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国語の時間

作者: 福星由雨

 学校の偏差値なんて当てにならない。


 それを新任教師として、初めての授業で知る。


 私が赴任した高校の偏差値は決して、悪くない。だが上には上がいて、皆が皆、国立大学を狙っているようなまじめな生徒にあふれていると、理想の様な固定観念があった訳でもない。


 だが、私の授業になった瞬間、ゆっくり自己紹介やちょっとした冗談も言う暇なく、全員が机に伏せたり、スマートフォンを弄るとはどういう事だ。


「お、おい。みんな……まじめに授業を受けろ……」


 茫然とした心情が見事に露わになって、つい弱弱しくて今にも風が吹いて消えそうな儚い声になる。

 だが、誰も反応しない。


 確かに国語の授業は眠くなる。面倒だとも思う。解らない事も無い。


 後で誰かにノートを映してもらうなりすればいいだろう。クラス全体がこんな風でも、隣はマシかもしれない。 


 しかしだ。


 ここまであからさまなのは、新任教師だからって私を馬鹿にしているとしか思えない。だから私は教卓の前の席だと言うのに、当然と言わんばかりにスマートフォンを出女子生徒を見せしめとしてやろうと思ったが、自分がここに赴任した理由が脳裏によぎった。


 私の前の国語教師は、現代国語の授業、しかも睡眠欲が最もピークになる七限目の授業、その時に偶々目の前にいた居眠り中の女子生徒をちょっと乱暴に起こした時、たまたま母親がPTAの役員だったとかで、変ないちゃもんをつけられ学校を追い出されたらしい。


 思わず身震いをすると、それを生徒の誰かが笑った。


 勿論、誰か解らない程度の声だった。


 くっそ!


 私は心の中で、憤慨の思いを露わにした。


 その日を境に、私の授業は睡眠かスマートフォンを弄る時間になった。黒板に何を書こうと、生徒は微塵にも反応をよこさない。


 ただ遠回りに注意を施し、そして無視されるだけだった。


 いい加減、この状況を打破したい。だがそんな都合の良い解決策があるのだろうか。悩みに悩み、そして私はひらめいた。






 学校の偏差値なんて当てにならない。


 それを転校生として、初めての授業で知る。


 僕が転校してきた高校の偏差値は比較的、良くない。いや、下には下がいるのであまり卑下することはできないが、それでも全員が一致団結で国立大学を目指すような所ではない。


 だが、国語の時間――しかも理系クラスで殆どが国立を目指さないと言っていたこのクラスの人たちが必死に国語の授業を受けている姿は、面を食らった。


 そう言えばこの教師がこの学校に赴任してきて、すぐ後に起きたニュースが脳裏によぎる。偶々目の前にいた居眠り中の女子生徒をちょっと乱暴に起こした時、女子生徒が教師をシャーペンで刺したらしい。


 その時、運が悪く出血沙汰にもなって、大問題となったとか。

 特に女子生徒は母親がPTAの役員で威張っていたからか、クラスでも結構な嫌われ者。って言うのもあって彼女を支援する証言も無く、彼女は謹慎処分となった。


 その事件は教師によって仕組まれたという説もあるが、なんせその時ほとんどの生徒が寝ているか、スマートフォンを弄っているかで見ていなかったとか……

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