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日常風景

Christmas


冬と言えば代名詞でもあるクリスマス。今年はみんなで祝えることになったから天皇誕生日は大忙し。になるはずだったんだけど・・・・用意周到の唯と遊び好きの七海が既に準備を済ませていた。事務所内は完全にクリスマスムード全開です。でもここでパーティーするわけではないんです。これは季節に合わせてみんながやっていることなんですよ。

「いやあ、ずいぶん飾ったな。」

ツリーやリースは勿論の事。サンタの人形や魔法で作った雪だるまがあった。魔法で作っているので溶けない。

「当たり前じゃない。なんていったって年に一度のクリスマス。盛大にお祝いしてあげなきゃ。去年お祝いできなかった分もあわせてお祝いするんだから盛大にやらないとね。といってもここでやるわけじゃないんだけどね。」と七海が楽しそうに言いながら飾りをチェックしている。

「そういえば、プレゼント買ってきた?」

「あぁ、買ってきたよ。天魔の姉ちゃんの所に届けておけって言ったやつだろ?」

「そう、なんか、お姉ちゃんゲーム考えてるみたいだから。」と唯が言った。

「ゲームか・・・・」

ろくでもないものでなければいいのだが・・・

「さて、これで飾りは完了。今日はこれで閉店ですね。」と雪が言った。外を見るともう真っ暗だ。冬は日が沈むのが早いからな。


クリスマスイブ早朝から電話のベルがうるさくなった。

「もしもし」

寝ぼけ眼をこすりながら話す。

「遅い!今日は朝八時に駅前集合って約束だったでしょうが!」

天魔の姉ちゃんの勇ましい声が寝ぼけた頭に響く。おかげで眼が覚めた。

「え、それって十時集合だったはずでは?」

確か記憶ではそうだったはず。その後の連絡は受けてません。

「え、ノワール君から聞いてないの?」

「はい」

「こら!ノワール君、ちゃんと伝えといてっていっておいたでしょ!」

電話の向こうで天魔の姉ちゃんが怒っている。朝から声大きいな。でもその怒っている声もなんだか楽しそうに聞こえてくる。

「とりあえず伝えなかったのはこっちの不手際だから今回の罰金話にするわ。でも急いで支度してね、駅で待ってるから」

我々のルールで約束に遅れるとみんなにジュース一本ずつおごらなければならない。

「了解でありますよ。」

電話を切るなり僕らは急いで支度をした。自転車を飛ばして駅前に集合した。

「お、やっと来たか。」

天魔の姉ちゃんが仁王立ちで待っていた。ノワールが両手を合わせて頭をヘコヘコ下げている。

「唯も七海も起こしてくれればいいのに。」

「だって起こしに言ったら返事したからてっきり・・・」

返事なんてしたっけ?寝言かも・・・

「ほんじゃあ行きますか。」

天魔の姉ちゃんが自転車に乗って走り始めた。確か今日のプログラムは最初カラオケ行って次にボーリングそれが終ったら昼食を食べる為にいったん天魔の姉ちゃんの家へと向かい、その後パーティーだそうだ。

「ところでなんで八時集合になったんだ?」

僕はノワールに質問した。別に連絡しなかった事は怒っていない。色々忙しくて忘れていたのだろう。

「あぁ、連絡しないでごめん。実は天魔の姉さんの家、今日は両親のクリパがあるんだって、だから俺達は姉さんの家じゃなくて姉さんの別荘でクリパをするんだ。その場所へ行くのにはこの時間に集合しないと到着するのが夜になるんだよ。」

天魔の姉ちゃんは色々優秀らしいな為、報酬がたくさん入ってくる。その為別荘や豪邸を持っている。

「なるほど、まてよ、それじゃあチャリどうするんだ?」

その場におきっぱなしにしておくわけにもいかないだろう

「それなら大丈夫、あとで姉さんの部下が預かっておいてくれるって。」

「私情に自分の部下使うんかい!」

「そうなるな。」

僕等は苦笑いした。さて所変わってカラオケボックス。中に入るや即行に場が盛り上がった。ノワールが少し音痴なロックを歌い天魔の姉ちゃんは意外な事にバラードを歌っている。これが意外続きで上手かった。僕らは普通にお気に入りや知っている曲を歌った。

