いつもとは違う、最悪の日(1)
間が空きすぎたので予定変更して投稿します
急に意識が覚醒して、瞬時に両目を見開く。
見慣れた天井が、ぐにゃりと捻じ曲がって落ちてくるような錯覚に襲われて、恐怖に体を縮めると今度は、猛烈な吐き気に襲われた。
わずかに体に引っかかっていた布団を払う事すらもどかしく感じる中、両手で口を押さえて洗面所へと駆け込む。
消化しきれていなかった昨日の夕飯を吐き出して、それでも足りなくて何も混ざっていない胃液が口からビチャビチャこぼれる。喉が焼けるようなひりついた感覚に顔を顰めて鏡を見ると、本当にひどい顔だった。
うがいをして口の中を洗い流し、汗で濡れたせいで身体にへばり付いたスウェットを脱いでシャワーを浴びる。
水量を最大にした熱いシャワーが肌を叩く感覚が心地よかった。夢の内容は覚えていないけれど、どんな内容かは容易に想像できた。小学校の記憶。飛び降りた唯一の友人。
「――」
つぶやいた名前はシャワーの音に掻き消された。
今日は普段よりも冷え込んでいて、道ですれ違う人も心なしか厚着だった。
大通りよりも人の少ない路地を使って、近道をする。そうでもしないと、昨日のようにクラスメイトからの『挨拶』を受けるからだ。
幸いにも、朝から薄暗い路地を歩くのは私だけなので、今までも登下校時は割と平和だった。
今日までは。
そう、今日までの中学高校の5年間は住人の主婦らしき人に不審そうな目で見られた事はあっても、何もなかったのだ。
なぜ今になって。
此処にコイツが居るのか。
「オハヨぉ、かァいざぁぁきサァぁぁん?」
現れたのは、昨日もご丁寧にトイレに入っている私に『挨拶』して下さったクソアマだった。
「……」
「シカトしてンじャねぇョ、オイ」
「……おはよう」
「いっつも朝いないかラァ?探シちゃったァ?キャハハッ!アッタシやっさシィィぃ?」
胸の中にどす黒い感情が渦巻くのが分かる。私は今、尋常じゃないくらいムカついている。
「じゃァ、ガッコ行こっかぁ?」
「……」
「返事ぃ?」
「……えぇ」
学校に着いて、下駄箱を開けるとゴミが詰まっていた。
機嫌よく私の前を歩いていた糞は、ニヤニヤしながら靴をはきかえ、
「アぁら、掃除、ガンバってネぇ?」とかほざいて消えた。
溜め息すら出ない。
ゴミにまみれた上履きは、汚れているだけじゃなく濡れてさえいた。いつもより酷い。
職員室で貸してもらったスリッパでパタパタと音を立てて歩く。
教室はいつものように騒がしく、小汚い。
私の机には、落書きと、花のない花瓶、ゴミの山。
椅子の上には、画鋲と、謎のゴシップ紙。
花瓶は教室の後ろの棚に置いて、あとは全部ゴミ箱行き。落書きは消してもキリがない。
着席とほぼ同時に、チャイムが鳴った。やる気のない先生を無視して時間は進む。
昼休みに、糞に呼び出された。
べつに名前を知らないわけではない。朝霞梨沙。
小学校から一緒だった、そしてその当時から糞女だった。
屋上の開かないウチの学校では馬鹿がたむろしやすい階段の踊り場。
いつもの取り巻き二人を従えた糞の女王。




