反抗期ブラザーズ
部活の時間。
今日は4時間だったため、いつもより長めの部活だった。
野球部一同は、新入部員と共に部活に励んでいた。
そして、キャッチボールをしていた。
「高野!内海の投げ方すんなや!」
いつものように、大神がつっこむ。
「大神!内海かっ!」
そして大神が真似する。
高野たちは、バカやっていた。
そして、ハーフバッティング。
これは、ひたすら打つ練習だ。
「ヤング、校舎こえてや。」
「えー。無理やって。」
ヤングは、自信なさげだ。
正直、ヤングの力はK中1だ。
なのに、表にださない。
いわゆる、臆病な狼だ。
「ヤングならいけるって。」
「そうだ。バレンティーの打ち方を真似しろ。」
ヤングはバレンティーになった。
そして、叫んだ。
「バレンティーン!」
野球部は盛り上がる。
「バレンティーン!」
「バレンティーン!」
バレンティーコールだ。
そして、ピッチャーが投げた。
ヤングはフルスイング。
カキーン!
おーーーーー!!!
その打球は、校舎をこえた。
そして、みんなの驚きの声が聞こえる。
その声も、魔のような声に変わっていく。
パリーン!
あきらかにガラスが割れる音だ。
「やっべ。」
野球部一同は、音のしたほうに向かう。
そこには、ガラスの破片。
割れた窓があった。
校舎の窓を割ってしまったのだ。
高野は、ヤングの顔を見た。
ヤングの顔は死んでいる。
ヤングは動揺の塊になっていた。
薄暗い部屋。
窓を割ったヤングとキャプテン松本、副キャプテンの高野が指導室で下を向いていた。
「4月いっぱい部活停止。」
腕を組んで、生徒指導の久保が言った。
「ちょい、まってや。部活停止はちょっと・・・」
高野が言った。
「今回ばかりは、こういう事になろう。今まで、何かと目をつぶっていたけどな。」
「ちょっと、俺達が今まで悪い事した、みたいな口調じゃないっすか。」
龍一が言った。
「いっぱいしたわ。夏にホースで水遊びして車にかかったり、通りすがりの人に暴言をはいたり、
山ほどあるぞ。」
3人は黙り込んだ。
「なにより、お前らは部活に真剣に取り組んでないだろ。」
「・・・」
「友達にボール一斉に投げたり、奇声を発したり、地域からの苦情も多いんだぞ。」
久保は言った。
5秒くらい沈黙が続き、龍一が切り出した。
「いや、でも、勘弁してくださいよ。次からは気よつけるんで。」
「本当か?」
「うい。」
「じゃあ、やる気をみせてもらおう。」
「は?」
高野が言った。
「明日、生徒会と勝負してもらおう。勝ったら、目をつぶってやる。」
久保が言った。
「勝負って、何の?」
高野が聞いた。
「それは、明日伝える。」
久保が立ち上がって部屋から出た。
高野は、何のことか分からないが、勝負ということで燃えてきた。
野球部一同12人は、体育館に入った。
そこには、久保と2人の男がいた。
「約束通り、来たな。」
高野が男達を見て言った。
「田窪と松茂じゃん!」
田窪が手をあげて言った。
「よっ」
久保が咳払いをすると、あたりは静まった。
「じゃあ、勝負の内容を言うぞ。」
高野は、エキサイティングだった。
「学校警ドロだ。」
「は?」
「警ドロ?」
意味が分からなかった。
「ルールは簡単だ。学校の敷地内で警ドロをしてもらう。1時間で生徒会がお前ら全員を
捕まえたら勝ち、逃げ切ったらお前らの勝ちだ。」
めちゃくちゃだ。
学校で警ドロだって?