「さて、ここからは採点を入れるよ。ほんじゃトップバッターは雪ちゃんどうぞ」

姉ちゃんが採点ボタンを押して雪が歌いだす。歌っているのはドラマのテーマソング。唄が終わった。採点が始まる。徐々に点数が上がって行き最終的に点数は

「88点、うん、うん、なかなかいいスタートをきったね。」と天魔の姉ちゃんが頷いている。

「ほんじゃ次、ノワール君いってみよー!」

「おう、任せとけ高得点出してやる!」

意気込むのはいいが微妙に音がずれている。採点結果は28と赤点

「あちゃあ!」

肩を落すノワール、次は七海の番だ。透き通った綺麗な歌声が部屋中に響いた。例えるなら天使の歌声だろう。その歌唱力ならその辺のストリートで歌っている人なんかよりとても上手かった。一同が拍手する。採点結果は98点。呪文を唱える魔法使いにとってしっかりとした声と発音は重要だからね。その為かものすごく上手い。

「おしいー」

七海が指を鳴らして悔しそうにした。確かに後2点で100点だったのに。

「ほい、唯」

七海は唯にマイクを渡した。唯は少し恥ずかしがりながら歌い始めた。その歌声は七海に負けないくらい綺麗なものだった。例えるなら女神様の歌声だろう。どっちが上かなんて聞かないでくれ答えられそうにないのでね。歌い終わるとふうと一息ついた。得点は惜しくも98点。

「七ちゃんと同じ点数だね。でもよかった下手じゃなくて。」

唯は本当に色々できてすごいと思う。

「そうね、今度は負けないわよ」と七海が唯に言った。みんな笑っていた。

「でも緊張した。本当に倒れるんじゃないかってくらいに」と唯が感想を述べた。

「そうだね、人前に出て歌うのは少し緊張するかも」と七海が頷いた。

他愛のない雑談をしていると僕の番になった。

「なんだか、二人の後に歌うとプレッシャーが・・・」

「まあ、気楽に歌えばいいんじゃないか?」

ノワールからアドバイスをもらった。確かにお前は完全に感情で歌っていたからね。歌った曲は大好きなドラマの主題化。点数は87で雪に一歩及ばず。

さて次はボーリングです。今回は人数が多いのでチーム。

「よっし!」

七海がガッツポーズをとった。天魔の姉ちゃんと七海のペア。この2人の腕は恐ろしいくらいだ。現在のスコアが五回連続ストライク。どうやったらこんなに上手くなるんだ?一方、唯と雪はガーターが多い。2人とも運動は苦手ですからね。僕はガーターこそしないもののあまり望ましい点が取れていない。

「2人とも、すごいな。」と僕が呟いた。

「なんなら、僕がコーチしてあげるよ。こっちに来て。」

僕は七海にボーリングのコツを教えてもらった。確かに実力は上がった。まあ2人のようにはならないがいい感じに成長している。さて、お昼を食べて、いよいよメインのクリパの会場へレッツゴー。

「えっと、何処まで行くんだ?」

僕らは駅に戻った。電車に乗って会場まで行くらしい。自転車はすでに預けてある。

「K駅まで。」

天魔の姉ちゃんが行く場所を指示する。僕ら電車に乗りしばし雑談を楽しんだ。ここまでの距離は長かった為、着いたのは午後八時、外は真っ暗である。寒さが一層増して今にも雪が降りそうな天気になっていた。

「お姉ちゃん、僕は別荘って聞いたんだけどこれって完全に家だよね?」と七海が聞いた。

天魔の姉ちゃんの家より僅かに小さいだけで一般人的感覚から見たらかなりのでかさだ。豪邸といって申し分ないだろう。

「まあね、先々代のおじい様が住んでいた家だからね。今はは別荘として使ってるの。」

「姉さん、それはわかったから早く中にはいらないか?寒くて」

ノワールが寒そうに体を縮ませている。息は白い。

「そうね、さあ入って会場はこっちだから。」

案内されたのはいかにも映画やドラマなどで出てきそうな舞踏会場。豪華な床にまぶしいくらいのシャンデリア、この人数ではあまりにも釣り合わない広さ中央には料理が色とりどりに並べられている。

