本屋
電車のスピードが落ちてゆき、停車駅に入る。電車内のアナウンスが車内に響く。左側の扉が開いて、公稀含む数人が駅のホームを踏む。都市部の駅の方に向かう人が多いのか乗る人数の方がかなり多い。
改札口に定期券をかざして通り抜ける。街の景色を見ると、予想とは違ったが、けっこうにぎわっている様子で、お店なども多く、高い建物も田舎出身の公稀には大都会と思えるほどであった。
桜子にあらかじめもらっていた手書きの地図をズボンのポケットから取り出した。桜子がとっさに書いたものだったので少し見づらいが、お店のマークなどを書いていてくれたりと、桜子の小さな優しさを頼りに公稀は周りを見ながら歩いていると少しずつ位置がつかめてきた。
信号が青に変わって、横断歩道を渡って駅とは向かい側の道を進む。
(駅の近くらしいけど……)
適当に書かれた地図と周りの見慣れない景色に視線を交互に見ながら探す。角を曲がって、T字路の道路がある場所に来た。
「……あれかな?」
進行方向の前方に二階建ての一軒の店がある。左側に二階へ続く白い階段があり、花飾りも付けられていて、二階のバルコニーのところに大きく黄色い看板が設置されている。
信号が青になったら、道路にある白く太い横線を踏みながら横断をする。黒っぽいアスファルトに落ちたらダメと小学生並みのルールを考えて大股で渡る。
店の前に来て公稀は緊張していた。お店の中は本屋のようだ。ただの本屋ではなく、中学生や高校生に読みやすいライトノベルなどがたくさん置いてあるらしい。店の前の看板やガラスにもポスターがたくさん貼られている。見たことのないアニメのキャラや声優のもの、アニメのガチャまで設置されていて、こういうものが趣味な人にはとても天国のような世界だろう。だが、一階しかこのコーナーは無く、二階は喫茶店のようだ。天国を求めるならほとんどの人はもっと大きなお店へと足を運ぶのだろう。と思ったが、いざお店に入ってみると、たくさんの人々で溢れ返っていた。
本棚がたくさんあって、通路がとてもせまい。たくさんの人がいるため全く進めない。
「これじゃ先輩を見つけれないな」
人をかき分けてもあまり進めない。数人店員が品物の整理などをしているが、桜子の姿が現れることはない。カウンターの方を見ても、男性の店員と女性が数名いるだけだ。
見回ってみると、本棚の側面に何枚か張り紙があった。特に公稀には興味は無い内容だったが、視界に入った時、一枚の紙に目がいった。
「アルバイト募集の紙だ」
すぐに近寄ってその紙を見てみると、募集の規定に一六歳以上と書かれていた。桜子の年齢は一七か一六だろうが、募集の紙の下の方には高校生・学生不可と書かれていた。
「どういうことなんだ……?」
桜子が書いた地図を右手に持って、店を出ようとする。何回も押されたりして、なかなか出られなかった。数分かけてやっと外に出た。
「ここで合ってるはずだけど……」
地図を見ても、道の形や位置は合っているはずだ。
ここが違うならどこがあるのだろうと、公稀は辺りを見回しながら、もと来た道を行こうとした。信号は赤。信号待ちで人だかりになっている後ろの方に公稀は立つ。
後ろにはさっき入った店がある。二階建ての。
「もしかして、」
公稀は踵を返すと、お店の横にある階段を上る。




