ばいばい、またね。
何だか、完全に更新が不定期になってしまって申し訳ない。です。
「ばいばい、またね」の言葉と同時に、携帯電話を耳から離して終話ボタンを押す。そのまま適当に床に放った。
幽霊ビルと呼ばれる建物がある。建設計画の杜撰さが露呈して、建設中の状態で放置されたままになっている。張り出されたままの建設予定には十二階建てなんて大仰な数字が踊っているけど、実際はまだ六階建てで、その後も増える気配が無い。
警察官も面倒がるような札付きの溜まり場に生まれ変わったこのビルは、何が起きても通報されそうにない。
大勢の歓声が上がっても。
バイクのエンジン音が鳴り響いても。
喧嘩が起きても。
もちろん、女の悲鳴が聞こえても。
着ていた服はズタズタに裂けていて見る影もなかったし、下着はどこに行ったのか見当たらない。
床の染みが、吐瀉物か血か、汚れた体液なのか、それすら分からない暗さの中で汚れのましな一角に座り込んだ私がいる。
寒いし、痛い。何人居たのかも分からないし、何回シたのかも覚えていない。分かるのは、体中に痣が出来て、体中が汚濁にまみれていて、骨も何本か折れているという事。歯も二本ほど折れていた。股から白に混ざって赤色が滴っていた。左目の周りが腫れて目が開かなかった。
そんな事だけ。
まだ子供の時、親戚に犯されていた時の方が良かった。
あの男は、愛していると言うだけあって痛くないようにシようとしていた。
そんなことが今わかるくらいに、痛かった。
痛くすることを、泣かせることを、嫌な顔をさせることを、無理な体位でヤることを、よがらせるのではなくわめかせることを、偉いと思っているのだ。
こんなもんか。そう思っている自分がいる。
もういいや、疲れたし。
生きていてまでしたい事も無い。
むしろ生きていることのデメリットが上回ったと言っても良い。
こんなんで妊娠しましたなんて、笑えない。
家に言ったら、堕胎は出来る。どうせ金は余るほど持ってるはず。
でも、あんな家に頼りたくはない。
父親が自殺した原因が本家にあるのはもう知っている。
何も知らないで居られる子供の期間はもう終わっているのだ。
六階建てと聞くと大した事なさそうなのに、いざ立ってみると存外高いものだった。
別に怖気づくわけではない。むしろ安心だ、失敗して病院に入ったりしたらどんな嫌味を言われるか分かったものじゃない。
耳元を大きな音を立てながら風が通り過ぎて行く。汚れた髪の毛が体にべっとりと張り付き、気持ち悪い、そして寒い。残骸とはいえ服を着ればよかったかなと思いつつ、どうせ死ぬのだから変わらないとも理解している。
あとは簡単だった。
ちょっと足を踏み出すだけ。それだけで、体が宙に舞う。
最後まで目は開けておいた。
ちょうど通りかかったトラックの運転手と目が合った気がした。
やっと序章部分が終了しました。次回からが本編だと思っていただいても結構です。これからも頑張りますので、生暖かい目で見守ってください。