「あれ、ここどこかで見たことがあるな。」

僕が首をかしげていると天魔の姉ちゃんが答えをくれた。

「ああたぶんそれテレビだと思うよ。ここよくドラマとか映画とかで貸し出しするから。」

「なるほど。」

「それでは。」

いつの間に用意されていたのか天魔の姉ちゃんがマイクを持って喋った。こんなに近くにいるのだから普通に喋っても聞こえると思うのだが。まあその辺はおいておこう。

「これよりクリスマスパーティーをはじめます!」

「「メリークリスマス」」

しばらくみんなは料理を食べながら雑談で盛り上がった。ちなみに料理は天魔の部下の方々が用意してくれたらしい。毎度ご迷惑をおかけしています。

「さて!では、そろそろ本日のメインイベント。プレゼント交換を行いたいと思います!!」

みんなが拍手する。

「しかし、みんなから預かったプレゼントはこの部屋にはありません。」

「どういうこと?」

僕の質問に天魔の姉ちゃんは笑みを浮かべて言った。

「普通に交換したら面白くないでしょ?だからゲームをしようと思ってね。」

やはり余計な事を考えていたか。

「それで?一体どんなゲームなの?」

七海が少し楽しそうに聞いた。

「それはね。プレゼント争奪ゲーム!!ルールは簡単。この別荘内にみんなから預かったプレゼント+私からのプレゼントを用意したわ。制限時間内に見つけて取ったプレゼントは自分のもの。もし、制限時間内に取れないプレゼントがあったらそれは私のものよ。あ、そうそう。ダミーのプレゼントも用意したから引っかからないように気を付けてね。後屋敷中に仕掛けたトラップにも注意。抜け出すのに少し時間が掛かるかも。」

なるほど、なかなか楽しめそうなイベントである。しかし、ダミープレゼントとトラップが気になる。一体どんなトラップが・・・

「制限時間は三十分それでは用意スタート。」

僕らは走り出した。ちなみにノワールと雪は死神なため天魔の姉ちゃんと一緒にモニターで僕らの行動を高みの見物だ。

『とりあえず手当たりしだい部屋を見ていくしかなさそうだ。』

僕らはバラバラに別れた。僕は最寄の部屋を開けた。

「ここは・・・調理室?」

おそらくそうだろう、食材が山のように積まれている。その食材の中に僕はプレゼントを見つけた。

「お、ラッキー」

僕は一歩踏み出す前に止まった。

『トラップは・・・』

足もとにロープがあった。

「なんかみえみえのトラップだな。よいしょっと」

しかし、またいだ先に本命の釣り糸で仕掛けてあったトラップがあった。上から大量のトマトが降ってきた。

「しまっブービートラップか!?」

しかし、気付いた頃にはもう遅かった。僕は見事トマトに埋もれた。

「最悪・・・」

僕はトマトに塗れながらもプレゼントを取った。開けて見るとそればびっくり箱だった。ハズレと書いた紙を加えたキャラクターが顔を出している。

『トラップにはまったあげくダミープレゼントにまで・・・・』

僕は精神的に疲れた。しかし、負けるかと次の部屋へ向かった。

その頃七海は二階を捜索していた。

「お、プレゼント発見。トラップは・・・なさそうね。それじゃあ。」

七海は一歩踏み出した。その瞬間床に穴があいたプレゼントを載せた台だけが一つ残っている。

「フフフ、僕が魔法使いだと言う事を忘れないで欲しいな。」

七海は落下しながら笑った。魔法で箒を取り出す。七海は箒に乗ってプレゼントへ走っていった。そして上へ上昇。

「これでゲット。」

その瞬間上から大量のスライムが振ってきた。

「こんなの。」

上手く七海は避けていく。そして見事にゲットした。さすが七海である。

「どうやらダミーじゃなさそうね。それじゃあ次々っと。」

そして、唯は

「あ、プレゼント発見。でも上にタライトラップかどうやって切り抜けようか・・・」

唯は考えた。結果。

「こうすればいいんだ。来たれ銀月の騎士。」

召喚されたのは銀色の狼の甲冑を着た騎士だった。騎士は天井のトラップを破壊した。

「これで安心。」

唯は頭が回るからトラップを破壊して進むらしい。しかし、そのたびに屋敷が揺れて正直怖いのだが・・・・

そんなこんなで三十分経過した。結果はまあ、聞かないでくれ。僕はトラップにはまって散々だった。

「唯一君大丈夫?なんだかボロボロだよ。」

唯が心配してくれる。さすがに疲れた。

「アハハもうボロボロ」

苦笑いしながら僕は答えた。本当に色々なトラップに引っかかった。てか、からしは反則だろう。

「さてと、プレゼントは明日まで開けちゃダメだからね。」と天魔の姉ちゃんに言われた。というか開けさせないように魔法でロックが掛かっている。

「はいはい。」

そんな時暖炉のほうからすごい音がした。まるで何かが落っこちたような音だ。そうそう、この家はかなり古い家だから暖炉があるんだ。

「何の音だろう」

僕等は暖炉の側へ寄った。

「!?」

そこには真っ黒な塊が。

『動いた!!』

「アイタタタ。あ、どうもメリークリスマス。」

その人は突然、魔法を使ってサンタに変身した。

「な、なんなんだ!?」

僕等は驚いた。しかし、天魔の姉ちゃんが説明してくれた。

「いや、実はね世界中で言われているサンタクロースって言うのは協会のサンタクロース専門の魔法使いがみんなにプレゼントを配っているんだ。見たところ新人君だね。ソリから落ちたかね?」

サンタは恥ずかしそうに頭をかきながら。てか、真っ黒なサンタクロースって歌であったような?確か・・・あわてんぼうのサンタクロースだっけ?

