序
…気づいたら、この闇の中にいた
いつからここにいるのか、ついでに自分が誰なのかすら思い出せない
何も感じない
何も聞こえない
まるで、身体など存在していないような感覚
あれから、どれくらいの時間が流れたのだろうか
辺りを見回しても、闇しかないこの空間では時間など分かるはずがない
不意に
目の前が、仄かに明るくなった
明るくなったと言っても、まるで蝋燭のようなか細い光だ
「えーっと…どこにあったかなぁ?」
不意に、誰かの声が聞こえた
まだ、声変わり前の少年のような声
「ああ、あった。や、起きているかい?」
…誰に話かけているのだろうか
「君に決まってるでしょ?まだ寝惚けてるの?」
自分の視界に、灰色のローブを纏った人物が現れた
頭は深くローブの帽子を被っている為、口元しか見えない
自分に?話かけているのか?
「そうだよ。しっかりしてよね、もう」
お前は誰だ?ここはどこなんだ?自分のことを知っているのか?
矢継ぎ早に質問すると、そいつははぁ、とため息をついた
「そんなに一気に質問しないでよ。僕はジィヴァルデと呼ばれるモノ。呼ぶ時はヴァを強く発音してねー」
…そんな注釈いらないし、聞いてなどいないんだが
「まぁまぁ、そんなこと言わずにさ。さて、君にはこれからある世界に行ってもらう。何をすればいいかは、自ずと分かるはずさ。質問は一切受け付けない」
そいつが、そう言うのと同時に自分の意識は遠退いていった
薄れゆく意識の中で思ったのは
色々と強引過ぎやしないか?
ということだった