表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

妙な疑惑・二

 その日の夜。


 仕事から帰ってきた私とシャノンさんは、すぐさまハーヴェイさんの部屋へと向かった。


「ハーヴェイ! いる!?」


 シャノンさんは、ドンドンと、強い力で部屋のドアをノックする。

 しばらくしてドアが開き、ハーヴェイさんが姿を見せた。


「シャノン? そんなに慌ててどうし……って、リオも一緒だったのか」


 あれ? ハーヴェイさん、今シャノンさんの名前を呼び捨てにしたよね? いつも「シャノンさん」って呼ぶのに……。

 けど、今のシャノンさんはそれどころではないようで、シャノンさんは両手でハーヴェイさんの胸ぐらを掴んだ。


「いっ!? シャノンさん、いきなり何を……」

「ハーヴェイ……あなた、官能小説なんて持ってないわよね……?」

「はっ!?」


 ハーヴェイさんは、意味がわからない、といった様子で、目を白黒させている。


「シ、シャノンさん……き、急にどうしたんですか!? そんな事聞くなんて……」

「良いから、答えなさい!」


 私はシャノンさんの後ろに立っているので、彼女の表情はわからないが、後ろにいても怖いと感じる程の、すごい気迫だった。


「も、持ってませんよ……!」

「……本当に?」

「本当に持ってません! 何なら、部屋を確認してもらっても構いません!」

「……」


 シャノンさんは、しばらくハーヴェイさんの胸ぐらを掴み続けていたがーーやがて、手を離した。


「……嘘はついてないみたいね。ごめんなさい、疑ったりして」

「い、いえ……けど、急にそんな事言い出すなんて、どうしたんですか?」


 シャノンさんはため息をつき、こう言った。


「はあ……ケントに言われたのよ。あなたとソールが官能小説を持ってるんじゃないかって」

「はあ!? な、何言ってるんだケントの奴……! って言うか、そういう物ならロドニーが一番持ってそうじゃないですか?」

「そ、それもそうね……」


 ロドニーさん……一体何だと思われてるんだろう……。

 と、不意にハーヴェイさんが私の方を見た。


「……ひょっとしてリオも、ソールが官能小説とか持ってるんじゃないかと疑ってるのか?」

「え、えーっと……あ、あはは……」


 私は、笑ってごまかした。

 そんな私を見て、ハーヴェイさんはため息をついた。


「はあ……それはケントの冗談だ。多分、ソールも官能小説なんて持ってないと思う。そこを疑われるのは地味にショックだから、ソールの前でこういう話は……」

「駄目よ!」


 突然、シャノンさんが大声を上げた。


「これは、恋人がいる女性にとってはとても重要な事なの! 確認しない訳にはいかないわ!」

「……そ、そうですか……」


 シャノンさんの気迫に、ハーヴェイさんは負けたようだ。


「明日になったら、リオのためにも、ソールに確認しないと。後、ついでにロドニーにも確認しておこうかしら」

「……どうするつもりですか?」

「ソールに明日の夜の予定を聞いて、空いてるようだったら家に確認しに行くの。ロドニーは……家の場所がわからないわね。どうしましょう」

「……ひょっとして、シャノンさんとリオの二人だけでロドニーのところに行くつもりですか?」


 ハーヴェイさんが、不安げな表情でそう尋ねてくる。


「? ええ、そうだけど」


 シャノンさんの返事を聞いて、ハーヴェイさんは腰に手を当て、こう言った。


「それは駄目です! だったら、俺も一緒に行きます。ソールの家はともかく、女性二人だけでロドニーのところには行かせられませんから」

「……ひょっとして、心配してくれてるの?」

「え? 当たり前じゃないですか」

「……あ、ありがとう」


 シャノンさんは照れているのか、そっぽを向いてしまった。

 二人のやり取りが微笑ましくて、私は思わず笑みがこぼれる。


「……? リオ、何で笑ってるんだ?」

「ううん、何でもない。ねえ、ハーヴェイさん」

「ん? 何だ?」

「ハーヴェイさんって、何か小説持ってる?」


 私の問いに、ハーヴェイさんは困ったような顔をした。


「あー……ごめん。俺、小説は持ってないんだ」

「そっか、わかった。ごめんね、いきなり部屋を尋ねたりして」

「いや、良いよ」

「ほら、行こう? シャノンさん」

「え、ええ」


 こうして私達は、ハーヴェイさんの部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