「実はそうなんです。あ、でも丁度よかった。夜天 唯一さんに月影 七海さん、それに星野唯さんですよね。これ協会からのプレゼントです。あ、勿論ノワールさんと雪さんのもありますよ。」

僕はサンタからプレゼントを貰った。

「何で私にはないのよ。」

サンタにヘットロックを掛けている天魔の姉ちゃん。

「す、すみません。プレゼントは満二十歳のと決まっているものですから。」

「いいじゃないのよ。」

天魔の姉ちゃんすねてる?

「はい、はい、サンタさんいじめないの。お姉ちゃんにはちゃんと別にプレゼントを用意してるから。」

「ホント!!」

一瞬で目が変わった。子供ですか?

「はいこれ。」

「こ、これは、今、魔法使いの流行っているというボードゲーム。人生バーチャルじゃないか。いいのかい?本当に貰って?」

「そのために買ったんだもの。」

天魔の姉ちゃんは涙目になりながら僕ら三人を抱きしめた。

「そ、それじゃあ僕はこの辺で。」

サンタのお兄さんは去っていった。今度は落ちないようにね。

そんなわけでパーティー再開。

「これって?何って言う飲み物なんですか?」

「あ、それはシャンパンって言って炭酸水よ。シュワシュワして美味しいよ。」と天魔の姉ちゃんが雪に説明した。

「へぇ~はじめてみました。」

「それなら今日はクリスマスだし飲む?」

雪は興味本位で頷いた。

「ちょっと未成年でお酒はまずいんじゃ」と僕が静止する。

「大丈夫、ノンアルコールを買ってきてあるかるから」と天魔の姉ちゃんがウインクした。

それナ安心です。天魔の姉ちゃんは並んでいるシャンパンから一本取り出した。

「おいしいです。」

「あれ?唯一君は飲まないの?」

「あ、うん。僕炭酸苦手だし。」

そんな僕をよそに七海はガブガブ飲んでいる。

「でも、少しぐらいは飲んだほうがいいですよ。」

雪が僕に勧めてきた。僕はしかたなく軽く飲んだ。しばらくやっているうちになんだか体が熱くなってきた。

『あれ?変だな・・・』

「なんだか。私、眠くなってきちゃった。」

唯の目がとろけている。

「なんだか僕も。」

なんだか三人(七海・唯・雪)とも様子がおかしい。

「あれ?みんなどうしたんの?」

僕を除くみんなの様子がおかしくなっていた。なんだかみんな顔が赤いような。

「この部屋なんだか暑くない?」

そうなことを言いつつ七海が上着を脱ぎはじめた。

「そうか?」

しかし僕の声は届いていないようで三人とも上着を脱いでしまった。

「僕ちょっとお手洗いに行ってきます。」

僕は席を立った。本当にトイレに行ったわけじゃない台所に行って水の入ったペットボトルを大量に持ってきたのだ。しかし、持って来た頃にはもう時すでに遅し。三人とも変な姿で眠っていた。

「遅かったか」

床に転がっている例のビンを覗くと、もろ、アルコール入りと書いてある。見間違えて取って来てしまったのだろうか?それとも悪戯する気だったのだろうか?

「とりあえずみんなをベッドまで運ばないと・・・ノワール手伝って。」

「了解。」

三人を魔法で運び終えた。とりあえず近くの部屋にあった一つのベッドでみんなを寝かせた。

「それじゃあ俺は部屋に戻って寝るね。」

ノワールは行ってしまった。僕はみんなに布団を掛けた。

『しかし、この狭いベッドでよく三人も寝れるよね』

ベッドはダブルベッドサイズだが三人は少しきつい。それでも三人ともすやすやと寝息を立てて寝ている。寝顔がちょっと可愛く思えた。

「よし、ちょっと狭いですが我慢しておいてくださいね。それじゃあ僕は自室に帰りますから。お邪魔しま・・・」

言い終わる前に僕は倒れた。今ごろになってお酒が回ったのだ。僕は三人の上に乗るようにして眠ってしまった。 

僕は夜中に目が覚めた。僕はなにやら生暖かいものに包まれているのを感じた。顔をあげてみるとなぜか三人に囲まれていた。三人とも僕に抱きついて寝息が耳などにかかってくすぐったいし背中に弾力のある何かを感じる。

