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ユメ

 そこは小学校の教室だった。

 三十人も居ない小学生すら纏め上げる能力のない無能な担任のクラスだった。

 病的なほど白くて、切れ長の目は何を考えているのか分からない。

 いつも薄ら笑いを浮かべている口元は薄く、横に裂けたように広い。


 そんな先生が喋っている。教室の中では、女子がキャンキャンと騒ぎ、後ろで男子はボールを投げ合っていた。

「……なので。×××君のお父様の告別式にクラスの代表を一人連れて行こうと思っています。誰か、先生と一緒に来てくれる人は居ませんか?」

 呼ばれた名前の彼は、教室の窓側の一番後ろの席から窓の外の曇り空を眺めている。

 もちろん他の生徒たちは耳に届いてすらないし、先生ももう気にしない。

「誰も居ないのか?……仕方ないな、海崎!学級委員長だろう?先生に、付いてきてくれるよな?」

 そして私に視線が向いた。

 ぞわり、と鳥肌が立つ。

 薄く開いた目にはいつも生徒に向ける物とは違うねっとりとした感情が宿っていた。

 嫌な視線が体中を舐め回すように見てくる。

「……はい」


 周囲が暗くなる――


 今度も教室だった。

 寒い季節だというのに窓は全部が開いていて、生徒が全員そちらに集まっている。

「……!降りてきなさい!死にたいのか!」


 騒がしい。


 その理由は知っている。

 これから私がどうやって動くのかも、分かっている。

 窓際の集団の隙間に体を滑り込ませて下を向く。校庭で授業を行っていたらしいジャージ姿の教員が上を向いて怒鳴っていた。

 そして上を向く。

 屋上の柵の外に彼がいる。


 彼は下を向いて私に気づくのだ。そう、今気づいて、手を振ってくる。

 そして私の前に降りてきた、

 頭から。


 目の前を通った時に小声で「ばいばい」と聞こえた、気がする。


 下から何かが潰れたような音と悲鳴が響いた


 悲鳴の中、下を向こうとして。視界が暗くなり――。

 目が覚めた。

次が胸糞悪ぅござる。

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