意の篭った眼差しを森沢に向けて、こう励ましてくれた。


「森沢さんには会社を立て直すための自分なりの計画がおありだったでしょう? だから、中村の義兄の発言力など利用しなくても大丈夫ですよ。達也さんみたいに、わかり易くて派手な成果は上げられないかもしれませんけれども、それは、やり方が違うのだから仕方のないことです。森沢さんが言葉を尽くして皆さんに語りかけ続ければ、森沢さんのやろうとしていることに理解を示してくれる人や協力してくれる人が、少しずつでも確実に増えていくはずです」 

「うん。 もう少し頑張ってみるよ」

 うなずいた森沢の頭に、先ほど食堂で話した田端の顔が浮かんだ。 

 

 今度彼と会ったときには、変に話をはぐらかすことなく腹を割って話してみよう。そう思った。





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