『さてっと、僕の頭がおかしくなる前にここから早く抜け出さないと。』

何とか無事に抜け出せた。まあ悪い気分じゃないのだけれど・・・・その・・・なんていうか・・・ねえ。僕は自室に戻ってまた眠った。

「・・・・きなさい」

まだ眠い、昨日夜更かしし過ぎた。頭の上で七海が僕を起こそうと声をかける。

「起きなさいって言ってるの!」

七海に布団を剥ぎ取られて朝の冷たい空気が全身を冷やした。僕はネコみたいに丸まった。

「こらこら、いつまで寝てるの?もう朝食の用意ができてるよ」

僕はしぶしぶ起きた。窓を見ると白いものが降っていた。

「雪!」

僕は一瞬にして眼が覚めた。子供みたいだけど僕は雪が大好きだ。この頃は温暖化の影響で雪もめったにふらないからね。

「ホワイトクリスマスになったね。メリークリスマス。」

「メリークリスマス。」

「さあ速く支度して食堂来てね。」

そういって七海は出て行った。僕は着替えながら外の雪を眺めた。雪なんて何年ぶりだろう。積もるかな?もし積もったらみんなで雪合戦しようっと

思いが通じたのかお昼ごろには三十センチも雪がつもった。ありがとう神様。そして雪合戦が始まった。ただし普通のルールじゃない。

「それじゃあ各自雪だるまを作って形は何でもいいわ。雪ウサギでもいいけどそれだと即刻負けると思うからなるべく大きなのを造る事をお勧めするわ」

天魔の姉ちゃんが説明したルールはこうだ。まず各自で雪だるまを作りそれを壁とする。(本来なら雪の壁を作るべきなのだが今回それが雪だるまなのだ。)雪玉に当たるか雪だるまが壊れたりするとリタイアとなる。

『一つ思う事があるのだが、魔法が使えない僕は一番弱小だよね。』

「あ、言い忘れたてけど魔法は禁止するわよ。さすがに卑怯だからね。」

でも、雪だるまに魔法を掛けて動けるようにはするらしい。僕の雪だるまには七海が魔法を掛けてくれる事になった。

「助かった。」

「その勝負、私もいれて」

上から降ってきたのはサンタガール。見事に僕の上に着地。僕は雪のベッドにうつぶせになった。一瞬にして白い雪のベッドは朱に染まった。なんちゅう漫画的な展開だ。

「ゆ、唯一君!!」

七海と唯が慌てて駆け寄る。

「あら、ごめんなさい。いたのね。」

「あ、美雪じゃない!どうしてここに?」

「今年の仕事はもう終ったの。だから後は遊びたい放題なの。で、飛んでいたら見えたから降りてきたの。ついでに昨日お兄ちゃんがお世話になったらしいから。」

「あの、そろそろ僕の上から降りてくれないか?」

重くは無いのだが雪にずっと触れていて冷たい。

「あ、ごめん、ごめん、よっと。」

「ふえ、びっくりしたよ、いきなり上から降ってくるなんて。」

「さてさて、新メンバーが加わったところで再開しますか雪だるま作成。」

出来た雪だるまを紹介しよう。僕は普通の雪だるま。ノワールのは色々な事情なため本名はいえないけれどガン○ムのザ○。どうやったら、そんな細かい所を作れるの?唯も雪も少し小さい雪だるま。まあ女の子にあの雪を持ち上げるにはちょっと無理かな?しかし、その想像をはるか越えた人物がいた。天魔の姉ちゃんだ。作ったのは雪だるまではなく風神・雷神の形をした雪の彫刻。高さはゆうに2メートルを超えている。顔が鮮明に掘られている。ここは札幌雪祭りの会場ですか?そして、天魔の姉ちゃんに対抗するがごとく作られた雪だるま、ってかまた彫刻。九尾である。勿論これを造ったのは七海。

