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いつもとは違う、最悪の日(2)

ちょっと短いけど区切りたかったので。

 階段の踊り場で偉そうにした糞女とその取り巻きは、私の事を見ると愉しそうに笑っている。

 糞女が喋り始めた

「昨日さァ、ひっさしぶりにぃ?同じ小学校だったヤツに会ってさぁ、面白いモンもらっちゃったァ。見たいでしょ?見たいわよねぇ?だって…………」

 何を言ったんだろう。

 どことなく他人事のように感じる空間の中で、聞こえた。



                  仲良かったもんなァ?



「……?――!」

「~~!」

 取り巻き共が騒ぎ立てる声もどこか遠くて、目の前の糞のいやらしい笑いがいつもと違って、たまらなく気色悪い。

「何……を言っ「仲良かったよなァ?いっつも一緒にいたもんなァ?ァハハッ!」

 本当に嫌な気分だ。朝よりも。いつもよりも。

「気になるかァ?ほらァ、お願いしろよ」

 こんな糞にお願いなんて反吐が出る。

「まァ、見せるけどネ。ォイ、押さえろ」

「ウィっす」

「はァい」

 取り巻き二人に両脇を固められて動けない私の前に、携帯の画面が差し出された。

「っ!」

 粗い画像だった。最新のスマホで表示するには小さかったのか、引き伸ばされていてお世辞にも綺麗な写真では無かった。

 それでも、十分だった。

 私に衝撃を与えるには。


 白無地のタートルネックシャツにジーパン。

 栄養の足りていない体は、他の人よりも細い。

 茶色の天パ気味の髪は、いつもクシャクシャしていて。

 何かを諦め切った、それ故の澄んだ瞳越しに全てを見つめる。



 そんな彼の、まっかなすがた。

 白いシャツも、うっすら骨の浮いた肌も、茶色の髪も。まっかっか。

 二度と、見たくなかった。


「……ぅぁ」

 糞女と取り巻きたちの笑い声が遠ざかる。

 視界がぐらぐら揺れて、キィィィィンという音が耳の中を支配して。

 

 吐いた。


 ビチャビチャと吐瀉物を無様にブチ撒ける、鼻水も、涙も止まらない。全身からどろりとした液体が流れ出ていくようだった。

「ぅっわ、汚ったねェ……」

「きっもーい」

 取り巻きたちが騒ぐ中、アイツだけは淀んだ目で嗤う。「ヒヒヒ」と。

 気色の悪い笑いを終えた後に、

「どうよ♪?」

 愉しそうに言うのだ。

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