選択
マサトと特訓を続け、いつの間にか凛花さんが言った二週間が経った。
そして今、この凰林高校の生徒会室にいる。
「ミカ、前に言った通り今日はドラゴンスレイヤーを出してもらうわよ」
「はい、分かりました」
そう言って私は手を胸の近くで握り、目をつぶってドラゴンスレイヤーを出すように願った。
するとまたあの何かが私の中から溢れ出すような感覚な感じがした。
そっと目を開けると。
「ドラゴンスレイヤー」
そこには2メートルを超える黒い大剣があった。その剣こそ私の武器、ドラゴンスレイヤーだ。
ドラゴンスレイヤーはまだ空中に浮いている。また私が触ると重くなるんだろうな・・・。
「よし、それじゃあ持ってみなさい」
「えっでも凛花さん、どうせ重くて持てませんよ?」
「いいから持ってみなさい、もうあなたの魔力は十分だと思うの、私の予測が正しければ今度は持てるはずよ」
そう言われ、私は剣をそっと握った。
すると剣はさっきよりももっと黒くなり、光沢を出している。
何よりも、持った時に自分の体の一部となったような、でもしっかりと重量はあり、何とも言えない不思議な感覚に襲われた。
「どう持ってみた感覚は?」
「どう言えばいいのかわかりませんが、何か、こう、不思議な感覚です、まるで自分の体の一部になったような感じです」
「そう、私も武器を出すときはそんな感じかな」
「あのぉ凛花さん」
「何?」
「どうやって武器を消せるのですか?」
そう、こんな大きな剣を持ったままみんなと話すともまるで襲っているようになってしまう。
「自分の頭で命令すれば大丈夫よ」
そう言われ、頭の中で命令をする。
するとドラゴンスレイヤーは黒い粒子のようになって消えていった。
その時、また凛花さんの携帯が鳴った。また千香さんからかな?
凛花さんが手を広げる。すると白くて長い髪の毛で凛とした顔立ちの女の子が出ていた。その人こそこの学校の周りを見張っている千香さんだ。
「どうしたの?」
「実は天使たちがデーラル家を襲っています」
「デーラル家?あの軍隊の数が一番多い?」
「はい、そしてここが一番問題なのですが、天使たちの方が優勢なのです」
「そんなことが!」
凛花さんたちのやり取りを聞いて私も少し考えたが、天使たちのリーダーはあの大天使ミカエルではないだろうか?
「凛花さん、デーラル家を助けに行くのかどうか、ご選択を」
少し沈黙が走る。そして凛花さんはそっと顔を上げて。
「わかったわ、助けに行きましょう。いくら敵対しているからって悪魔同士なのだから」
そう言ったあと凛花さんは指を鳴らした。
すると床が黒くなっていき、その黒い部分から一つの扉がゆっくりと出てきた。
凛花さんはスカートのポケットに手を入れ、鍵を取り出した。まるで前にマサトがやったのと同じように。
そして鍵穴に差し込み、鍵を開けた。
扉はゆっくりと開いた。扉の中は黒い渦のようなものがあった。
「さぁ行くわよ!」
そう言って凛花さんは扉の中に入って行った。次々とみんなも入っていく。
私も勢いよく扉の中に入っていった。
扉を抜けると眩しい光が照らしていた。
「!?」
よく見るとどこかのお城のようなところだが、ボロボロだった。
「凛花さん、ここどこですか?」
「ここはデーラル家の屋敷よ。天使の襲撃を受けてこうなってしまったのね。でも本当に軍隊の一番多いデーラル家がなんで?」
「や、やめてくれー!」
突然、屋敷の奥のほうで叫び声が聞こえてきた。
「凛花さん!今のって!?」
「行きましょう!」
そう言って凛花さんが急いで走っていく。私も遅れないように必死に走る。
声が聞こえてきた方の扉を開ける。するとそこには一人の男が一人の天使に光の槍を向けられていた。
一番驚いたのは私たちはその天使はよく知っていたのだ。
長いサラサラした金髪に、鎧を纏っている。
「ミ、ミカエル!」
私が思わず叫ぶと、気付いたのかこちらを見てきた。
「あら、これはこれはリーザン家の方々ではないですかー。今いいところなので邪魔しないでくださいね」
そう言ってまた槍を向けている男の方を見る。
「さぁ終わりにしましょう。デーラル家もこれで終わりですね」
「や、やめてくれ!あっそこにいるリーザン家の者たち!助けてくれ!いくらでも金は出す!だから早くグワァ!」
叫んでいた男の腹部に槍が刺さる。
「うるさいですねぇ、今からあなたは殺されるんですよ?この私に」
「凛花さん!助けないんですか!?」
だが凛花さんは首を横に振る。
「聞いたでしょミカ、あの男はなんでも金の力で動かそうとしているのよ。デーラル家の軍隊のほとんどは金でやとっているの。だからちょっとでも襲撃を受けたら、乱れてしまってこの様よ」
凛花さんがそう言っている間もミカエルは槍をぐいぐい押している。
「さぁさようならデーラル家のみなさん、さようなら」
そう言ってミカエルは一度槍を抜き取ると、勢いよく頭部を刺した。
飛び散る真っ赤な血。男は一瞬で息の根を止めた。
私が硬直していると、マサトが手で私の目を塞いだ。
「今のミカはあまり見ないほうがいい」
気がつくと私の足や手は小刻みに震えていた。
「さぁみんな帰るわよ」
そう言ってまた凛花さんはまた扉を出した。そして同じように鍵を開け、入って行った。
私もマサトと一緒に入って行った。入るとまた生徒会室に戻っていた。
安心したのか体に疲れが襲う。
「ミカ、少し横になるといいよ」
そう言ってマサがやさしく声をかけてくれた。
「うん、わかった」
そうして私はソファーに横になった。
すると徐々に視界が真っ暗になっていった。