第2話 王女との出会い
それにしても、この森は何処まで続くんだよ…
説明しよう。彼がいるこの森の名は『死の森』だ。一度足を踏み入れると二度と戻って来られなくなると言われている言わば地球の樹海のような所だが、もちろん彼はそんな事知らずにただ歩きまわっていた
「くそ!くそくそ!」
食料はあるし、寝床も作れるから死ぬ心配はしないで良いのだが、彼はもう三時間近く歩き続けていた。要するに姫様、もしくは村の美少女に会いたいと言う気持ちから我慢の限界に達していた
「もぅいぃ…樹海的な所なんだろ…どうせ…」
下を向いたまま一人で呟く悲しきぼっち。彼の中でぷつんと切れた
「こうなったらこの森全て斬り倒す!!!木も生き物も全部じゃーーーーーー!!!!!」
彼を止める物は誰もいなかった…もちろん一人だから
「ふぅ…。ふぅ…。あ、魂よ、我に帰れ。」
すると斬り倒しまくった森のあちこちから魂が…間違えた力の塊が飛んできた。それも数百と物凄い量が
ソウル850
“レベルが5に上がりました”
“レベルが6に上がりました”
…
…
“レベルが29に上がりました”
あと少しでレベル30か!何が生成出来るか楽しみだな、このまま斬り倒して進めばいつかは人に出会えるはずだ
ーー
「おーーーりゃーーーー!!!!!」
「この木共がーーーー!!!!」
「オレを誰だと思ってる!!!!」
「死神、鎌虎様だぞーー!!!」
斬り倒していくうちにおかしなニックネームを自分につけて叫んでいた。ここまで来ると同情しか湧いてこない
「ふぅ、ふぅ、魂よ、我に帰れ」
五分間斬り倒してはこの繰り返しをしているといつの間にかレベルは80を超えて、ソウルは20000以上溜まっていた。あれ、やり過ぎた?
ついにはスタート地点から3キロ近く森を伐採してしまったようだ。まぁおかげで林道みたいな所に出たし、結果オーライで!ここを進めば人に会えそうだな。鼻歌を歌いながら森だった場所から林道に進んでいるとたくさんの人がこっちを見ている事に気付いた。んー騎士団みたいだな…やっぱやり過ぎたか…
「隊長!人が歩いて来ます!」
「人…のようだな…彼に話しを聞いてみよう」
やっべー、スッゲーこっち見てるし。ここは知らないふりしてやり過ごすしかないな。本能がうそをつけと叫んでいる
「そこの君!少し話しを聞かせてくれないか!」
「いやぁ、良い天気ですねー!ではこれで!」
何ともわざとらしい演技で何事も無かったかのように通り過ぎようと試みるがすぐに取り囲まれてしまった
「待ちなさい!君は今、この死の森から来たな?君が木々を斬り倒したのか?」
「こんな軟弱者にそんな芸当出来ませんよ!ははは」
「こら、隊長が待てと…こいつ!」
人混みを脱け出そうとしたが肩を掴まれて無理矢理戻されてしまった。しかもマントがめくれてしまい隠していた大鎌もばっちり見られて
「隊長!こいつ怪しすぎます!」
「すぐに連行しましょう!」
「待ちなさい…もし、この森をこんな状態にした者を私たちが捕まえれると思う?」
「それは…ですが、ここはクハルト王国領ですよ!勝手に森を伐採するなど許されません!」
あー、もう面倒臭い野郎だなこいつ
「見てくださいこの目を!ワルですよこいつ!」
殺すか?煩すぎる
「隊長!ほっぐゔぉ」
「部下が失礼を。お話ししてもらうだけで結構ですので、この森を伐採したのはあなたですか?」
部下と言われていた男を蹴りで気絶させた。鎧の上からの衝撃で気絶させるなんてこの男、中々やるではないか。でも、どうしようか…本当の事言ったら面倒臭い事になりそうだな、てか絶対なる
「これは私も失礼、ヘルムを被ったままでお話ししていましたね。私の名前はルトマー・クハルトと申します。クハルト王国の第三王女で、騎士団の隊長をしているものです」
「お、王女様…」
周りの騎士達はほら見ろ、ビビったぞとクスクス笑いをしていた。王女様…王女様だと!!ヘルムの下の素顔は綺麗な顔立ちをした女だった。自然な銀髪の短い髪。タイプ過ぎる…
「これは失礼、オレは鎌谷虎と申します。虎ちゃんと呼んでください。チュッ」
「ここここの王女様になんて無礼を!!!」
「黙りなさい!」
手の甲に思わず口付けをしてしまった。これで一つ夢が叶ったよママ!!
「話しを戻しましょう、森をこんな風にしたのはあなたですか?」
「そうですよ!ちゃんと理由があるんです!」
「理由とは?」
「道に迷ってしまって」
「は?」
「だから、森から出られなくなったので」
「そんな理由で…いや、理由はもう良いです。どうやって伐ったのですか?魔法でもこんな事出来ませんよね?」
もう良いや、美人だし。と道に迷った所からだが包み隠さずに説明した。もちろん吸収と生成の話しはしないが
「信じ難いですが…では個人証を見せてください」
個人証をマントの下にある鞄から取り出して見せてあげた。これがオレの個人証だー!
「生まれは…ジパング?聞いた事無い場所ですね」
「遠い所からやって来たもので」
「犯罪歴も無いし、良いですよ。今回は道に迷ったからと言う事で見逃します」
「「隊長!!」」
「良いのです、さぁ道を開けてあげなさい!」
騎士団の部下達からの視線を無視してその場を立ち去る。あ!連絡先聞くの忘れてた!
ーー
「どうして見逃したのですか!?」
「どうして?もし、本当に彼の仕業ならドラゴン並みの力を持つ事になるのよ?そんなやつを私達だけでどうにか出来ると思う?」
「ですが…」
「どちらにせよ、捕まえるのは国に入ってからです」
「なるほど!」
王女は鎌谷虎が歩いて行った方角を睨み付けた
「鎌谷虎…変わった名前ね」
鎌谷 虎 人間 レベル84 ソウル24523
特殊スキル【吸収】【生成】
凡庸スキル【黒魔法Lv1】【鎌術Lv8】