「なかなかやるわね。」

まるでライバルに会ったかのごとく言う天魔の姉ちゃん。

「そっちもね。」

この2人からはただならぬオーラと気迫が感じられる。美雪さんは可愛らしく雪だるまに天使の羽がついている。

「では、よーい始め!」

天魔の姉ちゃんが開始の笛を吹いた。一斉に雪玉という名の銃弾が飛び交った。

「先手必勝!!」

「でか!」

天魔の姉ちゃんはなんと雪だるまの頭サイズの雪玉を投げてきた。

「喰らえ!!」

投げた球をなんと僕の雪だるまが

「喰った!!」

なんとサイズが上がった。

「すごいなお前。おわ!」

「ほらほら、よそ見しているとあたるぞ。」

僕と美雪、雪、唯は開始十五分で落ちた。ノワールは多彩なテクニックを駆使して相手にぶつけようとする。しかし雪玉は天魔の姉ちゃんの雪だるまに当たってもまるで鉄にマシュマロを投げているようで効いていない。まるで魔法でも使っているかのように雪球がマシンガンのように飛んでくる。ここは戦場か!?

「ははは、氷結の使途の一員の私にとってこのようなスピードは簡単な事。さあ逃げるがいい!」

なんかゲームの悪キャラみたいだな。それに立ち向かう勇者2人だが神2体の前に勇者は倒れた。ゲームオーバー

「終了!!勝者、私!」

高らかに天魔の姉ちゃんが言った。てか、自分で私って普通名前じゃないか?

「ま、当然ね。」

こうして、騒がしかったクリスマスパーティーが終った。


大掃除


さあ、今年もやってきました。大掃除。年の瀬の恒例行事ではありますが・・・何と言ってもクラスト内部は広い上に訳のわからないものが沢山あるから大変です。大掃除は3日間行います。最初の一日目は各家の大掃除、日頃から綺麗にしているため問題なし。さあ、お話は地獄の二日目から始まります。

まずは日頃よく使う事務所の中心の場所だ。

「えっと、これは捨てていいの?」

ノワールが聞いてきた。持っているのは依頼の報酬で頂いたどうでもいい品だ。

「うん、いいよ。燃えるごみはそっちだからね。」

「了解」

しかし、色々なものがよく出てくる。これはまるで宝捜しだ。実際はお宝なのかそうじゃないのか区別がつかないものが多い。

「えっと、これは・・・なんだ?」

それは、魔除なのか鬼の仮面があった。

「捨てていいのかな?誰かこの仮面に見覚えのある人?」

しかし、誰も手をあげなかった。そんなわけで僕はそれをごみに捨てた。

「?!」

僕は捨てた仮面から嫌な気配を感じた。

「のわ?!」

仮面がごみを吸収して鬼になった。

「これって、魔法具!!」

鬼はごみで体を作っただけでなく燃えないごみにまで手をだして全長二メートルを超える鬼になった。

「唯一危ない!我の上に在りし 月の女神よ 聖なる光の名のもとに 災いの闇を 切り裂け!」

光の弾が鬼を粉砕した。そしてごみが散らばった。

「はぁ、ありがとう七海。」

「いやいや。でもこれまた分別しなきゃいけないんだね。」

僕等はため息をついた。こういうことがあるから毎年大変なんだ。

「やっと、この部屋終った。」

部屋は見事に綺麗になった。しかし、こんなときに限って来るあの人。そう、天魔の姉ちゃんです。

「やあ、みんな忙しそうだね。私も手伝うよ。」

みんなが驚いた。だって天魔の姉ちゃんは毎年忙しくてこう言っためんどくさい事は全部自分の部下にやらせていたから。

「天魔の姉ちゃん自分の家は?」

「あぁ、部下に任せてきた。」

今人の部下って可哀相だな。そんなことを思いつつ天魔の姉ちゃんをつれて次の部屋へ。来た部屋は資料部屋だ。ここには両親や社員たちが残した依頼記録や魔法所が所狭しと山済みだ。

「この部屋だけ片付けても片付けても片付かない部屋だよ。」

僕の言葉に何人も肩を落とした。え?何で全員じゃないかって?一人だけいるんですよ。勿論天魔の姉ちゃんだ。

「これを使おう。」

出してきたのはスケッチブック。

「あ、これって、前に使った。」

「そう、それを改良したやつ。今度は大丈夫だよ。」

そんなわけでノワールに助っ人を書いて召喚してもらった。ここばっかりは魔法を使わないと片付かない。

「えっと、ここが19世紀の書物で・・・・」

本当に色々多くて死にそうです。そんな時、天魔の姉ちゃんが声をあげた。

「あ、これ、懐かしいな。」

見つけたのは父さんの残した依頼記録だ。どうやら天魔の姉ちゃんも参加していたらしい。そしてまた凄まじい音が聞こえた。

「ノワ!?」

どうやらノワールが棚に積み上げられていた書類の山を倒して埋もれたらしい。

「ノワール大丈夫?」

雪が心配して駆け寄ってくる。まあ、駆け寄りたくても床は本当に足場の無いほどだから雪しか行けないのだ。

「なんとかね。ついでにこんなもの見つけた。」

見つけてのはホトグラフだ。

「あ、これって白夜さんと昼夜さんだ。」と天魔の姉ちゃんが驚いている。それを聞いて僕等は何とか障害物を避けながら写真を見に行った。

「これが僕の父さんと母さん。」

2人とも仲良くならんでいる。真ん中にいる赤ちゃんは僕だろうか?

