表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イピカイエの挑戦状  作者: テクニカル・ディフィカルト
4/4

第四話「One」

リンカーンが夢について、語ります。

これは最近、夢に見る話でね。


自分はベッドの上で寝ている。

辺りは真っ白な世界が広がっていて、仕切りも無ければカーテンさえも無い。

ただベッドの右隣にはメスシリンダー等の容器が乗っている机があって、

左隣には椅子に座った看護婦がいた。


ただおかしいんだ。

看護婦の顔が黒い砂嵐がかかっているみたいで、表情が見えないんだ。

その砂嵐の奥でどんな顔をしているのかが、気になった。

「あなたは笑っているのかい?」

そう聞くと、看護婦は、

「あなたが笑ってほしいなら、笑います。」

と言うんだ。俺が聞きたいのはそんな言葉じゃない。もう一度、

「あなたは泣いているのかい?」

と聞いた。返ってくる言葉は、

「あなたが泣いてほしいなら、泣きますよ。」


俺は頭にきて、こう言った。

「死ねと言ったら、死ぬのか?」

そしたら、看護婦は、

「どこかの漫画の受け売りみたい。あなたはどこへ行ったの?

あなたらしさは?あなたの生きている意味は?

私を死なせたいなら、その手にあるナイフで首を貫きなさい。」

何訳のわからないことを言ってるんだ、と思って、ふと左手を見た。

ナイフを握っている。握ってる感触はなかったが、確かにナイフを握っている。


「この世に生まれた限り、あなたは主人公の一人。

 どんな生活をしようと、ロクな死に方をしないとしても、

 貴方はこの人生を全うしなければならない。

 私はあなたの言うとおりに動くことができる。

 何故なら・・・」

看護婦は自分の米神に人差し指を指し、

「私はあなたの脳であり、体なのだから。」

黒い砂嵐が徐々に解けていき、その顔は自分自身の顔だった。


左手のナイフで白い世界を切り裂いた。

すると、見えてきたのは人生という地獄で悶え苦しむ人間の渦だ。

黒い海の中で、人々は必至で泳ぎ、荒波に押し流され、だが岸へ向かって泳ぎ続ける。

だが岸など無い。皆、目指すモノも無いのに生きようともがいている。


「こんな世界に意味などあるのだろうか?」

自分自身の内から飛び出た言葉だった。苦しむのをわかってて、生きるのは本当に素晴らしいことなのか。

すると、看護婦の顔が変わり、母性に満ち溢れた女性の顔になった。

耳元で囁く言葉は心臓を突き刺す。

「楽園で生きるより、自由に生きることを望んだ、あなた達の姿です。」


そう言えば、知恵の身を食べて、人間は楽園を追い出されたのか。

看護婦の背中から、翼が生え、目から血の涙を流す。泣いている意味は分からなかったが、この看護婦は神様か天使なのかはわかった。俺は聞いてみたんだ。

「あんたを神様だと思って聞いてみるが、こんなどうしようもない人間達でも生きている価値はあるのかい?」と。

そしたら、神様っぽい女はこう言った。

「何を仰いますか。あなた達は神のモノではございません。あなた達のモノです。

 我々の手(楽園)から離れた時から、生きるも死ぬもあなた達のモノなのです。」

「じゃあ、どうする?現世の神様は信仰心も無い奴らを見殺しにするようなもんだ。

 神様ってそういうものなのか?」

「我々がいつ助けるといったのですか?楽園を出た頃からあなた達は見捨てられているのです。」


神様も見放した人類に何が待っているのだろうか。

俺は目が覚めると、いつも考えている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