「ちょっとまてよ。そんなのそんな事やっていいのかよ。」
高野が聞いた。
「校長から、許可は得ている。」
久保が答えた。
「条件は分かったが、俺ら12人相手に生徒会2人とは、ナメられたものだな。」
K中の不良、中橋が言った。
「ナメているつもりはない。助っ人をよんできた。」
松茂が言った。
「助っ人?」
そういうと、体育館に5人の男が入ってきた。
「・・・こいつら・・・。」
「足速いやつばかりじゃねぇか。」
龍一が言った。
そして、松茂が6人の先頭に立って言う。
「この8人がK中最強チーム。チーム”セント会”だ。」
「・・・」
「8人?1人足りねえぞ。」
「用事があって、途中で来る。その時は、放送で知らせるからな。」
松茂が言った。
「いいのか、8人で。後悔するぞ。」
中橋が、指をならしながら言った。
「ちょうどいいだろ?」
松茂が言った。
そして、久保が咳き込む。
「そろそろいいか?」
全員が黙り込んだ。
「じゃ、ルールを説明する。制限時間は1時間。範囲は、K中の校舎内。ただし、教室とかに
入るのは禁止。はいっていいのは、体育館だけ。勝敗条件は、もういいな。刑務所は、この
ラインの中だ。」
久保が床を指さした。
「捕まったらここに来る。脱獄は無し。ドロは、刑務所内のドロにタッチしたら生き返れる。
以上。何か質問は?」
あたりは静か。
「よし、じゃ、早速始めよう。ホイッスルと同時に、スタート。警は、1分間待機だ。その間
に逃げろ。」
野球部が構える。
久保が笛に口をつける。
息を吸い込んで・・・
ピィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!
野球部は、一斉に走り出した。
それぞれ、他方向に別れる。
東校舎、南校舎、道場など、バラバラに別れた。
そして、1分が過ぎた。
ここ、東校舎2階には、2つの影。
高野と大神だ。
「こういうのはなぁ。隠れてちゃいけねぇ。先に敵を見つけなきゃいけねぇんだよ。」
「隠れてちゃ、逃げられないからな。」
そう言って、大神は、体育館のある方を見た。
「おい。もう1分たったそうだぞ。敵が来てる。」
大神が言った。
「階段をうまく使って逃げるぞ。」
そういって、階段を見ると、2人の男がやってきた。
「うわっ!来た!」
高野と大神が走る。
2人の男、A、Bも走る。
「速ぇ!」
高野が言った。
すると、大神は、中央階段をおりた。
高野は、そのまままっすぐ走る。
Aは階段を下り、Bは高野を追う。
階段を下りたAは、足を止める。
どうやら、大神はまいたようだ。
大神の事を気にせず、Aは西へ走った。
高野は、まっすぐ走り、西の階段を下りる。
Bは、それを追う。
高野が階段をおりると、そこには、Aが待ち伏せていた。
高野が引き返す。
上には、Bがいた。
はさまれた。
「まじかよ。ちくしょう。」
高野、逮捕。
高野が捕まり、Aが体育館へと連れて行った。
体育館にはいると、刑務所の中に1人の男がいた。
「東山、お前もつかまった?」
「うん。」
「速っ。」
「こいつら、走るの速すぎやろ。」
「いや、俺は、挟み撃ちで捕まった。」
「・・・」
「・・・」
東校舎3階。
ここに、2人の野球部がいた。
「うわっ!警察いるじゃん。」
闇内と岡本だった。
闇内の目には、1人の男が映っていた。
「あいつ、誰?」
「あいつは・・・Cよ。体力めっちゃあるやつ。」
「そうかぁ。俺、体力だけには、自信があるんだよ。」
「おれも、ちょっとだけ。」
「よし、逃げて別れるぞ。追いかけられた方は、ドンマイということで。」
「オッケー。」
そういって、闇内と岡本は、一斉に走り出した。
Cは、2人を見つけて追う。
2人は、階段を下りる。
Cも下りる。
「おれが右いくから、冬樹、左ね。」
「オッケー」
闇内が右へ、岡本が左に行った。
Cは、右に曲がった。
「こっちかい!」