「それにしても2人とも若いな。」

ノワールが写真を見ながら言った。

「まあね、2人は学生結婚だったからね。」と天魔の姉ちゃんが言った。

「へぇ。」

学生結婚て2人とも学生だったんですか?まあ、その辺の経緯はいいや。それにしてもこの散らかったものを片付けなければいけないと思うとやってられませんね。

「ところでこれってアルバムじゃない?」

七海が見つけてきた。唯もそれにあわせていくつか見つけたアルバムを持ってきた。

「こんなにアルバムってあったんだ。」

僕らは資料室の掃除を何とか終らせて事務所の中心に帰ってきた。残りは明日だ。

「はい、お茶入ったよ。」

唯がお茶を持って着てくれた。僕らは見つけたアルバムを見ることにした。

「これって、唯一君のお父さんだよね。すごい写真だね。」

唯が言った。僕はその写真を覗いてみると練習場で凄まじい魔法を放っている父さんの写真が合った。

「本当にすごいね。すごい魔力だね。」

でも写真をみてもわかるけど父さん片手にアンチョコ(カンニングペーパー)持ってる。

「本当に唯一の父さんって勉強嫌いだったみたいですね。」

雪が後ろから行った。確かにこれで最強の魔法使いとか言われても説得力無いかもね。僕は苦笑いした。

「でも、本当に父さん達一体どうなってるんだろう。」

僕はそんなことを考えながら次のページをめくった。これ以上大掃除のことを書くとページ倍になってしまうのでここで終わりますね。


お正月


クリスマスが終って。大晦日、今年はみんなと遊園地でカウントダウンを向かえた。

「5・4・3・2・1。ハッピィーニューイヤー。」

年が明けた。

「あけましておめでとう。」

「今年もよろしくお願いします。」

新年の挨拶を交わした。幸いな事に十二月はこれといった大事件無しに過ごせた。出来れば一月もそうあってほしいものだ。僕らはその足で初詣へと行った。神社はかなりの人で込んでいた。その中で僕は知り合いを見つけた。

