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[壱] 頑固一徹 の 1。
夜。
今宵は満月。
月夜の中、桜がほわりと浮いている。
その桜の陰にもまた桜。
そのまた後ろにもまたまた桜。
月の光の中、桜は延々と続いている。
幻想的な桜の白いトンネル、その下を、二つの小さな影がくぐっていく。
「アキラ(あきら)・・・やっぱり、危ないんじゃないかな?」
歩いている2人のうち、ふわふわ頭の方が気弱な声を出す。
それを、もう1人のツンツン頭の方が睨む。
「なんだよ久谷ぃ〜。いまさらびびってんのかよ。
行こうと云ったのはお前じゃないか」
「だって、」
ふわふわ頭の久谷は、うるうる視線を向ける。
「やっぱり、夜の学校は怖いよ。あんな噂もあるし・・・」
「その噂を確かめようと云ったのもお前だろ」
ツンツン頭のアキラがつんけん云い返す。
「だって、アキラがみんなに向かって『そんなの絶対嘘だ!』って云いはるだもん」
「だってもくそもない!」
アキラは吐き捨てるように云った。
「『人を食う学校』なんて信じられるか!」