闇内は、東階段まで走り、3階に上がり、西階段まで走って、2階に下りる。
これを繰り返していた。
Cもそれについてきている。
その繰り返しは、20分も続いた。
さすがに闇内とCにも限界が近づいてきた。
先に倒れたのは、闇内だった。
闇内は、床に寝転がってハァハァ言っている。
Cが追いついて、闇内にタッチする。
その後、闇内の隣に倒れこんだ。
2人とも、言葉が出ず、ただ息を整えていた。
警ドロが始まって30分。
闇内が体育館につれていかれると、そこには大勢の野球部がいた。
「めっちゃ、捕まってるじゃん。」
その中の1人の高野が口を開いた。
「健人も捕まったか。」
闇内が逮捕された人を見る。
逮捕者は、高野、東山、闇内、川本、岡本、大神だった。
生き残っているのは、松本、木野上、鶴田、矢代、中橋、釜田だった。
その中の1人、釜田が今、道場付近で追いかけられていた。
「コンクリートだったら、負けないぜ!」
そういって、釜田は警に俊足を見せる。
速い。
警も追いつかない。
だが、釜田の動きが止まった。
釜田は、デコをおさえてうめきこんでいる。
「どうした?」
警のDが聞いた。
それに釜田が答える。
「ここ、手術した所なんだよ。」
釜田が痛そうな顔で言った。
「まぁ、タッチ。」
Dの手が釜田の肩にふれた。
体育館入り口。
ここにも、2人の野球部がいた。
龍一と木野上だ。
「見ろ。見張りが1人しかいない。」
龍一が小声で言った。
「俺が、おとりになるから、その隙に敦也が。」
「わかった。」
木野上がうなづくと、龍一は刑務所へと走った。
見張りのEが龍一に気づき、龍一を追う。
「龍一ー」
高野が叫ぶ。
そして、Eが刑務所を離れたその瞬間、木野上が飛び出した。
Eが木野上に気づいた。
「しまった!」
木野上が笑って刑務所に近づくと、川本が何か言っている。
「敦也!後ろ!後ろ!」
木野上が振り向いた。
そこには、Dの姿が。
釜田の連行中に偶然、出くわしたのだ。
Dが木野上にタッチする。
「くっそー」
木野上が言った。
龍一が追いかけられながら、驚きの表情をする。
龍一は、木野上逮捕という動揺を隠し切れず、Eに捕まった。
「あぁぁー!」
龍一が叫んだ。
残り3人。
残り20分。
あと3人。
「やばいな。このままだと、部活停止だ。」
龍一が言った。
「圭介に助けてもらうしかないな。」
高野が言った。
その圭介は今、東校舎で追いかけられていた。
だが、速い。
ブッチギリで逃げ切っていた。
体育館前。
刑務所をチラチラと覗き込んでいる1人の男がいた。
ヤングだった。
(こうなったのは、俺のせいだ。俺でケリをつけてやる。)
ヤングは、唾液を一飲みし、隙を見て走り出した。
だが、すぐEとDに気づかれた。
ヤングは、2人に追いかけられた。
すぐさま、ヤングは引き返した。
EとDは、追いかける。
ヤングが逃げる。
その時、体育館中に・・・
ドン!
という音が鳴り響いた。
なんと、中橋が降ってきた。
EとDの目が見開いている。
「2階から・・・」
「信也ー!」
中橋が刑務所に走る。
中橋の手と高野の手が合わさる。
それから、全員へとタッチした。
野球部一同は、EとDをよけながら逃げる。
全員脱獄成功。
「くっ、俺としたことが・・・」
EとDが倒れこむ。
脱獄を成功した高野と中橋は、道場裏で喜びを分かち合っていた。
「ナイス!信也!」
「・・・足、痛ぇ。」
高野と中橋は爆笑した。
そのころ、体育館に1人の男がやってきた。
「おいおい、どういう状況だ。これ?」
そこに立っていたのは、天然パーマで坊主の男だった。
「見てのとおり、振り出しに戻っちまった。」
Dが答えた。
「後15分しかねぇじゃねぇか。ま、いけるか。」
その男は、体育館を去った。
Eが口を開いた。
「頼むぜ。久保田・・・」
ピーンポーンパーンポーン!
「野球部にお知らせがある。セント会に乱入者が現れた。繰り返す。乱入者が現れた。」
ピーンポーン!