「やあ、美雪さん、それにお兄さんも。」

クリスマスの時のサンタ2人組みだ。今日は振袖を着ている。

「あら。2人とも久しぶり。あ、今日は普通の挨拶じゃない日だったはね。開けましておめでとう。」

「開けましておめでとう。」

新年の挨拶を交わした。

「それにしても、人多いね。」と七海があたりを見回して言った。

「そうね。さすがにこれは日本の伝統行事だからね。深く根付いているよ。」

「あれ?あそこにいるのって天魔の姉ちゃんじゃない?」

七海が指を指した方向には天魔の姉ちゃんがいた。おろおろしていて危なっかしい。

「こんなところでどうしたの?」

「あ、唯一君達。おは・・じゃなかった。開けましておめでとう。」

「開けましておめでとう。」

挨拶を交わしてどうして此処にいるのかを聞いた。なんせ天魔の姉ちゃんは忙しい身だから初詣にはあまり来ないのでね。

「初詣に来たんだけどすごい人でどうしたらいいか途惑ってたの。」

「なるほど、それじゃあ一緒にお参りしよう。」

お参りを終えて境内の外へ出る。外では雪とノワールが待っていた。なんて言っても死神ですから神様が神様にお参りしたら変ですからね。

「お、みなさん開けましておめでと。」とノワールが言った。

「ノワールそれ、十一回目だよ。」と七海が言った。

「まあ、言った数だけいいことあるかもしれないから。今年こそは雪にゲームで勝ちたいし。」

「まあ、がんばってくれ。」

「ねえ、せっかくみんないるんだし。お正月らしい遊びしない?」

天魔の姉ちゃんからの提案だった。僕らはそれに賛成した。

「それじゃあ、事務所に来ておせちでもでも食べないか?五人じゃ食べきれる量じゃなかったし。」

「そうね。」と天魔の姉ちゃんが賛成した。

クラストでは豪華なおせち料理が並んでいた。今回はみんなで作った。その為量が半端無い。

「すごい・・・・量・・・。」

さすがに天魔の姉ちゃんも驚いている。

「確かに。これを五人で食べる気だったの?下手すると8人前はあるわよ。」

「いや~実は本を見て日本で作られているおせち料理を作ってみたらこんな量になっちゃって。みんな来てくれて本当にたすかったよ。」

「それじゃあ。改めまして、新年のご挨拶を。」

「「「あけましておめでとう!!」」」

みんなでおせち料理に箸をつける。今回は大量に作った為作りながら食べる事は無く。僕も楽しめた。

「おいしい~。」

みんなが絶賛してくれた。

「あ、サイダーくれる?」

七海が言った。僕はサイダーをコップに注いで渡した。

「サンキュウ-。」

「あ、それ私の飲んでみたいかも。」

雪が言った。雪は今まで炭酸を飲んだことが無い。

「それじゃあ。はい。」

「美味しいですね。口にシュワシュワときて。」

しかし、この行動がまさかこのような事態に発展しようとは。

「う~。なんだかホワホワします。」

雪が言い出した。

『あれ?雪の様子がおかしい。この光景何時か何処かで・・・忘年会をやってもあった事は忘れない。クリスマスの時の雪にそっくりだ。

『でも、これアルコール入りじゃないぞ。』

「わたひもうだへです。」

舌が回っていない。

「まさか、雪、酔っ払ってないか?」

「わつしよっへなんえふぇいまふぇんよ」

『完全に酔っている。まったく炭酸で酔っ払うんなんてどんなギャグ漫画だよ。』

案の定酔いつぶれて眠ってしまった。

「それじゃあ何からしましょうか?」

天魔の姉ちゃんが言った。天魔の姉ちゃんのおかげでおせちがあんなにあったのにかなり減った。どうやらなんとかなりそうだ。

「メジャーなので福笑いなんてのはどう?さっき商店街のくじ引きで当たったの。」

天魔の姉ちゃんの手にはオカメの福笑いがあった。

「よし、やるか。」

「ちょっと待った。」

天魔の姉ちゃんが急に止めた。

「ほえ?」

「ただの福笑いじゃつまらないからこうするの。」

天魔の姉ちゃんは魔法をかけて吹く笑いを僕の顔にした。

「これをコピーして。みんなの顔に変更っと。」

そんなわけで各自自分の顔の服笑いを手に持った。

「それじゃ始めよう。ちなみにこれは三が日まで飾っておく事。」と天魔の姉ちゃんからの命令だ。まずは僕が目隠ししてやってみた。

『なんだかみんなの忍び笑いが聞える。』

確かにみんな笑っていた。理由は言わなくてもわかると思うが言っておこう。僕のやっている服笑いの顔がとても変なのだ。

「これでいいや」

目隠しを取るととても顔とは思えないものになっていた。一同が笑い始める。

「あ~あ、なんじゃこりゃ?」

他のみんながやっても結果は同じだった。

「それじゃあ、これ、ここに飾っておくね。」

次はカルタをやることにした。

「はい」

「すごい。どうしてそんなに位置を覚えてるんだ?」

唯は各所に散らばった文字を覚えていた。そしてどんどんとっていく。

「これで、最後ですね。」

結果は唯圧勝だった。さすがだ。召喚師は大量の呪文を覚えなきゃいけないからね。その関係もあるだろう。

「次はぼうずめくりでもやろう。」

運を競うゲームではみんなが公平だった。色々なカードがでてみんなで楽しんだ。

「う~ん。こんなこともあるもんだな。」

なんと全員が引き分けだった。実はみんな最後に坊主がでてカード没収だ。

「それじゃあ次は外ではねつき!」

天魔の姉ちゃんの提案で僕らは外に出た。

「第一回戦は七海ちゃんと唯一君。私は審判するから。」と唯が言った。天魔の姉ちゃん対ノワールでも試合が始まっていた。

「いいくよ」

しかし、運動神経抜群の七海に勝てるはずも無く・・・

「わ~い。唯、唯一に墨つけちゃって。」

片手に筆ペンを持った唯が苦笑いをして僕の頬に何か書いた。

「くすぐったいな」

「じっとしてね」

「はい、次行くわよ」

僕は七海に追いつくのに必死で全く相手にならなかった。おかげで顔には○や×、ハートまで入ってる。

「今度は何かいたの?」

「フフフ、内緒です。」

そんなわけで慌しい正月が終りを迎えた。


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