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いつもとは違う、最悪の日(3)

だいぶ間開きましてごめんなさい。これから更新しつつ書きだめ出来るよう頑張ろうという意思は無きにしも非ず。 

「なぁ?どんな気持ちだよ、ひっさし振りの再開はァ?」

 口が裂けそうなくらいに口角を上げて、ニヤニヤと嗤う顔は今までにないくらいの嫌悪感と恐怖を私に与えてくる。

 まだ口の中に残っているのを咳で吐き出し、顔を上げたところにまた見せられて、また吐いた。

 朝食の量が少ないから、吐くものなんて残ってなくて、ただの胃液をブチ撒く。喉が痛い。ひりついた痛みが襲ってくるけど、それ以上に。心が痛い。

「返事ィ!」

 糞が叫びながら蹴ってきた。

「ッゴホッ、ゴホ」

 胸を蹴られて息が詰まる。

「ぅぁあぁ……」

「ダッサぁい」

「汚ったないってばァ!」

 緊張感の欠片もない取り巻きたちの声が、今日はやけに耳に響く。イライラする。

「アンタ本ッ当におもしろいなァ!写真見ただけで吐くとか!ウケるしッ!」

 プッ……!と口の中に残った液体を吐いて、睨みつける。

「ォい、ンだヨ?その目はヨォ?」

「…………」

 無言でいたら、朝霞が、

「何とか言えやァ!ォイ!」と叫んで、足元にあったバケツの水をかけてきた。

 濡れる。

 滴る。

 前髪が顔に張り付いたのが気持ち悪くて仕方ないけれど、睨み続ける。途端に怯えたような表情を浮かべて

「ッ!気ッ持ち悪ィなテメェ!」

「何なのォ?」

「ワケ分かんなァい」

 何の因縁があってか、小学校の一年からずっと同じクラスの朝霞。

 もうすぐ三十の半ばを超えるコイツの母親は、いまだに金髪で阿呆みたいな言葉遣いをしていることを。

 四十に近付いてきたコイツの父親が、DVを行っていることを。

 最近できた彼氏が、このあたりで一番の札付きのワルなことを。

 本当は何も面白いと思えなくて、腕に巻いたバンドの下に茶色い傷があることを。

 私は知っている。

「気に入らネェンだよ!テメェの見透かしてるみたいな目がヨォ!」

 また蹴られる。

 取り巻きたちも小突き回してくる。

 でも。

 体が痛みを感じる事に、どれほどの意味があるというのか?

「気持ちわりィンだよォ!手前ェもアイツもよォ!」

 アイツ、と言われて私の身体がピクリ、と反応する。

 それを見て取ったのか、朝霞がいつもの笑みを浮かべ直して言ってくる。

「アイツもさァ、気持ち悪ィンだよ、ずっと笑ってやがるしよォ!」

 頭の奥がスウッ、と冷たくなるような感覚。

「気色悪ィよなァ?いっつも同じ服ばっか着てやがんのもサァ!」

 冷たいままで、衝動が体を突き動かそうとする。

「大体さァ!アイツが居たせいでさァ、すっげえ雰囲気悪くなっしさァ!」

 もう、良いか。

「自殺なんて山奥にでも行ってやれよって話だしナァ?どんだけトラウマだよって感じィ?」


 パァン……


 乾いた音は冷たい階段の踊り場に吸い込まれた。

「うるさい」

「ッッ!」

 ガタガタと騒がしい音を立てながら、蹴る直前で足の上がっていた朝霞が階段を落ちかける。

 私を見つめる目は今までにない程の恐怖と驚愕に彩られていた。

 驚きで動けなくなっている取り巻きたちの脇を通って、階段を下りる。

 見えない位置に来てから一気に走った。背後から叫び声が聞こえたけど、気にしたくなかった。


 教室のドアを勢いよくあけると、ざわついていたのが一瞬にして静まり返る。視線にイライラくる。

 机の横に下げていた鞄を手に取って教室を飛び出た。

 走る。

 廊下を走る。

 階段を走る。

 街中を走る。

 家まで走る。

 無言で叫ぶ。


 最ッ高に気分が良くて。

 最ッ低に気分が悪くて。

 あぁ、

「気持ち悪い……」

 びしょびしょに濡れた服を引き剥がし、ブラもショーツも脱ぎ捨てて、鞄も適当に投げ捨てて、

 ベットに着いたその時に、意識を私は手放した。

ちょっとした転換点ですね、まだ序章だけど。

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