K中学校中に久保の声が響き渡った。
「乱入者?」
「誰だ?一体。」
道場裏で、高野と中橋が話していた。
その途端、道場前に乱入者が現れた。
高野が気づく。
「久保田ー!」
「久保田?」
久保田は、高野たちのほうへ走る。
速い。
かなりの速さだ。
さすが50m走、6秒5の男だ。
「速ぇ!」
高野たちが逃げる。
高野と中橋は、二手に別れた。
久保田は、中橋についていった。
中橋も速い。
野球部で2番目に速い男だ。
中橋が直線を突っ走る。
だが久保田は、それ以上の速さだ。
そしてとうとう、中橋は捕まった。
「くっそー!」
「信也、速いな。ハァハァ。」
中橋がニコリと笑って言った。
「圭介は、もっと速いぞ。」
「圭介か・・・」
久保田は、再び歩き出した。
一方高野は、中橋と別れ、Cに追いかけられていた。
高野が走った先には、田窪がいた。
「止まれ!もう逃げられないぞ!」
高野はその言葉を無視し、走った勢いのまま跳んだ。
「うらぁぁぁぁぁ!」
高野は、田窪にドロップキックをかました。
田窪の腹に高野の両足がめりこむ。
「痛っ!ゲホッ!ゲホッ!」
だが、まだ後ろからCが迫りきている。
高野は田窪と共に倒れている。
その瞬間、前方から1人の男がやってきた。
その男は、走った勢いでCの首に腕を絡ませ、転倒さした。
「健人・・・」
Cは、ゲホゲホ言っている。
闇内は、お構いなしでCにテキサスクローバーホールドをきめた。
「あぃててててって!」
Cがうめいている。
だが、闇内はやめない。
一方高野は、起き上がった田窪の横腹にミドルキック。
「痛っ!やめろや!」
田窪がキレタ。
すると、高野はビンタした。
「痛っ!」
高野は鬼だ。
高野と闇内は、2人を運動場倉庫へと連れて行った。
闇内がカギを盗んできて、2人を倉庫に閉じ込めた。
倉庫は、中から開けられない仕組みになっている。
高野は、闇内に向かって言った。
「この調子で、セント会潰すか。」
高野は、鬼だった。
「お。大神。龍一も。」
「高野。それに健人。」
「俺ら、セント会の奴らとっ捕まえて倉庫に閉じ込めようと思うんだが、どうだ、お前らもやらねえか?」
大神と龍一が顔を見合わせた。
「なんか、よくわかんねえが・・・付き合うよ。」
大神が言った。
「そう言ってるうちに、早速きたぜ。」
闇内が言った。
向こうからAとBが走ってきている。
「いくぞ、健人!」
「おう!」
高野と闇内は、2人へ向かっていった。
高野は、Aに前蹴り、闇内は、Bの首に腕を絡ませ転倒さした。
「うわっ!」
「何すんだ!」
「大神!龍一!やれ!」
2人は、なにがなんだか分からないが、高野たちのいる方へ走った。
龍一がAを押さえつけ、大神はBを押さえつけた。
そしてそのまま、体育館倉庫へと連れて行った。
倉庫を開けたとき、田窪が出ようとしたが、高野がぶっとばした。
「田窪とCじゃん。」
龍一が言った。
「まぁ、こういうことだ。」
高野が言った。
ふと、闇内が道場の方へ目を向けて言った。
「あいつら・・・DとEじゃねえか?」
高野たちも道場の方を見た。
「本当だ。それに・・・東山が追いかけられているぞ。」
高野の言うとおり、東山が2人に追いかけられていた。
「ああ、捕まった。」
「めっちゃ、悔しそうな顔してんじゃん。」
東山は、目をつむり、口を開けて上を向いていた。
「よし、行くか!」
「おうよ!」
4人は道場へと走った。
足音に気が付いたDたちがふりむいた。
ふりむくと同時に、4人に押さえつけられた。
「痛っ!」
「なにすんだ!お前ら!」
そして2人を体育館倉庫へと閉じ込めた。
「後は松茂と久保田か・・・」
残り10分。
2人を倉庫に閉じ込めたところで、向こうから2人の男が走ってきた。
「おーい。高野ー。」
ヤングと木野上だった。
「ヤング、敦也。」
高野達とヤング達は、合流した。
「全部見てたぞ。セント会のやつらとっ捕まえてるんだろ?」
ヤングが倉庫を指指していった。
「おう、普通に警ドロやるなんて、俺らのスタイルじゃないだろ?」
高野がにやけて言った。
「そういう事なら、俺らも付き合うぜ。」
「おう。」
そして高野達は、校舎に向かって歩き始めた。
東山は、おいていかれた。
東校舎。
ここに、K中の俊足ナンバー1と2がいた。
「久保田・・・」
「鶴田、俺も足さえ長けりゃ負けないぜ。」
久保田が言った。
「じゃぁ、俺には勝てねえよ。」
そういって、鶴田が走った。
久保田がそれを追いかける。
2人は、俊足の世界へと入っていった。
南校舎。
「あ。松茂や。」
松本が言った。
松茂が気づいた。
「おいおい。どうした?こんなに大勢で。」
松茂が言った。
「残ってんのは、あんたと久保田だけだ。」
高野が言った。
「は?何のことだ?」
松茂が言った。
「つべこべ言ってねえで、さっさとくたばれ!」
闇内が襲いかかった。
闇内は、いつもの首に腕を絡ませてこかす技をした。
だが、松茂はたおれない。
「痛ぇじゃねえか。」
松茂は、闇内に肩パンをした。
「痛っ!」
闇内が倒れた。
「健人!」
高野がよりそった。
「なんだか分からないが、やられるわけにはいかないな。」
松茂が指の骨をならしながら言った。
「くっ、強ぇ。」
その時、1人の男が前に出た。
「俺がやってやるよ。」
「ヤング・・・」
その男は、K中の臆病な狼、ヤングだった。
「ヤング、気をつけろ。松茂はSKPを使ってくるぞ。」
大神が言った。
「SKP、”セント君パワー”だ。おそらく、健人もこれでやられた。」
「よく、知ってるな。」
松茂が言った。
「そう。SKPは松茂家に伝わる武術。健人にやったのは、SSP、”セントショルダーパンチ”だ。」
「そんな事、どうでもいいからよぉ。さっさとやろうぜ。」
ヤングが構えた。
松茂も構える。
松茂が先に動いた。
SSPだ。
松茂は、SSPを使ってきた。
ヤングはそれをかわす。
「おぉ!」
「さすがボクシングやってただけのことはあるな。」
高野が言った。
ヤングは、すかさず松茂の胸にパンチを決めた。
「ぐぉ。」
ヤングがもう1発、肩パンをしようとすると、それを止められ、足を蹴られた。
「SRC”セントローキック”だ!」
松茂が言った。
続いてSSP。
だがヤングは、その前に腹にパンチを決めていた。
「ぐはっ。」
松茂が倒れた。
「今だ!」
高野の号令で全員が松茂に襲いかかる。
そして見事、松茂を捕獲する事に成功したのだ。
5人がかりで松茂を倉庫に連れて行った。
あとは、久保田だけだ。
その久保田は、東校舎を走っていた。
その前には、鶴田が走っていた。
お互い風のような走りだった。
だが、その走りにも限界がやってきた。
2人のスピードがおちている。
「さっさとくたばれや!」
鶴田が叫んだ。
久保田は、声を出す事すらできない。
そして、とうとう久保田が倒れた。
それと同時に鶴田の足が止まった。
鶴田も倒れた。
そこに偶然居合わせた高野達が2人に気づいた。
「よっしゃぁー!」
龍一が叫んだ。
そして走る。
久保田のもとへ走る。
そして龍一は、久保田に十字固めをする。
久保田は、もう死にそうだった。
龍一は鬼だった。
「おい、龍一・・・」
高野が言った。
「お前・・・鬼かっ!」
龍一は、さすがに久保田から離れた。
そして、龍一は、久保田を倉庫へと連れて行った。
ピーーーーーー!!!
いい具合にホイッスルが鳴った。
高野達が叫んだ。
「よっしゃ!勝った!」
そういって、高野達は体育館へと戻った。
そこには、釜田、川本、中橋、岡本と、教師の久保がいた。
「ん?セント会のやつらが見えんな。」
久保が言った。
すると、高野が久保のもとへ行き、あるものを差し出した。
倉庫のカギだった。
「これが、おれらのやる気だ。」
高野が言った。
「は?」
久保は呆然としている。
「みんな、帰ろうぜ。」
「おう。」
そうして野球部は、体育館から姿を消した。
久保は、わけも分からないまま、鍵を見つめていた。
翌日の練習。
運動場には、いつもどおり、ふざけて練習している野球部の風景が見えた。